DX事例

DXで面接を変える!テクノロジーを駆使した大塚商会の採用改革

面接は採用プロセスの要。しかし、その内容は長らくブラックボックス化され、定量的な評価や改善が難しいのが実情でした。この課題に真っ向から挑んだのが、大手独立系ITソリューションプロバイダーの株式会社大塚商会です。同社は、株式会社ZENKIGENの採用DXサービス「harutaka(ハルタカ)」を活用し、AI解析を組み合わせることで、面接の課題を可視化。データに基づいた面接官教育や品質向上を実現しました。従来の手法を覆す、先進的な取り組みの狙いと成果を紹介します。

背景: コロナ禍で鮮明になった面接の課題

大塚商会の採用担当である大橋藍子氏は、面接改革に着手したきっかけについて次のように語ります。「もともと全員面接主義だった当社でしたが、コロナ禍でそれが難しくなり、いかに効率的に候補者を絞り込むかが課題となりました。また、対面からWeb面接への切り替えに伴い、面接の工数も大幅に増大。この状況を打開するため、harutakaの導入を決めたのです」。

実践事例の紹介: 動画面接×AI解析で課題が明らかに

harutakaを導入した大塚商会は、まず動画でのエントリーを導入。アピール動画を見ることで、「会わずして候補者の熱量や印象を知ることができるようになった」と大橋氏は言います。また、面接の録画機能により、これまで見えなかった面接内容の課題が浮き彫りに。面接官のスキルのバラつきや、学生の面接体験の改善余地が明らかになったのです。そこで、録画データをAIで解析。面接官ごとの特徴を定量化し、学生アンケートや選考進捗データと組み合わせて、面接スキルの可視化を実現しました。 

アプローチ: データとフィードバックで面接官を育成

可視化したデータは、面接官教育に活用。優秀な面接官の特徴を分析し、評価の高い面接官像を設定。それを基に、harutakaによる面接中のアラートやAIによる面接レポートを通じて、面接官に具体的なフィードバックを行いました。「笑顔の多さが良い面接官の指標と思われがちですが、必ずしもそうではありません。様々なタイプの良い面接官がいることがデータから見えてきました」と大橋氏。各面接官の個性を活かしつつ、改善を促す取り組みを継続的に実施しています。

課題と克服: 面接官の自発的な成長を促す

面接官は人事だけでなく、現場の管理職や役員等も務める。「初年度は抵抗感を感じていた方もいたかもしれません」と大橋氏は振り返ります。「しかし、自分のデータを見える化されることで、面接官の意識が変わっていきました。『自分の課題はここか』と自発的に振り返り、意欲的に改善に取り組む姿が見られるようになりました」。人事と面接官が一体となって、より良い面接を目指す土壌が生まれつつあります。

成果: 内定承諾率の向上と”面接から入社まで”の好循環

この取り組みの成果は、内定承諾率の大幅な向上に表れています。データに基づく面接は、学生の志望度を高め、選考途中の離脱を防ぐ効果を発揮。大橋氏は、「SNS時代の学生の発信力を考えると、良い面接体験の提供は、会社の評判を守ることにも繋がります」と、副次的な効果にも言及します。

「面接は通過点であり、入社がゴールでもありません。その先の成長と会社への貢献を見据えることが重要。より良い採用活動を行なうことによって、会社の成長に繋げていきたい」と、大橋氏は展望を語ります。

まとめ: テクノロジーが採用の常識を変える

大塚商会の事例は、テクノロジーの力で採用の在り方そのものを変革できることを示しています。ブラックボックスだった面接をデータ化・科学化し、改善のPDCAを回す。こうした取り組みは、他社の採用担当者にとって大いに参考になるはずです。

一方、大橋氏が強調するのは、あくまで主役はテクノロジーではなく人だということ。「人事がガイドとなり、現場の面接官が自律的に学んでいく。テクノロジーはそのための強力な武器。単なる”効率化”ではなく、エンゲージメントと組織文化を育む原動力として、AIやデータを活用していきたい」。採用のDXは、人と組織の変革の入り口に過ぎません。大塚商会の挑戦は、これからも続きそうです。