日本の地方自治体のデジタル化は、新たな時代の到来を告げています。この動きの中で特に注目されるのが、宮崎県都城市(以下、都城市)の先進的な取り組みです。都城市では、マイナンバーカードの申請・交付率が全国でもトップクラスで、市長の指揮のもと、全市一丸となって自治体のDX推進を強力に推し進めています。
本記事では、イベントへの参加予約方法にクラウドを活用した都城市の事例について、その具体的な方法と成果に迫ります。
電話でのみ受け付けていた、市民イベントへの参加予約
都城市では、市民向けイベントや健診プログラムへの参加予約を電話のみ受け付けるという方法を採用していました。市民がイベントや健診プログラムの参加を予約する場合、市役所の開庁時間に電話しなければならず、その後も予約したことを忘れてしまうといったことが起きていました。一方、職員側でも参加者の属性情報を分析するのが大変で、本来の業務を止めて電話応対をしなければなりませんでした。
インターネットの予約システムを導入しようにも、役所が独自に使っている既存のインターネットシステムでは使いづらく、個人情報も課ごとに管理するため、コストがかかってしまいます。
クラウドサービス「OTETSUZUKI」の開発
そこで都城市は、自治体のSaaSとして、クラウドサービス「OTETSUZUKI」をIT企業と共創で開発しました。
「OTETSUZUK」はLGWANとインターネット回線からアクセス可能です。また、インターネットからLGWANへのファイル送信時には、ファイルが無害化されます。80の課がある都城市役所では、このアカウントを全ての課に配布する契約です。
QRコードの自動発行機能や、キャッシュレス決済への対応、マイナンバーカードを用いた本人認証機能など、多彩な機能が搭載されています。
「OTETSUZUK」がもたらした、Win-Winの効果
「OTETSUZUK」の最大の成果は、市民サービスの質と職員の業務効率の飛躍的な向上です。
スマートフォンやパソコンから、いつでもイベントや健診などの参加予約ができること、リマインドメールの送付により、イベントや健診プログラムへの参加率がアップしました。また、電話対応も減少したことで本来の業務に専念できます。自治体専用ネットワークからもアクセス可能なので、職員の自席からの予約管理とイベント終了後のアンケート集計、参加者の属性情報分析が簡単に行えるようになりました。
都城市は第三セクターや指定管理者など、市が管理委託を依頼している関係機関に対しても、アカウントを配布しています。昨年10月からは葬祭事業者にも配布していて、斎場予約システムにかかるコストを大幅に削減できました。都城市は街全体の予約オンライン化を推進しており、自治体と関連機関での情報共有と連携を促進するとともに、クラウドによる地域全体の力の底上げに貢献しています。
まとめと展望
企業だけでなく、地方自治体も今やクラウドサービス活用時代に突入しました。自治体職員が減っていく中で、自治体のクラウドサービスを活用することで、住民サービスが向上し持続可能な行政運営も実現可能です。
今後も都城市は、全国の地方自治体のクラウドサービス活用を牽引していくために、これからもさまざまな分野でチャレンジを続けていき、より良い住民サービスを提供を目指していくとのことです。