DX事例

【株式会社大丸松坂屋百貨店】DXでファッションの新しい体験を創造するAnotherADdress

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、自治体や民間企業などが取り組んだ事例を発掘し共有するためのコンテストです。

2022年6月20日に行われた「大規模法人部門」より、株式会社大丸松坂屋百貨店の事例をご紹介します。

老舗百貨店「大丸」や「松坂屋」を運営する同社では、デジタル技術活用によりファッションの新たな消費の形であるサブスクリプション型ファッションレンタルサービス「AnotherADdress(アナザーアドレス)」を提供しています。その舞台裏をご覧ください。

株式会社大丸松坂屋百貨店の概要

■法人名:株式会社大丸松坂屋百貨店
■事業内容:百貨店事業
■設立:1910年2月1日
■公式Webサイト:https://www.daimaru-matsuzakaya.com/

なぜこの事業をはじめたのか?

百貨店業界は、20年前にEC化に乗り遅れたことが大きな足かせとなって非常に厳しい状況にあります。

そのような中、次なる消費の大きな転換点として「モノのシェアリング」「サブスクリプション」が来ると捉え、この大転換に今度こそは乗り遅れないようにという思いでスタートしました。加えて、我々には今やらなければならない2つの責務があると考えています。

(1)サステナブルなビジネスモデル

小売業は大量生産・大量消費で成長してきましたが、大量廃棄を生み出し環境負荷になっています。今まで培ってきたアセットを活かしながら持続可能なビジネスモデルに舵を切る
必要があります。

(2)ファッションエンパワーメン

ファッションが持つ、人を元気にする力を改めて多くの人に知ってもらいたいと考えています。バブル以前に「大丸」「松坂屋」「PARCO」等、我々はファッションを通じて日本の
マーケットを彩ることで成長してきました。しかしバブル以降、日本の景気が低迷する中、ファッションの力を伝えることが難しくなってきています。「AnotherADdress(アナザーアドレス)」ではファッションが元気や自信をくれることを多くの人に改めて体験していただきたいと考えています。

「AnotherADdress」のサービス概要

サービス黎明期なので、シンプルなワンプランで提供しています。

一度は着てみたかったファッションブランドの服を自由に3着、1ヶ月間11,880円でレンタルできるというサービス内容です。サイズ違いや、似合わない場合は返品可能で、送料・
クリーニング代・修繕費も月額料金に含まれています。レンタルして気に入ったアイテムは、割引価格で購入することもできます。

事業スキームと規模

パートナー企業と組んで、レンタル・シェアリングサービスをサブスクリプション型でお客様に提供しています。百貨店事業とは切り離し、社内ベンチャー型・100%WEB型の事業運営を行っています。

まずは、事業開始5年をかけて売上高55億、在庫高20万着、有効会員数3万人を獲得し、「日本のファッションサブスクリプションと言えばAnotherADdressだよね」と言っていただける事業にしていきたいと考えています。

事業パーパス

チームで重視しているコンセプトは「Fashion New Life」事業を通してファッションの
新しい消費体験を創っていくことです。コンセプトをさらにブレイクダウンし「4つのコア」を掲げています。

・サステナブル

ファッションは使い捨てではない。小売業として、パートナーと共にお洋服の流通プロセスを変革して服の寿命を伸ばし、捨てられる服を減らしていくことで環境に貢献する

・クリエイティブ

試すのではなく過ごす。1ヶ月間のなかでさまざま人や場面を共に過ごすことで、自分に
本当にクローゼットにお迎えしたいお洋服との出会いを提供することで、新たなお洋服の
消費スタイルを創造する。

・インテリジェンス

「購入する服」と「レンタルする服」をうまく使いこなすことで、クローゼットの空間や
悩む時間、経済的な負担も効率的に解消すると共に、お客様のファッションの幅を広げる
お手伝いをする。

・ドレスコード

ファッションの自由度が加速することで、様々な場面でどんなお洋服を着て良いか分からないという悩みが溢れている。そのようなお客様に時代の変化に合わせたお洋服やスタイリングを提案する。

ポジショニング

目指しているのは、日本で最もファッションの“愉しさ”や“豊かさ”を実感できるサブスクリプションサービスです。

多くのファッションサブスクリプションサービスが、利便性・価格志向で人気を博していますが、AnotherADdressでは、ご提案するお洋服の質はもちろん、「デートや「プレゼン」といった毎月の大事なシーンに合わせてお洋服を選ぶ、ファッションの醍醐味を通じて、
ファッションがもつ、人を元気に楽しくする力を実感できるサービスにしたいと考えています。

今では国内外100以上のデザイナーブランドに参画いただき、「サブスク初参入」というブランドも多いこともあり、大きな差別化のポイントになっています。

デジタル活用 4つの取り組み

①フレキシブルなシステム構成

レガシーシステムと完全に切り離し、パッケージ・ASP・APIをフル活用したフレキシブルなシステム構成にしています。

低コスト・短期開発・高拡張性を実現し、意思決定からサービスローンチまでわずか半年、開発コストも通常の新規事業の数分の1に抑えられました。

②徹底したデータの取得と可視化

データをフル活用し「誰が何を見て、何をレンタルしたか」だけでなく、レンタルサービスの特性を活かして「レンタル後の評価」「着用シーン」「レンタル品の経年変化」等、毎日データ更新を行っています。チーム全員が手元の端末から確認できる環境を構築し、PDCAを促進しています。

③RFIDによる物流プロセス改革

レンタル品の個体管理の目的で、すべてのお洋服にRFIDを縫い付け、個体管理、クリーニング間引き渡し、棚卸し、商品探索、ロケーション管理など、物流効率改善に成功しました。

④2WEEKバッチでのアジャイル開発体制

要件定期を完璧に行ってウォーターフォール型の開発を行うことは、変化の早い今の時代には不可能です。

お客様とのコミュニケーションをLINEに一本化することで、フレキシブルかつライトにサービス改善要望も受けられ、「CRM」「サービス企画」「開発管理」の役割が一体になった「CRMチーム」でお客様の声を吸い上げつつ、2週間単位でサービスに反映するアジャイル体制を取っています。

取り組みの成果

・会員数:対事業計画700%超。サービスローンチからわずか3日で3000人の申し込みを
獲得

・CPA:ほぼ0円。多くのメディアに取り上げられ、問い合わせや申込みにつながるなど、好循環を生み出した

・退会率:1.0%以下。アジャイル開発を上手く回し、顧客満足度につなげている

・新規顧客:84%。百貨店で購買しなかった層を新たに取り込むことに成功した

最後に

将来的には、お客様のクローゼットに眠っている服を預かって、シェアリングサービスに
発展させるなど「ファッションの新しい消費体験」の世界観をさらに広げていきたいです。

■関連サイト


日本DX大賞
https://dx-awards.jp

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会
https://jdxa.org/

Re:Innovate Japan
https://re-innovate.jp/