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建設DXに取り組む、小森組のi-Construction戦略と人材育成

建設DXに取り組む、小森組のi-Construction戦略と人材育成

建設業界では、生産性向上と担い手不足の解消が急務となっており、解決策として、i-Constructionなどのデジタル化を推進することが挙げられます。i-Constructionは、国土交通省が全国で推し進めている、ICTの活用により施工などの業務を効率化させるプロジェクトです。

本記事では、i-Constructionを内製化することで、生産性向上と人材育成に取り組んでいる、株式会社小森組の事例をご紹介します。

小森組も例外ではなかった、建設業界に山積する問題への対処

建設業では、技術者の高齢化が続いており、このままでは人手不足倒産が起きることが予想されています。また、若年者の入職が少なく低給与、キャリアの不透明さ、教育の不足などの課題も山積しているのが現状で、小森組も例外ではありませんでした。

仕事の属人化を解消し、情報共有を促進することで生産性を向上させる施策や人材育成の必要性を感じて、小森組ではクラウドストレージ、グループウェア、チャットツールなどSaaSを活用したバックオフィスの効率化と施工のICT化、つまりi-Constructionに着手しました。

i-Constructionの内製化とクラウドツール導入による業務革新

i-Constructionとは、図面の照査、測量、施工といった建設のプロセスにおける生産性を向上させるためのICT技術を取り入れるプロジェクトで、国土交通省を中心に全国で推進されています。

専門性が高く機械も高額であるため、多くの建設企業では重機や機器をリースしたり、i-Construction外注に頼ったりしているのが実情です。しかし、i-Constructionを外注すると、ICTの活用ノウハウが自社に蓄積されません。

小森組はi-Constructionの内製化を手がけることを決断。会社全体で方向性を定め、トップダウンで取り組むことを定着させました。ICT活用に際しては、実際の利用(現場)とデータ作成(社内に設けたICTチーム)とで担当を分けました。最初に図面の3D化を行い、測量にはドローンを、施工には衛星情報を利用できる、自動運転機能搭載の重機をそれぞれ取り入れたことで、新人や経験が浅い技術者でも、より簡単かつ効率的に作業を行えるようにしました。

キーワードは「簡単・汎用性・連携・安価」

クラウド導入での生産性向上と人材育成に取り組むにあたり、小森組では「簡単」「汎用性」「連携」「安価」という4つのキーワードを掲げてツールを選定していきました。20代から80代まで年齢もITスキルも多様な社員が在籍しているので、誰でも自社のどの業務でも使えるツールであること。安価でどのクラウドツールとも連携しやすいことを重視し、SIer依存を避け、自社で全てシステム管理することを前提としました。

小森組におけるグループウェア、LINE WORKSやSlackといったチャットツールの導入は、バックオフィスの業務効率化、情報共有と社内外のコミュニケーションの円滑化、人材教育に大きな成果を上げました。情報共有にはkintoneを導入。施工後の情報はBoxに格納され、次の工事や人事教育に活用しています。Power Automateを使ってSlackと連携させることで個人フォルダーへのデータ追加を通知します。

デジタルツールの導入は、若手社員の育成にも好影響を与えています。若手でも高度な技術を習得しやすくなり、成長を後押ししています。

DXの効果調査で実施した、土木工事の事例

i-ConstructionとSaaSの連携によるDXの効果を調査したところ、重機で山を削ってコンクリートで道を作る土木工事の場合、1年弱かかる工期のうち1ヶ月(10%)の短縮と、i-Constructionが得意とする重機や測量などの分野では約50%生産性が上がりました。

この取り組みは、和歌山県と国土交通省から表彰されました。

他にも給料のアップ、休日の増加といった社員の待遇改善、データ通信量の増加、決済期間や工期の短縮、新卒・中途ともに採用者が増えるなど、社内にも多くの効果をもたらしたのです。

まとめ

株式会社小森組の事例は、建設業におけるデジタル変革の先進的なモデルと言えるでしょう。小森組では、3年にわたるDX推進を受けて、自社のブランディングの強化とクラウドを介した全国からの案件受注に注力することを決断。クラウドツールや最新技術(¬=ゲームチェンジャー)を導入し続けることで他社と差別化を図り、オーダーがなければ仕事がないという受け身の状態から脱却しようとしています。

今後も、小森組は顧客や地域に必要とされる建設会社になるべく、さまざまな挑戦を続けていきます。