DX事例

【株式会社グッデイ】GooDay X 〜地方企業が挑んだ「人」のDX〜

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、自治体や民間企業などが取り組んだ事例を発掘し共有するためのコンテストです。2022年6月20日に行われた「大規模法人部門」
より、株式会社グッデイのDX推進事例をご紹介します。

株式会社グッデイは、九州北部を中心に店舗展開するホームセンターです。
スタッフ一人ひとりがITツールを駆使したデータドリブン経営を進め、売上高がこの5年で26%もアップ。DXに成功した会社として注目を集めています。

地方企業がたった5年でここまでDXできたのは何故なのでしょうか?その舞台裏を公開します。

株式会社グッデイの概要

■法人名:株式会社グッデイ
■事業内容:小売業(ホームセンター・グッデイの経営)
■設立:1978年3月
■公式Webサイト:https://www.gooday.co.jp/

2008年当時、誰もインターネットにつながっていなかった

株式会社グッデイは1978年創業、店舗数64、従業員数1500名、売上高380億、ホームセンターを展開している企業です。

「タブレットで在庫確認し、お客様に対応」
「過去の売上データから需要予測をして、売り場の整備」
「月次販売データを深堀りし、営業施策を考案」

といった取り組みを行っています。

しかし、現社長の柳瀬が入社した2008年当時は、社内の誰もインターネットに繋がっておらず、メールも、Webサイトも、自社ドメインも無い、会議資料は紙ベースという状況でした。現場の「勘」や「経験則」に頼った経営で業績が伸び悩み、変化を嫌うカルチャーが
社内に蔓延していました。その状況に対して危機感が募り、経営課題解決の目的で、2015年からDXに取り組み始めました。

「情報共有」と「データ活用」の取り組みを開始

情報共有のためのGoogle Workspace

2015年にGoogleワークスペースを導入し、全てペーパーレス化しました。
会議資料も、カレンダー共有も、報告書提出も、メールも、GoogleドライブやGmailに
して、一気にGoogle社のような働き方に変えました。

「無駄をなくす」という分かりやすい課題が受け入れられ、Google Workspaceによる
情報共有は、またたく間に社内に浸透しました。

データ分析のためのTableau

次に取り組んだのが、経営判断に必要なデータ分析です。

それ以前は「データはあるが、業務に使えない」もしくは「使おうとすると一度Excelに
エクスポートし、自分たちで分析」という運用で、数字のコントロールが効かない課題を
抱えていました。新しく着任したシステム部長が、データをクラウド上に保管していろいろと調べているうちに、BIツール「Tableau」の存在を知り、導入に至りました。

実際に使ってみると、自分たちがやりたいことと非常に近かったので、社長自身もTableauを使って分析を実践し始めました。Tableauの活用により、「人口動静や競合分析を反映した店舗カルテ」「売上のリアルタイム分析」「季節商品の売上予測」など、次々に現場で
活用できるアイデアが生まれました。

DX成功のカギ

前出の両ツールともに既存のサービスであり、低コストで導入できました。
DXの目的はあくまで、課題解決です。新規にシステムを構築するよりも、安価で手を付け
やすいところから始めることが、成功のカギだと捉えています。

そして、現実の経営課題を解決するためには、社員一人ひとりの行動が変わらなくてはなりません。

社員自身の行動変革を促す

当社では単に、ITツールによる業務効率化を目指しただけではありません。

既存スタッフがデータドリブンで物事を考え、データで互いにコミュニケーションし、
チャレンジ精神を持ったマインドへ変革する「人のDX」も目指しています。各部署から
メンバーを選抜して行う勉強会「GooDay Data Academy」を毎週開催しています。

勉強会の導入後、各部署のメンバーが経営目線で分析をできるようになりました。
例えば「季節品の処分」「商品の値下げ」等の判断で、現場の結果に直結し、数字に成果が表れました。また、新しいことに対して積極的に取り組む習慣も浸透しました。

データを基にした社内コミュニケーションで理解度が上がり、アクションも迅速に

ここで現場の声を紹介します。
グッデイ土井店店長岩崎は店舗運営のDXについて、次のようなメリットがあると説明して
います。

「週次・月次で、売上データの検証に取り組んでいます。Tableauの活用により、季節品で売れていく商品、指数が高くなるものを、グラフで可視化できます。

それを基に、売り場のリーダーと共通認識を持ち、今後の発注や、売り場展開を随時確認しながら進めていきます。数字でコミュニケーションすると、内容を表現・伝達しやすく、
聞く側の理解度も上がります。理解が早ければ、行動も早くなる、というのが一番のメリットだと感じています」

続いて、商品部 部長 西村の声を紹介します。

「DXは、教育に直結すると捉えています。様々な地域の店舗があるので、地域特性により
売れ筋商品は変わってきます。『品揃えの充実』『支持されていない商品の縮小』等の判断をし、仕入れ業務や、売り場づくりの効率化にTableauが大活躍しています。

データを見ながら『なぜこうなっているのか?』『なぜこの行動が必要なのか?』等、
スタッフ間でコミュニケーションをします。情報をインプットされる側も一つ一つ納得できれば、経験が積み重なり、自信になっていきます。よって、DXは人の教育に繋がるものだと言えます」

最後に勉強会「GooDay Data Academy」に携わるスタッフの声を紹介します。

「『GooDay Data Academy』は、座学ではありません。実際に『各部署の課題は何か?』を具体的に決めます。Tableauの活用により、従来業務の効率化が進むと、極論、
多大な時間が掛かっていた作業がゼロになることもあります。そのような体験を持つと、
さらなるモチベーションに繋がります。

以前は『できない』をベースに考えてしまっていましたが、データ基盤が整備され、Tableauの活用が始まって、Googleワークスペースでの情報共有が進んで、『できるんだ』と実感し、前向きなマインドに変わっていったことは、非常に大きいです」

社内メンバーのマインドチェンジが各部署にもたらした成果

「できる」というマインドに変わった「GooDay Data Academy」のメンバーは、各部署に効果をもたらしました。

データ分析によって、「折込チラシの効果が低い」と分かったので、LINE公式アカウントを開設したところ、わずか2年で29万人の登録者を獲得しました。また、店舗で「商品の所在」に関するお客様からの問い合わせが多いことが分かり、「音声検索システム」の開発も行いました。その他、掃除ロボットの活用や、AI導入など店内・社内の課題解決のために次々に新しい施策を生み出しています。

さらには、他社のDX支援を行うIT企業「株式会社カホエンタープライズ」も設立し、
データ分析ツール「KOX」を提供中です。誰でもすぐにデータをビジュアライズできるツールで、内製でサービス開発をしています。導入先は食品スーパー、ドラッグストア、地元外食チェーンなど多岐に渡り、導入後のオンボーディング支援もしています。

目標は、「日本一のデータドリブンな会社」です。
自社の業績向上だけではなく、ノウハウを他社にも共有することで、データドリブンな会社を増やしたいと考えています。これをモチベーションに、今後も取り組みを続けてまいります。

■関連サイト


日本DX大賞
https://dx-awards.jp

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会
https://jdxa.org/

Re:Innovate Japan
https://re-innovate.jp/