DX事例

日本DX大賞出場企業から学ぶDX事例15選

「日本DX大賞」は、企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の推進事例、官民または産官学連携におけるDXの推進事例から優れたDX事例を見つけ出し、広く共有する場として、2022年6月に実施いたしました。

本記事では、日本DX大賞の大規模法人部門・中小規模法人部門に出場した企業のDX事例をご紹介いたします。

参考:日本DX大賞
https://dx-awards.jp/

大規模法人でのDX事例

株式会社大丸松坂屋百貨店

株式会社大丸松坂屋百貨店は、2021年3月から「AnotherADdress(アナザーアドレス)」を提供。国内外の100を超えるブランドの中から、プランに応じて自由に1着または3着を選んでレンタルできる、ファッションのサブスクリプション型(定額制)サービスで、ローンチから1年で登録者数は約8,500人(2022年5月時点)に到達しています。

AnotherADdressには、既存のレガシーシステムを使わずパッケージシステムやASPなどをフル活用することで、短納期かつ低コストを実現。また、チームのメンバーがスマートフォンやタブレットからサービス利用者のさまざまなデータにいつでもアクセスできる環境を構築したほか、全ての商品にRFIDタグを縫い付け、個体管理や物流の効率を改善。結果、これまで百貨店に馴染みのなかった客層を取り込むことに成功しました。

株式会社大丸松坂屋百貨店「DXでファッションの新しい体験を創造するAnotherADdress

株式会社GA technologies

株式会社GA technologiesは、「テクノロジー×イノベーションで人々の感動を」を会社の理念に掲げて、不動産の取引に関わる業務のDXとユーザー体験のDXに取り組んでいます。

不動産購入のプロセスは非常に煩雑です。不動産業者だけでなく金融機関、保険会社、司法書士など多様な関係者が関わり、ステップごとに捺印が必要で、捺印した紙の書面や電話、FAXを何度もやり取りしなければなりません。株式会社GA technologiesが運営する不動産取引マーケットプレイス「RENOSY(リノシー)」では、物件内覧やローン契約、IT重説不動産購入における契約手続き、購入後の物件管理をオンラインで完結することで、ユーザーの負担をなくして利便性向上につなげています。

株式会社GA technologies「オンライン完結型の不動産取引を実現したDXの取り組み

株式会社学研メディカルサポート

株式会社学研メディカルサポートは、「紙+デジタルの融合」をテーマに、学研グループのデジタルトランスフォーメーションプロジェクトとして看護師向けのeラーニング事業を2011年からスタートいたしました。以来、e-ラーニングの提供および医療、介護の各現場におけるデジタル化や業務効率化の推進を実施しています。

看護師や介護従事者は、日々の研鑽が欠かせません。施設内外で開かれる研修や勉強会では、技術習得のために参加したいが時間が合わない、参加者に講義をする医師や看護師の負荷が大きい、コロナ禍で人が集まる場を開きづらいなどの課題を抱えていました。

e-ラーニング事業では、著名な講師陣による講義動画、研修用資料、履歴管理をセットにした「学研ナーシングサポート」「ビジュアルナーシングメソッド」などを提供。日本全国にある約8,300の病院のうち2,230の病院で導入されており、利用者数は60万人を超えています(2022年5月時点)。

株式会社学研メディカルサポート「教育を止めるな!コロナ禍でも医療従事者の教育に寄り添うe-ラーニング事業

株式会社グッデイ

株式会社グッデイは、北部九州と山口県でホームセンター事業を展開する企業で、2015年から本格的に社内のデジタル化に着手しました。2015年にGoogle Workspaceを導入し、会議資料の共有やスケジュール管理などは全てGoogleの提供するアプリケーションを使うようにしました。また、BIツール「Tableau」の導入によりデータ分析と利活用が進み、人材育成の一環として「GooDay Data Academy」を毎月開いたことで、経営者目線で売り場を捉えて判断できる、新しいことへ挑戦できるといった従業員のマインドが変化していきました。

結果、売上はDXの本格着手前(2014年)と比較すると25%アップ。2017年には、「株式会社カホエンタープライズ」を設立。グッデイでのDXのノウハウを他の企業にも提供しています。日本DX大賞では、大規模法人部門で大賞を受賞しています。

株式会社グッデイ「GooDay X ~地方企業が挑んだ「人」のDX~

ディップ株式会社

ディップ株式会社は、人材サービスとDXを事業の柱としている企業です。アナログな作業の多さ、新入社員の管理など、日常の業務においてさまざまな課題を抱えていました。その解決のために、「レコリン」というデジタル手帳アプリを開発。求人情報の出稿状況の可視化、商談報告を簡素化して上長報告を不要にしました。「レコリン」の普及には当初、一部から反対の声が上がっていましたが、新卒社員には好評で、トップダウン方式と現場からの評価により、リリースから1年で全社員が使うまでになりました。

「レコリン」の成功により、社内DXの推進が本格的にスタートし、デジタルツールの導入やRPAの普及が進んだことで、約20万時間の社内工数削減につながったのです。

ディップ株式会社「求人の営業会社が労働力の総合商社にDX

青山商事株式会社

青山商事株式会社が運営する「洋服の青山」では、DXを全店舗で推進するために、(1)接客ツール、(2)お客様アプリ、(3)組織改革という「DX 3本の柱」を掲げています。

店舗での接客に際し、店舗スタッフは購入した商品の補正情報や購入者からの要望を「接客端末」内のアプリに登録しています。また、ECサイト「デジラボ」を積極的に活用。こうした取り組みにより店舗在庫の縮小や、販売に付帯する業務の軽減、スタッフの業務全体の効率化を実現できました。「洋服の青山アプリ(お客様アプリ)」では、チャット相談や店舗の商品のバーコードスキャンを可能にしました。2020年には社内にDX推進組織を立ち上げ、外部パートナー企業をも巻き込んだ情報共有体制を構築しています。2021年度の売上高は前年比34億円の増収、お客様アプリの利用からECサイトの売上は前期比125%となりました。

青山商事株式会社「店舗スタッフ4000人がマーケターに

株式会社TBSテレビ・吉積情報株式会社

テレビ局では毎日、誰かに取材をしています。そのたびに文字起こしという作業が発生するのです。広報部では社長会見の内容をプレスリリースとして配信する際、一言一句間違えてはいけない上に、当日中に配信しなければなりません。また、トーク番組では事前準備として何人もの対象者に取材を行い、かなりの時間を文字起こしに割きます。報道でも記者会見やインタビューの文字起こしが欠かせません。

文字起こしにかかる作業時間と負荷の削減を図るべく、株式会社TBSテレビでは文字起こしエディタ「もじこ」を開発。AIの音声認識エンジンとIT技術を駆使したWebツールで、125カ国語以上の言語に対応しています。TBS系列局20社で導入したところ、直近1ヶ月間で、約2年9ヶ月分の労働時間を削減できました(ただし2022年5月時点)。2020年からは吉積情報株式会社にライセンスを提供し、一般ユーザーにも販売しています。

株式会社TBSテレビ・吉積情報株式会社「文字起こしに革命!地獄に舞い降りた救世主「もじこ」

中小規模企業のDX事例

イーデザイン損害保険株式会社

イーデザイン損害保険株式会社は、2021年11月からDX型の新しい自動車保険「&e(アンディー)」を発売しています。

従来の自動車保険は、自動車事故への補償に価値の重きを置いているものがほとんどです。しかしこうした保険商品は、契約時や事故に遭ってしまった時に利便性が悪いと感じるユーザーが少なくありません。

「&e(アンディー)」では、スマートフォンアプリとWebサイト、IoTセンサーが連動することで、ワンタップでオペレーターへ連絡できるようになっています。また、保険加入者のIoTセンサーから集めたさまざまな運転データは、事故の起こりやすい場所を通知したり、道路上の危険箇所を見える化したりといったところに役立てられています。

イーデザイン損害保険株式会社「DXによって実現した今までと違う自動車保険『&e(アンディー)』

株式会社つばさ公益社

株式会社つばさ公益社では、「お葬式は不透明で高い」という状況を改善していきたいという思いで事業を展開しています。

コロナ禍以降、それまで対面で行われてきた霊園の販売をオンラインで完結できるようにしました。また、葬儀業者の手を借りずに自分たちで大切な人を送る「DIY葬」の利用者の増加を受けて、オンラインショップでも販売するようにしました。遠隔接客での店舗運営、ホールの混み具合や駐車場への駐車を通知する仕組みなどの導入により、思いがけず社員の働く場所の自由化につながったのです。さまざまな書類を一括で管理するために、自社でアプリも開発。アプリから情報を入力すると、社内の基幹システムに自動的に転記され、火葬場や花屋への発注連絡や家族への情報共有もできる上、社員は書類から書類への転記作業をしなくても済むようになりました。

株式会社つばさ公益社「お葬式DXで実現する生産性向上と誰も取り残さないオペレーション開発

株式会社PlantStream

株式会社PlantStreamは、千代田化工建設株式会社と株式会社Arentの合弁会社として設立された企業で、石油や化学製品を製造する生産設備であるプラントの配管設計を自律型CADで行なう「PlantStreamTM」の開発・販売を手掛けています。

プラント配管設計は、設計ルールに基づいて熟練の技術者が全体調整を行いながらプラントの3Dモデルを作成していきます。全て手作業で行うのでとても時間がかかってしまい、プラントの配管設計にかかる時間を削減し業務を効率化することは、製造業・建設業共通の喫緊の課題です。こうした課題解決のために開発したのが「PlantStreamTM」で、熟練エンジニアたちの膨大なノウハウをデジタルデータとして落とし込んだことで、設計時間の短縮を実現できただけでなく、「PlantStreamTM」を導入する同業他社が増えてきており、業界全体のデジタル化にも貢献できました。

株式会社PlantStream「PlantStream 〜プラント設計の世界的課題をDXで解決〜

株式会社フレアサービス

株式会社フレアサービスは、宅配弁当の製造、高齢者介護施設や障碍者施設、幼稚園・保育園、病院などで給食を提供する会社です。利用者の多くは高齢者ということもあり、喜んでいただける食事を低価格で提供することに意義があります。しかし実際には、献立作成に忙殺される栄養士や人手不足に伴う人件費の高騰など、現場ではさまざまな課題が長年横たわっているのが現状です。

利用者の要望を満たしつつ、現場の課題を解決するためにAI献立作成システムやIoT生産可視化システム、基幹システムを開発。AI献立作成システムを使って献立を作成するようになったところ、献立作成業務にかかっていた時間を50%削減(1ヶ月につき1,190時間※栄養士7名)できました。工場での労働時間もIoT生産可視化システム導入前は1,620時間だったところを、1,404時間まで抑えることに成功しました。

株式会社フレアサービス 「中小企業の活路は”DX”にあり!~悩み解決から強みづくりへ~

株式会社KMユナイテッド

株式会社KMユナイテッドは塗装職人を育成する企業で、現場での業務や人材育成におけるデジタル化を積極的に行なっています。

建設業では、給与支払いに直結する勤怠管理を、紙で行っている職人や企業が多くあるのが現状です。株式会社KMユナイテッドも例外ではありませんでしたが、Salesforce社と共同開発したアプリ「コネクテッドキャリア(通称:コネキャリ)」の活用により、勤怠管理のシステム化に成功しました。

建設業界での人手不足の解消を図るため、若手職人に観てもらいたい動画を集めたスマートフォンアプリ「技術伝承アプリ『技ログ』」を開発。動きのポイントや注意点などが補足された撮影動画を観ながら、若手職人がいつでもどこでも技術を学習できるようにしました。こうした一連の流れを受けて、ベテラン職人の意識も少しずつ変わり、職人育成の円滑化につながりました。

株式会社KMユナイテッド「真の働き方改革と人材育成を成し遂げ、“人を活かし、技に生きる“DX経営とは

株式会社フジワラテクノアート

株式会社フジワラテクノアートは、味噌や醤油といった醸造食品を製造するための機械プラントメーカーです。日本DX大賞では中小規模法人部門において、大賞を受賞しています。

微生物が持つ潜在的な能力を産業に活かす分野「微生物インダストリー」の実現に向けて、2019年に副社長をトップとしたDX推進のための委員会を設立。さまざまなルール設定やデジタルツールの選定、データ基盤の整備などをトップダウンかつ内製で進めていきました。デジタルツールの導入には、レベルの高いツールからではなく、コミュニケーションアプリの活用から始めていき、「IT=利便性の高いものである」という理解を全社に浸透させていったのです。2019年〜2022年の3年間で、延べ21個のデジタルツールを導入したことで、デジタルスキルの向上や情報セキュリティの強化といった成果に結びつきました。

株式会社フジワラテクノアート「「微生物インダストリーの共創」に向けて「フルオーダーメイドの高度化」と「新たな価値創造」を推進するためのDX

株式会社八芳園

株式会社八芳園は2023年に創業80年目を迎える老舗の企業で、結婚式場や宴会場、レストラン運営、自社ブランド商品の企画・販売などを手掛けています。2020年7月にDX推進室を立ち上げ、チャットツールやクラウドツールの導入を中心に、さまざまな「攻めのDX」を進めました。結果、人件費は12%ダウン、コストも15%ダウン、利益は40%アップ(いずれも2019年と2021年を比較)しています。

DX推進の成功によりオンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」のローンチの他、八芳園でのDX推進のノウハウや知見をもとに、企業のDXコンサルサービス「SOLVE EIGHT」の提供も行っています。ブライダル業界だけでなく各業界から注目をいただいて、多様な業種の企業の方からご利用いただいています。

株式会社八芳園「ホスピタリティ業界におけるDX革命

株式会社源・コストサイエンス株式会社

株式会社源は、富山県で食品の製造から実店舗での販売を手がけています。主力商品のます(鱒)のすしを含め、株式会社源で扱う食品は性質上とても傷みやすく、その日中に売り切らなければいけません。しかも需要予測が非常に立てづらく、社内外の情報の取得方法や利用方法が属人化していたことが課題でした。

そこで、需要予測に関わる問題と紙中心の文化の変革を同時に解決する「発注支援システムMINA(ミーナ)」の開発に、コストサイエンス株式会社と共同で着手。システムを導入後は、店舗運営にプラスに働き、店舗スタッフのマインドにプラスの変化をもたらしています。

株式会社源・コストサイエンス株式会社「従業員の心と時間の負担を軽減する需要予測DX

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会について

一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会では、人材育成や組織づくり、講師派遣といった企業のDX推進の支援、DX関連イベントの実施などを手掛けています。DXを進める上で、人材確保やデジタルツールの導入、推進体制の構築などでサポートをご希望の企業担当者様は、下記リンク先をご参照ください。

https://jdxa.org/forbusiness/

また現在、日本のDX推進を加速させたい、地域企業の推進拠点としてDX推進を担う企業様や団体様を募集しております。興味・関心のある企業様や団体様は、以下の「入会案内」ページをご一読いただき、「法人会員に申し込む」ボタンよりお気軽にお申し込みください。

https://jdxa.org/members/