DX事例

【特定非営利活動法人地域診療情報連携協議会】ことばのかべを無くすプロジェクト

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、事例を発掘し共有するためのコンテストです。自治体や民間企業などが取り組んだDX推進プロジェクトを表彰し、それぞれの部門で大賞を決定します。

2022年6月24日に行われた「官民連携部門」より、特定非営利活動法人地域診療情報連携協議会による「ことばのかべを無くすプロジェクト」の取り組みについて、実施の背景や成果をご紹介します。

特定非営利活動法人地域診療情報連携協議会の概要

■法人名:特定非営利活動法人地域診療情報連携協議会
■活動内容:保健・医療・福祉/情報化社会/連絡・助言・援助
■設立:2003年10月17日
■公式Webサイト:http://www.shin-ren.net/nc/htdocs/

「ことばのかべを無くすプロジェクト」とは?

官民連携プロジェクト「ことばのかべを無くすプロジェクト」から開発された、翻訳機能付きビデオチャットシステム「リモートコネクト」の開発ストーリーをお話しさせていただきます。

「ことばのかべを無くす」と言うと、翻訳デバイスの活用を思い浮かべると思います。
翻訳デバイスは対面で使うにはとても良いのですが、離れた所で電話のように使うことができません。

そこで、私どもが重視しているのは、日本語が話せない外国人だけでなく、電話が使えない聴覚言語障害者を含めた「ことばのかべ」で困ることを社会から減らすプロジェクトです。

プロジェクトのきっかけは、東日本大震災

翻訳機能付きビデオチャットシステム「リモートコネクト」は群馬大学医学部医療情報部で遠隔医療と国際医療の研究で培ったノウハウを基に、産学官民連携で開発されました。

「ことばのかべを無くすプロジェクト」のきっかけは、NPO地域診療情報連携協議会の2008年の群馬県の委託事業 多文化共生調査事業です。

1990年の入管法改正により日系人の方が働くことができるようになり、自動車工場が多い群馬県や愛知県などに多く住むようになりました。しかし言葉・習慣の違いから外国人が住む地域では色々な問題が発生しました。

これらの問題解決を探るためにNPOのサロンで意見交換会をしたり、日系の方々にヒアリング調査をしたり、外国人学校のイベントに参加したりして、調査を行いました。

その結果、日本に来る前に日本の情報を伝えることが重要と分かり、2008年には来日する人にブラジルとビデオ会議をつなげ、情報提供を行いました。

2010年には群馬大学医学部附属病院に群馬県との事業で医療通訳コールセンターを設置して、外国人患者の通訳と医療通訳者の育成を行いました。

東日本大震災の1カ月前には、外国人の災害時多言語情報センター設置運営訓練事業も群馬県と行いました。

2011年の東日本大震災では被災地の外国人支援のため、世界から27言語のボランティア
通訳約400人を集めて、被災地の外国人支援を行いました。これも群馬県との事業の成果の結果です。

震災を経て、多言語問診システムを開発

震災の経験から「ことばのかべ」のある外国人患者が病院で困らないように、10言語の多言語問診システムを研究開発して、無償で世界に配布しました。

また、医療通訳者の育成も、群馬大学の市民公開講座を開講して行いました。

ことばのかべは、外国人だけではない

外国人だけでなく聴覚言語障害者も、聞くことや話すことができない壁を持っています。

当NPO代表も急性心筋梗塞で内部障害者になったことで障害者の生きづらさが分かり、
「ことばのかべ」を持つ聾者のこともシステムでサポートできないかと思い、手話通訳の
研修を受けて聾者の問題についても勉強しました。 

すべての「ことばのかべ」を持つ人に、そして健常者にとっても、有益なシステムの研究開発をすることにしました。

今まで培ってきたノウハウを社会還元するために株式会社C&Tを起業しましたが、研究者が起業しても成功した例が少なかったので「通訳支援アプリ」「医療通訳コールセンター」「医療通訳セミナー」の3つのビジネスプランを第三者に評価してもらうため、いろいろなビジネスコンテストにチャレンジしました。

その結果、群馬県ビジネスコンテストでは優秀プラン、全国スタートアップデー関東では
関東準グランプリ、群馬イノベーションアワードにおいてはファイナリストになりました。第三者の評価を得て、「ことばのかべ」を無くすビジネスジネスプランに自信がつきました。

その後AIによる機械翻訳精度が大幅にアップしたので、東日本大震災時の課題だった夜間の通訳にも対応でき、世界の90%以上の言語にも対応できる翻訳字幕付きビデオチャットシステムを開発できました。

「リモートコネクト」の特徴

ことばのかべを無くす「リモートコネクト」は世界をつなげるシステムです。
世界の131か国の国と地域の言語に対応し、世界から「ことばのかべ」を無くします。 

操作は簡単な3ステップです。QRコードを読み込み、カメラのアクセスを許可して、
呼び出しをタップするだけです。

接続は1対1でつながります。パソコン、iPhone、Androidとデバイスを選ばず、専用の
ダウンロードも必要ありません。

話した言葉を自動翻訳して、字幕で表示します。

「リモートコネクト」はオンライン診療や、行政の外国人窓口や、海外とのオンライン商談など、さまざまな場面でお使いいただくことができます。

誰もが世界とつながり、「ことばのかべ」を越えて会話ができるDXによって世界にインパクトのある革新・変革をもたらし、国籍・言語を問わずともに発展する社会を実現します。

障害者情報アクセス法にも対応

「ことばのかべを無くすプロジェクト」の集大成のサービスに関して、再度第三者の評価をいただこうと、日野市のビジネスコンテストに「リモートコネクト」でチャレンジしました。「たましん賞」「日野青年会議所賞」「日野法人会賞」とトリプル受賞をいただき
「リモートコネクト」は世界に必要なサービスであると確信できました。 

今年に入って3月に障害者情報アクセス法が成立し、6月には厚生労働省から障害者の情報
アクセスや意思決定支援を強化する報告書案がまとめられました。手話や字幕、点字の提供など情報分野でのバリアフリー化を図る法律です。

「リモートコネクト」はこの法案にも対応しているバリアフリーシステムです。 

まとめ

「リモートコネクト」は国籍・言語を問わずともに発展する世界を実現します。
企業はSDGsの「目標10」を達成でき、行政は障害者情報アクセス法の対応ができます。

昨年12月にあった中小機構主催の医療機器CEO相談会ではアジア8社と商談を行い手応えを感じたのでグローバル展開の準備をしています。 

ご静聴ありがとうございました。