DX事例

【愛媛県】愛媛県官民共創デジタルプラットフォーム「エールラボえひめ」

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、事例を発掘し共有するためのコンテストです。自治体や民間企業などが取り組んだDX推進プロジェクトを表彰し、それぞれの部門で大賞を決定します。

2022年6月24日に行われた「官民連携部門」より、愛媛県による官民共創デジタルプラットフォーム「エールラボえひめ」の取り組みについて、実施の背景や成果をご紹介します。

愛媛県

■公式Webサイト:https://www.pref.ehime.jp

「エールラボえひめ」とは?

令和3年3月、本県のDX指針となる「愛媛県デジタル総合戦略」を策定しました。基本理念を「デジタルでつなぎ切り拓く、活力と安心感あふれる笑顔の愛媛」とし、基本方針として「県民本位」「市町との協働」「官民共創」を掲げています。

この「官民共創」でのDX推進に向けた具体的な仕掛けが「エールラボえひめ」で、総合戦略において「DX推進の基盤」に位置づけられています。

「エールラボえひめ」は、県民生活の質の向上や、地域経済の活性化等に資するプロジェクトを具体化させるオンライン上の基盤です。

また、県内外のさまざまな事業者や個人等の知見・ノウハウを幅広く取り込みながら、地域課題を共有し、課題解決に向けて関係者間の会話を進めていくことで官民競争による実効性のあるプロジェクトを創出・実行するものです。

そしてオンラインを活用することで県内外の多様な主体が時間・距離の制約を受けず活発に対話や交流を実施するものです。 

簡単に言うと、オンラインを活用し県内外の多様な方々が時間・距離の制約を受けずに
対話・交流を行うことで愛媛県内の課題解決や新たな価値創造などにつなげることを目的としています。

なお、「エールラボえひめ」というネーミングには「地域を良くしたい」という思いを持った方々の後押しをしていきたい、心からのエールを送りたい、そして一緒に頑張りたいという、われわれの思いを込めています。

「エールラボえひめ」は住んでいる地域・肩書き・所属などに関係なく、愛媛県内の地域課題をなんとか解決したい、新しいことにチャレンジしたいという熱意のある方々に会員として参加いただいています。

会員の皆様は時間・場所の制約にとらわれずデジタル上のプラットフォームにおいて対話を進め、自分と同じような課題意識を持った方々が仲間として出会い、その仲間と共にコミュニティを形成します。

そして、コミュニティ内での対話を通じて提案や協議を進め、課題解決や新しいチャレンジの方向性が まとまるとプロジェクトを創出実行する…このような流れをイメージして運用を進めています。

県民生活の質の向上や、地域経済の活性化などに資する大小さまざまなプロジェクトが生まれ、実現に向けた活動が進められています。

プロジェクトを生み出す仕掛け

エールラボえひめでは、デジタルの機能やメリットを活用しながら、プロジェクトの創出や実行を図っていますが、プラットフォームを用意しておけば後は勝手に取り組みが進む…とは考えていません。

対話の活性化やプロジェクト実行への伴走支援、デジタル技術活用に向けたアドバイスができる人材を「コミュニティマネージャー」「ディレクター」「デジタルアドバイザー」として配置し、皆様の活動をサポートしています。

「コミュニティーマネージャー」は会員間の潤滑油、「ディレクター」はプロジェクトの
実現に向けた道筋をつけていく役割、「デジタルアドバイザー」はデジタル技術活用に向けた助言や技術的支援を行う役を担っています。

またオンライン・オフラインを効果的に組み合わせることがプロジェクト創出の確率を
高め、その実効性を強化すると考え、リアルな共創拠点も準備しています。具体的には県の官民共創拠点として「渋谷QWS」さんと連携すると共に、県内のコワーキングスペースとも連携し、そこに集う人々や企業の皆さんとも共創しながらプロジェクト創出・DX施策の
高度化を図っています。 

また会員同士の交流やプロジェクトの PRを目的としたイベントも開催しており、
新たな交流を契機としたプロジェクトコミュニティの活性化も図っています。 

昨年度は計12回開催、延べ344人に参加して頂き、既存のプロジェクトの盛り上げだけで
なくイベントをきっかけに新たなプロジェクトが誕生するなど、ラボの活性化になくてはならないものとなっています。 

活動状況

「エールラボえひめ」には現在600名に会員登録を頂いており、29のコミュニティと34のプロジェクトが活動しています。

プロジェクトのうち7つは県の認定プロジェクトとなり、県による支援も行っています。

なお、エールラボえひめは、活動指標を「プロジェクト創出数」としており、初年度は
目標の10に対して33のプロジェクトが創出され、目標を大きく上回ることができました。 

また、「県の認定プロジェクト」とは、県の公的サポートを受ける認証を与えたものです。外部有識者による審査を経た上になりますが、プロジェクトの実効性を高めたり、公的支援があればより実現しやすくなったり、成果の向上が期待できるような場合には、関係機関との連絡・調整や県広報媒体の活用、経費補助など、関係部署を巻き込みながら支援を行っています。

プロジェクト事例

「エールラボえひめ」から生まれた2つのプロジェクト事例を紹介します。
1つ目は「心のバリアフリーステッカープロジェクト 優しさの見える街づくり」です。
「県認定プロジェクト」第一号で、車いすユーザーの思いから始まったプロジェクトで、
店先に「手伝いが必要なら気軽にどうぞ」と意思表示ステッカーを貼ることで、車いすユーザーや、ベビーカーを押す子育て世代など、誰もが気兼ねなく入れる優しさの「見える化」を目指すものです。優しさに触れることで障害者に限らず、街中に明るい気持ちが溢れたらいいなというオーナーの思いで活動をされています。こちらは県障害福祉課と連携し活動の場を広げています。

もう1つが「竹の灯りで愛媛を包みたいプロジェクト」です。プロジェクトオーナーさんが
竹灯籠を初めて見たときに心を奪われ、この景色をもっと多くの人に見てもらいたいという思いから立ち上げられました。県民が手作りした竹灯籠を県内11カ所で一斉点灯することを目標に活動を進めています 。こちらは県管理の公園等を管理しております都市整備課と連携し実現に向けた取り組みを進めています。

また県民の方だけでなく行政も「エールラボえひめ」の活用を進めています。県および県下20市町が連携し、「エールラボ」上に全市町のDX担当部署で構成するオンライン組織体
「愛媛県市町DX推進会議」を立ち上げ、日々情報共有・意見交換を実施しています。
また令和3年3月の県デジタル総合戦略策定と同時に県・県下全市町による「県・市町DX協働宣言」を行いました。これは住民本位の視点でDX推進するためには、地域住民に身近な
存在で、日々地域課題に最前線で向き合っている市町の皆様と協働していくことが不可欠だという考えに基づいています。この共同宣言におい ても「エールラボえひめ」を活用した
官民共創とDX実証の推進が掲げられており、県内全ての自治体が同じ方向を見て官民共創を進めています。 

まとめ

今後とも官民が幅広く連携しながら失敗を恐れず積極果敢に挑戦し、愛媛県の未来を切り拓く新たな価値を創造したい、そういった基本姿勢で取り組みを進めてまいります。