日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、自治体や民間企業などが取り組んだ事例を発掘し共有するためのコンテストです。2022年6月20日に行われた「大規模法人部門」
より、株式会社TBSテレビ / 吉積情報株式会社の事例をご紹介します。
TBSテレビでは、番組制作現場の経験を基にDX・働き方改革を推進しています。その一環で開発されたものが、文字起こし作業の負担を大幅に軽減するWebアプリ「もじこ」です。
その開発背景や、導入後の成果とは?
株式会社TBSテレビの概要
■法人名:株式会社TBSテレビ
■事業内容:放送法による放送事業ほか
■設立:2000年3月21日
■公式Webサイト:https://www.tbsholdings.co.jp/
吉積情報株式会社の概要
■法人名:吉積情報株式会社
■事業内容:
・Google Workspace のライセンス販売
・Google Workspace セルフ導入パッケージ
「My Start for Google Workspace」による導入支援コンサルティング
・Google Workspace 向けシングルサインオンサービス
「繋吉セキュアログインパック」の開発・販売
・Google Workspace 向けファイル共有サービス
「Cmosy(クモシィ)」の開発・販売
・文字起こしエディタサービス
「もじこ」の販売
■設立:2005年9月6日
■公式Webサイト:https://www.yoshidumi.co.jp/
AIとIT技術を駆使した文字起こしエディタ「もじこ」とは?
「もじこ」は、AIとIT技術を駆使した文字起こしエディタです。ユーザーフレンドリーな
使い勝手で、世界125カ国語以上に対応しており、IT各社の最新音声認識エンジンを自由に選択できる、という優れた特徴を持っています。
TBSテレビが開発した背景
テレビ局の制作現場は、日々過酷です。
例えば、30分のインタビューを文字起こしするためには約3時間を要し、一日の作業が全て潰れてしまいます。特に広報部では社長会見が重要で、社外に対してリリースを出す必要がありますが、一言一句間違えてはいけないうえに、当日中の迅速な対応がマストです。
1時間〜1時間半収録したトーク番組は、翌日に一人の担当者が丸一日かけて60ページに
およぶ文字起こし原稿を作成します。非常に手間がかかりますが、無くてはならない作業です。
トーク番組収録の事前準備として、インタビューをたくさん行う場合もあります。そのような場合、文字起こしに20時間以上かかるケースもあります。報道でも、日々たくさんの記者会見を取材したり、インタビューを撮ったりします。何を発言したか正確に記録し、文字起こしをして、その一部を切り取って放送します。
このように、映像・音声・メディア業界は「文字起こし地獄」であり、番組制作の経験を
踏まえながら課題に立ち向かうべく「もじこ」の開発に至りました。
まずは実証実験
2017年1月から、先々は独自開発することを前提に、既存の文字起こしツールを100台、
実験的に導入しました。この既存ツールとは、聴覚障害の方が会議参加時、発言を可視化できるツールです。現場に配り、皆に使用の感想をもらいました。すると、次のような声が
挙がりました。
・精度100%ではない。音声認識の間違いは、必ずある。その間違いを修正したいが、
前後の文脈のつながりを考えて変換する場合に、時間がかかる。
・映像のタイムコードと、文字起こしを連携させたい。
・3時間のデータの場合、実時間(3時間)をかけなれば起こせないのか…?短時間で音声認識を終わらせることができるとよい。
このような現場の声を、新規開発の課題としました。
AI活用で作業負担を軽減「もじこ」
課題を踏まえて開発した「もじこ」は、最新AIを活用し、文字起こし作業の負担を軽減できるWebアプリです。AIの間違いを人の目でチェックし、スムーズに修正ができます。
話者設定や、サムネイル画像表示、タイムコード連携や、メモ挿入機能など、放送現場の声を取り入れ、誰でもかんたんに操作できるアプリです。
「もじこ」には大きく3つの特徴があります。
・「も」文字見て聴ける:文字が先に出て、耳で後から聞いて必要に応じて修正できる
・「じ」時間が省ける:実時間をかけずに変換終了
・「こ」ここだけ聴ける:聞き直したい場所をワンクリックで繰り返し再生
そして、常に最良のAI音声認識エンジンを自由に選ぶことができます。
SaaSなので、ユーザーに寄り添って常にアップデートしつつ、ランニングコストも抑える
ことができます。
労働時間を大幅に削減
「もじこ」ユーザーの声を紹介します。
・従来の文字起こしは時間がかかる作業で、疲れてだんだんと集中力も無くなっていくが、「もじこ」は非常に便利で、間違いもあまり無い。1時間ぐらいかかっていた作業が、
10分以内に終わるようになり、空いた時間を違う作業に充てられるようになった。
・文字起こし作業が半分以下になった。
・残業が減った。
・動画をアップロードすると、実際の尺より速く文字起こしが終わる。タイムコードが細かく打ってある点も便利。
また、定量的な成果としてはTBS系列局20社、直近1ヶ月間で、(2022年5月)
「2年9ヶ月分」の労働時間を削減できました。
一般向けにもサービス開始
吉積情報株式会社へ「もじこ」のライセンスを提供し、2020年9月よりSaaSとして一般向けのサービス提供も開始しています。
多言語を使用する商社などからのニーズのほか、IT、製菓、金属、大学、病院、自治体、
防災関連団体、芸術分野など他業種で「文字起こし」ニーズがあることを実感しました。
「シンプルで使いやすい」「導入がかんたんですぐ使える」「精度が良い」「議事録作成の時短」「議事録の質向上」といった評価をいただいています。