DX事例

【群馬県】目指せ!日本最先端クラスのデジタル県!!「ぐんまDX加速化プログラム」

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、自治体や民間企業などが取り組んだ事例を発掘し共有するためのコンテストです。

DXは、組織全体のBPR(業務改革)を伴う取り組みです。行政は縦割りの組織なので、
部署ごとに与えられた役割のみに専念しがちで、部署間の相互連携が取りづらいなど縦割りの組織文化が根強い場合、DX推進は難しくなります。

群馬県は、知事を本部長としたDX推進本部の立ち上げだけでなく、各部局にDX推進リーダーを配置してボトムアップでもDXを進める体制を整えたり、市町村のデジタル化を県が支援したりするなど、全庁・全県一丸となってDX推進に取り組んでいます。

2022年6月23日に行われた「行政機関部門」より、群馬県の事例をご紹介します。

群馬県の概要
■人口:1,915,293人(2022年7月1日現在)
■面積:6,362km2
■主な産業:農業・製造業(輸送用機械(自動車など)、
業務用機械、食料品など)・畜産業
■知事:山本 一太
■公式Webサイト:https://www.pref.gunma.jp/

群馬県が目指す姿~新・群馬県総合計画~

群馬県は、県の最上位計画である「新・群馬県総合計画」の中で「年齢や性別、国籍、障害の有無等にかかわらず、すべての県民が、誰一人取り残されることなく、自ら思い描く人生を生き、幸福を実感できる自立分散型の社会」を目指す姿としております。

自立分散型の社会とは、群馬にしかない自然、産業、文化などの「土壌」にデジタル技術を掛け合わせることで価値を生む力を高め、加えて官民共創による社会の持続性を高めることにより、県民の幸福度向上を実現する社会です。自立分散型の社会実現に向けて、喫緊の課題となっているのがデジタル化です。

そこで群馬県は、2021年度から2023年度の3か年でデジタル化に集中的に取り組み、2023年度末までに日本最先端クラスのデジタル県になることを目指しています。

「ぐんまDX加速化プログラム」

群馬県が日本最先端クラスのデジタル県を達成するために策定したものが「ぐんまDX加速化プログラム」です。これは群馬県庁内の代表的なDX事業を収集し2021年度から2023年度末までの3か年で取り組む工程表としてまとめたものです。

現在「ぐんまDX加速化プログラム」には、「人材の育成」や「ICTクリエイティブ産業の創出」に関する事業を含め109の事業があり、「新・群馬県総合計画」で定める19の政策分野で分類しています。これらの事業を実行することで、群馬県内の自立的なDXの流れを創出しています。

群馬県のDX推進体制

双方向の推進体制を構築

群馬県では、知事を本部長、各部局長を構成員としたDX推進本部を設置し、全庁を挙げてDXを推進しております。また、その下部組織としてDX推進監を座長、各部局の主管課長を構成員とした幹事会を設置しており、DX推進に掛かる調整や本部からの指示を受けての調査検討を行っています。さらに、各部局にDX推進リーダーとしてDX推進係を配置し、部局内でDX推進体制を構築することで、通常トップダウンで本部の指示が事業担当に下りる流れに加え、ボトムアップでもDXを推進できるような体制にしています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略課

群馬県では、2020年4月に全国に先駆けてDX推進を専門とするデジタルトランスフォーメーション戦略課(以下、DX戦略課)が設置されました。DX戦略課には、事務職以外にも
各分野の技術職、ICT職の経験がある職員など多彩な人材が在籍し、それぞれが知識を出し合いながらDX推進業務にあたっています。また、DX戦略課員にはそれぞれ担当部局が割り振られており、部局担当として各部局に入り込む形でDX事業の実行を支援しています。

通常行政では年度単位で事業が行われるため、PDCAサイクルも1年間かけて回すことが多いのですが……

群馬県では3年間という短期間で日本最先端クラスのデジタル県を目指すことから、四半期ごとにPDCAを回す高速PDCAを採用し、よりスピード感を持ってDXを推進しています。

群馬県独自のDX推進施策

月次2+2ミーティング

月次2 + 2ミーティングは、DX戦略課と各部局が原則月1回以上顔を合わせる場で、DX戦略課からは企画係と部局担当、各部局からはDX推進係と事業担当課がそれぞれ参加します。
このミーティングの目的は以下の3つです。

  • DX事業の実態を把握し、事業内容の改善や方向性の修正を行うこと
  • お悩み相談を受けてDX戦略課のサポートにより事業の遅延や停滞を防止すること
  • 気軽にDX戦略課に相談しやすい、意見しやすい関係を構築すること

行政は縦割りで事業が進むことが多い中、部局横断で事業担当課と密に連携して事業を推進していることが大きな特徴です。

DX推進協議

事業を予算化する場合、事業課は財政部門の査定を受けますが、対象の事業がDX関連事業の場合、事業課や財政部門がデジタルに詳しくないために、事業課としては事業内容に改善の余地があり、財政部門では事業内容の査定が難しいことが課題となります。
そこで群馬県では、DX関連事業の内容をDX戦略課が総合的かつ一元的に審査する「DX推進協議」という枠組みを設け、DX関連事業の予算化を支援しています。事業課から相談を受けたとき、DX戦略課で事業内容を精査し、必要に応じて予算が付きやすい形に方向修正を行います。なお、DX戦略課で良い評価をつけた事業については、ほぼ予算化につながっています。

地域課題解決プロジェクト

地域課題解決プロジェクトは、デジタル知識に乏しいが課題を把握している各部局と、
デジタルに精通している一方で課題の把握が困難であるという民間事業者を、DX戦略課が仲介して引き合わせ、実証事業を実施する枠組みです。

DX戦略課では地域課題解決プロジェクトのために柔軟に使える予算を持っており、DX戦略課員が伴走支援することで事業の本格化を支援しています。ぐんまDX加速化プログラムに
掲載している事業においても、必要に応じてこの枠組みを使うことでDX関連事業を推進しています。

事例紹介

ここからはこれまでに説明した推進体制、推進策によって実施されたDX関連事業を2つ紹介します。

イノシシ捕獲通報装置の製作・運用(農業分野)

群馬県ではCSF(Classical Swine Fever:豚熱)がこれまでに7例発生し、県内の主要産業である畜産業に甚大な被害が及んでいます。野生イノシシがウイルスを拡散させている可能性が高いとの発表があり、豚熱ウイルスを少なくし感染リスクを低減させるためにはイノシシの捕獲を強化する必要があります。

イノシシの捕獲手段には猟銃やわながありますが、イノシシの捕獲強化にはより多くのわなを仕掛ける必要がある一方で、わなを設置すると原則毎日の見回り必要であり、わなの見回り負担が非常に大きくなってしまうという課題があります。

そこで、IoTを活用した捕獲通報装置、いわゆるIoTわなを用いることで効率的な捕獲活動を実現し、見回りの労力を軽減させる実証事業を行いました。これはイノシシがわなにかかるとセンサーが作動し、SNS・メールで捕獲がスマートフォンに通知され、そして現地でイノシシを駆除し、スマートフォンなどで報告するものです。

上記は実際に本事業で製作した成果物です。左側がわな、真ん中が捕獲報告アプリ、右がわなの設置方法などを解説した動画です。全て職員のDIYで作成しており、導入運用コストの
大幅削減を実現しました。また捕獲報告アプリによりリアルタイムで捕獲データの収集が
可能となりました。捕獲従事者からは「便利だ、継続して使用したい」、実証事業に参加した自治体職員からは「このIoTわななら役所でも作ることができ、見回り負担が減るのでわなを仕掛けるハードルが下がる」などと好評価をいただいております。

地球温暖化対策事業認証制度の手続きのオンライン化・自動化(環境分野)

群馬県には県内事業者の地球温暖化対策の事業活動を認証する制度があり、この認証に係る申請が年間約3,000件あります。これまでは紙・電子データで受け取っていた申請情報を台帳に転記し、手作業で集計した上で認証を受けた事業者を手作業で公表するというまさに
手作業のオンパレードでした。そのため膨大な作業時間がかかり、転記ミスや見落としといったリスクがあることから、本業務の自動化が求められていました。

そこで本事業では、Microsoft Power Automate(※)を使って職員がDIYでシステムを構築し、業務のオンライン化・自動化を実現しました。Excelやフォームで入力された内容がメールで担当に通知され、内容確認と承認を行うだけで台帳への自動転記と、申請内容の即時公表が行われることで、これまでの手作業が全てボタン1つで完結します。これにより、作業時間が86%削減され、政策立案業務に人的資源を集中できたほか、DIYのため職員自身でシステムの改修できることから、制度改正に柔軟に対応可能となりました。

この事例はDX推進本部の幹事会でデモンストレーションする形で共有しており、今後同様な事例で本事業のやり方を展開していきます。

※Microsoft Power Automate(Desktop):業務プロセスを効率化かつ自動化できる、RPAのツール。

群馬県デジタル窓口

群馬県ではLINE公式アカウントとして「群馬県デジタル窓口」(友だち数約77万人:2022年8月現在)を開設しており、県民向けにさまざまな機能を提供しています。

新型コロナワクチンの接種予約ができる「ぐんまワクチン接種LINE予約システム」では、
群馬県が市町村向けに共通の予約システムを構築して機能を提供するという、全国でも例のない方法を採用しています。また、全国に先駆けて導入した「ぐんまワクチン手帳」は、
市町村が管理しているワクチン接種情報を群馬県に提供してもらうことで、ワクチン接種履歴をスマートフォンに表示できるようにしました。

いずれも、市町村との連携があって実現している事業で、県がデジタルを使って市町村の
業務を支援することで、県内のDXを強力に推進しています。

最後に

群馬県には「上毛かるた」という、群馬の郷土について詠んだかるたがあります。この中の「ち」の札では「力を合わせる200万」、つまり全県民が一丸となって力を合わせることを謳っています。群馬県はこの札のとおり、全庁・全県を挙げて日本最先端クラスのデジタル県を達成することを宣言いたします。