建築業界は、長らく若年入職者不足と職人・大工の高齢化が進む業界として知られてきました。しかし、少子高齢化に伴う人手不足や働き方改革への対応が迫られる中、アナログからデジタルへの変革が喫緊の課題となっています。
本記事では、店舗の施工を手掛ける小規模の工務店が、現場の声を拾い上げながらデジタル化に挑戦した、株式会社IWAKISTYLEの事例をご紹介します。
建築業界の現状とデジタル化への挑戦
建設業界に就職する新規学卒者の数は低下傾向にあり、なかでも24歳以下の若年入職者は年々減少しています。また、離職率も非常に高く、せっかく採用しても3年以内には半数近くが退職しているのが実情です。
さらに、職人や大工の高齢化も進んでいて、若年者の確保育成が急務です。
一方で、業務を進める上でも問題をいくつも抱えていました。工程ミス、仕入れの遅れ、納期の遅延や作業のやり直しが増えたことで、クレームも増加。さらに、スケジュールの誤伝達などのトラブルも頻繁に発生しています。こうした状況では工事に必要な経費がかさんでいき、残業の増加、相次ぐ従業員の退職といった事態も招いています。
店舗施工・新築・リフォームを手掛けているのは、小~中規模の工務店が多く、そうした工務店が末永く経営を持続させるためには、限られた人数の中でも生産性を上げられる仕組みを構築するしかありません。
施工管理アプリ「現場一番」の開発とリリース
株式会社IWAKISTYLEの代表の岩城氏は、大工時代の経験を活かし、現場の声も反映した施工管理アプリ「現場一番」を開発。2022年11月にβ版がリリースされ、現在では約20社、約400人の職人や協力企業に利用されるまでに成長しました。
「現場一番」の最大の特長は、直感的に操作できるUIデザインと、職人たちへの連絡が簡単になった点です。アプリ上で工程表を作成・修正するだけではなく、今まで電話やLINEなどで行っていたスケジュールの調整・管理、職人や協力業者への仕事依頼もアプリで可能。職人への連絡漏れもボタン1つで防げます。工程表を作成すると、依頼先の職人や業者のアプリに通知されるので、職人からの問い合わせがほとんどなくなりました。
デジタルツール導入の課題と克服のプロセス
とはいえ、新しいデジタルツールの導入は、現場に少なからぬ影響を与えるものです。「現場一番」の導入当初は、今迄の習慣で電話やLINEでの職人や協力企業からの問合せがすぐには減りませんでした。そこで、LINEや電話であえて回答をすぐせず「現場一番」で共有しているからそれを確認して欲しいと伝えて言った所、不慣れな人手も3ヶ月ぐらいで現場に浸透するようになりました。
建築に関わる全ての業者の満足度向上
「現場一番」の導入は、目に見える形で成果を上げています。具体的には、情報共有の手間が9割、職人からの連絡が7割、工程のやり直し・出戻りが6割、現場に訪問する回数も4割と、それぞれ削減に成功。手戻り作業の減少や、現場訪問・電話の回数削減、工期短縮など、業務効率は大幅に向上しました。
職人からも「現場近くの駐車場の場所が分からない」などの問い合わせ電話をしなくて済むようになり、「アプリのおかげで段取りがスムーズになり、ストレスが減りました」といった声が聞かれるそうです。コミュニケーションの活性化により、チームワークの強化にも一役買っているようです。
建築業界のデジタル化が切り拓く未来
株式会社IWAKISTYLEが開発した「現場一番」は、現場のニーズを反映したユーザビリティと、丁寧な現場への導入プロセスが奏功し、現場で作業をする職人や協力企業様から支持されています。
株式会社IWAKISTYLEは、建築業に従事する全ての人々が笑顔になれるよう、「現場一番」を通して建築業全体のさらなる活性化に貢献したいと考えています。まだまだアナログな作業の多い建築業界で、業務のデジタル化へ挑戦する株式会社IWAKISTYLEの今後にも注目です。