DX事例

【株式会社フレアサービス】中小企業の活路は”DX”にあり!~悩み解決から強みづくりへ~

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、自治体や民間企業などが取り組んだ事例を発掘し共有するためのコンテストです。2022年6月21日に行われた「中小規模法人部門」より、株式会社フレアサービスの事例をご紹介します。

株式会社フレアサービスは、「喜ばれる企業!幸せになる企業!」を経営理念として、
介護施設などに提供する給食をメインにした食品製造業を行っています。食品製造の現場では、長年に渡る大きな課題を抱えていることから、DXで課題解決に挑みました。その背景と、成果を紹介します。

株式会社フレアサービスの概要

■法人名:株式会社フレアサービス
■事業内容:食品製造業
■設立:平成12年1月15日
■公式Webサイト:https://www.flare.co.jp/index.html

低価格で喜ばれる給食を提供したい

我々、株式会社フレアサービスは給食をメインにした食品製造業を行っています。
従業員はグループで300人程度、売上は約13億4千万です。
このたび、DXで3つのシステムを開発しました。

①AI技術を活用した自動献立作成システム
②IoT技術を活用した生産性可視化システム
③顧客管理から献立作成→製造→納品→請求までワンストップの基幹システム

当社では、次のポイントを実践するためにDX戦略を掲げています。

・経営理念の具現化(従業員との約束)
・経営課題の解決
・緊急性はないが重要度の高い業務へのシフト

つまり、DXをうまく活用しながら、ルーティンワークを軽減し、従業員が専門性の高い仕事へシフトし、働きがいのある会社になれることを目指しています。

「機械化」「システム化」「DX活用」が目的ではありません。
当社のお客様の多くは、介護施設であり、高齢者個人が100%食事負担をしています。
定まった年金収入の範囲内で、低価格で喜ばれる食事を提供することに意義・追求の余地があります。

「ご高齢者にとって最後の食事になるかもしれない」という使命もあります。

現場で長年続く大きな課題

しかし当社の仕事の現場では、長年、大きな課題を抱えていました。

栄養士の課題

・献立作成に忙殺される
・食材、料理の被りが頻発する
・サイクル献立での飽きがくる
・献立の評価基準が曖昧
・生産性を考慮した献立づくりが難しい

工場の課題

・属人的な作業が多い
・毎日変わるメニューのため、作業の標準化が難しい
・作業の無理・無駄の洗い出しが難しい
・生産性向上のKPI設定が曖昧
・人手不足のため人件費が高騰

ご利用者様・患者様の、食への期待

介護施設を利用されるご高齢者にとって、食べることはやはりいちばんの楽しみであり、「美味しい食事であること」「飽きのこない献立」「好みの食事」「量」など個々の要望をいかに満たすか、も課題でした。お客様からは、このようなお声もいただきます。

「食事は私にとって最高の贈り物です」
「自分のイメージとぴったりのものがあると、言葉に表せないほどの満足感・幸せを感じる」
「人生最後の食事になるかもしれない」

そこで、このような現場の課題を解決するべく、当社では独自にシステム開発を決断しました。

AI献立作成システムの開発

まずは、AI献立作成システムを開発しました。
システムの中に料理のマスターがたくさん登録されています。

そのマスターに対して「献立の原価、重量、栄養素は、カロリーは、塩分は、タンパク質はどうするか…」「和食・洋食・中華の比率はどうするか…」「揚げ物を少なくして、焼き物を増やしていこう…」など、13項目の制約条件を設定しました。

このようなアルゴリズムを作ったことで、最適な献立の組み合わせの自動化を実現、
7名の栄養士が1ヶ月に1190時間使っていた献立作成業務を、50%削減することができました。

IoT生産可視化システムの開発

続いて、IoT生産可視化システムを開発しました。工場の作業従事者にICタグを付け、
現場にはロケーターを付け、作業従事者の導線を監視するシステムです。

作業導線を「準備時間」「移動時間」「作業時間」に分類して考え、「準備時間」「移動時間」をいかに短縮し「作業時間」を長くするか、KPI設定をしました。

成果としては、導入前は月労働時間が「1620時間」だったものが、導入後は「1404時間」に短縮されました。

基幹システムの開発

続いて、基幹システムを開発しました。

「お客様からの食数の申込み」「献立作成」「工場の生産」「請求業務」これら一連の作業をワンストップで自動化するシステムです。

DXで解決できたこと

・栄養士の属人的でばらつきのある献立
 →AI技術により「食への期待」を実現

・生産性を考慮した献立作成が困難
 →AI技術により生産性の高い献立を実現

・作業者の分析をアナログで行うのは困難
 →IoT技術により作業導線をデジタルで確認

・生産性向上は現場の理解を得にくい
 →導線図によりロジカルに導線改善を実現

・手書き、手計算などの作業が煩雑
 →事務方業務までワンストップで自動化を実現

システム開発のポイント

自社の経営理念を具現化し、いかに経営課題を解決していくかを重要視し、トップ自らが
強力にシステム開発プロジェクトへコミット、経営の在り方・仕組みを見直すようにしました。

経済産業省の「新連携補助事業(産官学金連携)」の補助事業を活用し、2年間で6千万の
資金補助を得て開発を進めました。

また、自分たちではシステム開発をできないので、AI技術などを提供してくれる外部パートナーといかに連携できるかが課題でした。そこで地域内の中小企業センターや中小機構を
活用し、地元・北海道大学発のスタートアップや、名古屋の企業とつながることで開発が
実現しました。

社長自らがPMとなり、外部連携や社内統括を進めていきました。

今後の展開

開発した3つのシステムに関して、日々の改善・検証を継続的に実施することが重要だと考えています。3システムをコアとして、それに付随するオプション的なシステムも既に開発を進めました。

それらをトータルで「フレアユニクルソリューション」としてブランディングを行い、
全国の給食会社にサービス展開していきたい、同業者の同じ課題を解決したい、給食の地位向上にも寄与していきたいと考えています。

福祉給食業界は、労働人口不足や高齢者市場で「追い風」の状況です。
しかし、食べてくださるご高齢者は年金暮らしであり、値上げは容易ではなく、なおかつ、最後の食事になるかもしれません。

企業側の「人材不足」を理由に、努力を怠ることはできません。
当社が開発したシステムは、人材不足に悩む同業者にも望まれるプロダクトではないかと
考えています。DXの力を借り、思いを形にしていきたいです。