イベント・セミナーレポート

「SDGs達成にはDXが不可欠」SDGs視点で地域課題を洗い出し、デジタル活用で地方創生のスピードアップを

「DX」と「SDGs」ーいずれも近年、ビジネスの現場で注目が高まっているキーワードである。SDGsを共通言語に産官学を基軸とした地方創生・地域連携プロデュースを手がける田中 信康 氏は「SDGs達成のためには、デジタルの力が不可欠」と強調する。その田中氏をゲストに迎え、2022年4月28日にオンラインイベント「SDGsとDXにはどのような関連があるのか?SDGs達成のためにデジタルはどう寄与できるのか?」を開催。

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事の森戸裕一とともに徹底議論を繰り広げた。

田中 信康 氏
サンメッセ総合研究所(Sinc)代表
サンメッセ株式会社 専務執行役員 経営企画室長サステナビリティ担当
サステナブル・ブランドジャパン ESGプロデューサー
一般社団日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 岐阜県支部長

大手証券会社にて株式、デリバティブ取引業務、リサーチ関連業務、人事、財務・IR、広報部門など管理部門を幅広く経験した後、大手企業の財務・IRコンサルタント、M&Aアドバイザー、コーポレートコミュニケーション支援業務の責任者として従事。

数多くの経営層との対談を含め、財務・非財務コンサルティングのキャリアを活かし、企業経営にかかわる統合思考、ESG/SDGsコンサルティング、社内浸透、情報開示の支援業務を中心に、各講演・セミナー、ファシリテ―ションなど幅広いコンサルティング業務に携わり、サステナブル・ブランド国際会議東京にてESGプロデューサーに就任し、企業と地方自治体との地方創生・地域連携プロデュースも担う。

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 代表理事
名古屋大学/熊本大学客員

2002年に創業。企業や自治体主催の基調講演やセミナー、社員研修など、年間200回を超えるオファーで、創業以来3000回以上の登壇実績を更新中。近年は、デジタルトランスフォーメーション(DX)、働き方改革・ワークスタイル変革、IoT・AI・ビッグデータ、地方創生、コミュニティづくりとコミュニティシップ、新規事業立ち上げをキーワードにした登壇依頼が殺到している。2016年から総務省地域情報化アドバイザー、2017年から内閣官房シェアリングエコノミー伝道師としても活動し、専門分野の幅をさらに広げる。
著書に、[人と組織が動く中小企業のIT経営(日経BP社)][変われる会社の条件 変われない会社の弱点 (ワークスタイル変革実践講座(NextPublishing))]がある。

SDGsは、地域の未来像を描くための共通言語

森戸氏:
「DX」と「SDGs」、いずれも昨今、関心が高まっているキーワードです。
我々はDXの啓蒙活動に取り組んでいますが、「そのゴール設定はどうすればいいの?」という疑問の声もよく聞きます。

そこで本日は、これまでの田中さんの取り組み、そしてSDGsの取り組みなどをお聞きします。DXとSDGsの関係性を中心にディスカッションを展開し、地域に特化した取り組みについても触れます。

田中氏:
私は、サンメッセ株式会社という岐阜県大垣市に本社を構える総合印刷会社で専務執行役員を努めています。「印刷会社がDX推進…なぜ?」と思う方もいるかもしれませんね。
そして、SDGsの取り組みを国内で啓蒙してきた一人でもあります。

もともとは金融機関で財務のアドバイザリーをしていました。M&Aやコミュニケーション支援に多く携わり、そこから地方創生の取り組みに参画するようになりました。グローバルなネットワークも持っていて、「サステナブル・ブランド・ジャパン」という、サステナビリティ領域での有料カンファレンスで国内No.1の評価を受けているコミュニティに参画しています。世界12カ国に及ぶプラットフォームであり、これを日本に誘致し、ESGのプロデューサーとして立ち上げから腐心してきました。経営推進・地方創生・地域活性化のためのプラットフォーム「未来まちづくりフォーラム」「全国SDGs未来都市ブランド会議」「次世代育成プログラム」などを展開しています。

サンメッセ株式会社は岐阜県内において「社会価値共創事業モデル」を掲げ、SDGsを核に岐阜の価値を未来へ繋げ、地方創生のインパクトを起こすべくさまざまな事業に取り組んでいます。取り組みは5つのフィールドに及びます。

①文化
②教育
③再生
④環境
⑤DX

各フィールドで事業を起こして実装し、マネタイズに向けて動いているところです。SDGsの活動を通じて、クライアントでは無い方たちとの出会いや、Z世代との接点が生まれています。未来のを担う世代と意見を交わしている中で、我々が教えられることもたくさんあり、子どもたちといかに連携するか?というのも一つの軸です。

田中氏:
Re:touch」というポータルサイトも構えています。地域内には、なかなか発掘できない中小企業のリソースやポテンシャルが数多くあります。中小企業同士をポータル内で連携させネットワーク化することで、サイトを起点に数々のコラボレーションが実現し、マネタイズにつながっています。例えばエンタメを切り口としてSDGsの敷居を下げ、岐阜にゆかりのあるアーティスト・著名人とのコラボ企画など、さまざまなプレイヤーが参画できる工夫もしています。 

田中氏:
そのほか、SDGsスクールアドバイザーの役割も担っています。行政と連携し、子どもたちと一緒に地方創生を考えながら推進していく取り組みです。

森戸氏:
素晴らしいですね!
我々、JDXは「デジタル」を中心に考えている側面があります。デジタル実装して業務効率化、標準化して、新規事業をどう作っていくか。つまり、企業寄りの話になりがちです。

しかし今「社会全体をどうやってデジタル化するか?」という「大義」「意味」も大事ですよね。「地域をどんな未来にしていきたいか」という未来像をいかに地域の人々に魅力的に見せ、共通言語を持ち、共通ビジョンを持つかが大事です。

我々おじさん世代がZ世代と話す時に共通の話題がないと、実のある会話にはなりません。だから、「未来志向」で話すことが必要です。Z世代にとっては、20年後、30年後にあたる「2040年」が最も活躍する時代となります。そのイメージを持ちながら、岐阜の未来、東海地方の未来、日本の未来をいかに語っていくかが重要ですね。田中さんのような取り組みをしていくことが、「トランスフォーメーション(変革)」の一つの基本ではと思います。

SDGs達成のためにはICTが不可欠

田中氏:
国連が掲げているSDGsの序文には、「我々の世界を変革する」と書かれています。
つまり、「変革から始まる」ことをキーワードとしていて、その達成のためには「ITCが不可欠だ」とさまざまな論文でも指摘されているんです。解決の手段が「デジタル」でなければ、SDGs達成は成し得ません。

田中氏:
もう一つ、SDGs達成のポイントです。企業側から「未来のサービスを考えよう」と取り組みをスタートさせると、自社のターゲット顧客ばかりにフォーカスしがちです。そうではなく、社会課題を起点に「自分たちの企業価値、企業としての強み、存在意義とは?」と見る視点も必要です。つまり「社会的課題」と「企業の強み」を突き合わせたポイントに、新しいビジネスモデルが生まれるのです。

田中氏:
SDGsがもたらすICT関連市場へのインパクトは非常に大きいと言えます。食料と農業35兆円、都市開発62兆円など・・・SDGs達成により新たに創出されるICT市場は173兆円と見込まれています。これは、さまざまなフィールドでICT活用のためのインフラ開発が行われるからです。

田中氏:
経産省・経団連は「Society5.0」を推進しており「日本の未来ビジョンはデジタルで作っていく」と述べています。社会課題を解決し、人・機械・自然の共生を目指す。それはSDGsの達成にも貢献すると表明しているんですね。具体的には、防災・減災・デジタル技術を活用したインフラ維持管理などが挙げられます。

いかに地域・企業の取り組みに落とし込んでいくか?

田中氏:
国が掲げる「Society5.0」をローカルにどう落とし込んでいくか。「市民・住民」「地域」「産業・企業」“三方良し”の地域連携社会を、生活圏単位で実現する必要があります。「誰ひとり取り残さない取り組み」ーこれは、デジタル田園都市国家構想にも掲げられていますが、SDGsとも非常に親和性が高いポイントです。

田中氏:
国内の大企業では、既にさまざまなSDGs関連の取り組みが始まっています。

●味の素:工場の3D化で生産性工場・人材不足解決につなげる
●セブン&アイホールディングス:在庫管理・需要予測にAIを導入、労働時間短縮・フードロスの解消
●コニカミノルタ:DXで企業活動によるCO2排出量削減を目指し、脱炭素社会実現に貢献

SDGsは「答えが明記された問題集」

田中氏:
変革の時代に、絶対的な「正解」はありません。
しかし「サステナビリティ(持続可能性)」が一つのキーワードではないでしょうか。
そして今は、課題解決の手段として「デジタル」を活用できます。つまり「サステナビリティ」と「デジタル」この両輪が重要で、デジタルが深く組み込まれた社会経済システムを作っていくことが求められています。

SDGsは、「サステナビリティ実現のための答えが明記された問題集」です。そこに、どんなアイデアで辿り着けば良いか―その鍵は、デジタルにあると思います。

森戸氏:
日本の場合、現在の大きな社会課題と言えば「行き過ぎた少子高齢化」「行き過ぎた東京一極集中」などが挙げられます。「問題を解くカギはデジタルにあり」という点について、私も賛同します。

ところが、ある国会議員から「日本はデジタル後進国になってしまった」という発言が出たこともあります。デジタル庁発足も期待が高かった分だけに、現在さまざまな指摘を受けている状況だと言えます。田中さんの目から見て、日本のデジタル化がなかなか進まない、あるいは、働き方改革についても進まない理由は何だと思いますか?

田中氏:
皆さん変化を恐れていると言いますか…変わったほうがいいことは分かってるけど、どうやって変わればよいのか分からないのではないでしょうか。働き方改革にしても、会社や上司から強要されて「残業しちゃダメだ、早く帰らなきゃ!」と行動しているというか。

つまり、「意味」「意義」が見えていなくて、納得しないままに取り組んでいる。だから、本質的な議論や解決にはならないんです。取り組みの根っこの部分で誤認があっては、変われないですよね。

「20年先も、このまま?」という問い

森戸氏:
働き方改革で言えば、テレワークに対しても今、関心が高いですよね。
そのような中でも、週5日、強制的に出社というスタイルに回帰する企業・部門も見られます。それで最も生産性が上がるなら、正しい選択だと思います。しかし、テレワークやワーケーションを選べる余地も残したほうが良いと思います。

私がこのような考え方を示すと、「部門・人によって、働き方に違いがあるのは不平等では?」という意見をいただくこともあります。田中さんはこの点、どう思いますか?

田中氏:
当社は製造業(印刷会社)なので、働き方改革の問題に直面しているのは事実です。しかし「うちは製造業だから、そもそもテレワークできないよね」と考えたら、そこで議論が終わってしまいます。「実現のためには何をやらなきゃいけないんだっけ?」と考えなければ、話は先に進みません。

私はよく「20年先も、このままのスタイルでやる?」と皆さんに問いかけるんです。すると皆さん、首を横に振って否定する。だからまずは小さな工夫や変化を一歩、始める必要があります。例えば働き方で言えば、時間シフトを2交代から3交代にするといったことからでも、変革に繋がっていくのかもしれません。

SDGsゴールを今後の事業開発、ビジョンやパーパス作りのヒントに

森戸氏:
日本人は農耕民族なので、一人ひとり独立して仕事をするよりは、チームを組んで取り組むほうが向いている、という意見を持つ人もいます。日本人が得意なことと言えば、お手本やモデルを見せられたら、それを土台にアレンジを加えていくことです。0から1を作るよりも得意なのかもしれません。

SDGsは「サステナビリティ実現の答えが明記された問題集」と考えれば、今後の事業開発、ビジョンやパーパスづくりのヒントを貰いやすいと言えますよね。

田中氏:
まさにおっしゃるとおりです。今ある社会課題の解決策としてSDGsをしっかり浸透させていくことが重要です。最終的には、SDGsという言葉を使わなくても行動できることがゴールです。

要は「(社会課題解決の)ヒントを与えてあげなきゃ」ということです。17項目の一つ一つについて、はじめのアクションは簡単なことでも良いんです。そこからコミットしていき、「次は何に取り組もうか」と納得しながら議論をつなげ、課題を解決していくことが大事です。

岸田内閣は間もなく6月に「新しい資本主義」を発表する見込みで、そのグランドデザインは既に公になっています。その中で当然、DXは重要視されていますが、人的資本をいかに活かすか、という視点もあります。「人のポテンシャルをいかに活かすか?」とか「既に持っているもの認めること」によって平等を目指すものです。つまりアナログとデジタルをうまく共存させ、いかに人の心をキャッチアップしていくか、バランスも大事です。

森戸氏:
「アナログとデジタルのいずれかが正しい」ではなく「デジタルとアナログの比率」を考えることが企業経営の上でも大事ですね。

岸田内閣が「新しい資本主義」を掲げることは、決して従来の働き方、資本主義の在り方を否定する意図ではないはずです。今までの働き方、経済成長への感謝が土台にありつつ、これからは、SDGsやESG経営の比率をいかに組み込んでいくか、ポジティブに議論するということですよね。

ただしそれは一企業でも、結構馬力が必要な、決して容易ではないテーマです。地方都市の企業で取り組もうとすると、相当なネゴシエーションも必要なのではないでしょうか?

田中氏:
馬力、精神力、両方のタフさは当然必要です。
自分の中でも、企業としても、ブレないパーパスが大事です。「こうなりたい未来像」をたとえ仮説でも良いから、現状の危機感に基づいてプランニングすることが大事です。

岐阜県大垣市は16万人規模の都市で比較的体力もあり、やや恵まれた環境にあると言えます。私がさまざまな取り組みのためにあちこちを駆け回っていると「そんなにかき回さなくても、いいんじゃない?」といった意見をいただくこともあります。

しかしそれは、「現状で良しとしているから」出る発言だと言えます。

一方、地域内の子どもたちと議論すると「母校が統廃合でなくなる」などの経験をしていたり「このままじゃ、ふるさとが無くなるんじゃないか」という思いを持っていることが分かります。だから私はアクションに迷ったら、「危機感があるからこそ動くんだ」というパーパスに立ち返るようにしています。

若者の流出を食い止めるには?

森戸氏:
以前、慶応大学の村井純先生がイベントで「DXとは皆で取り組むもの、皆を巻き込むもの。そのためには大義やパーパスが必要だと」いう話をされていました。その一方で、若者が進学や就職で地域外へ出ていってしまう…という課題もあります。

例えば我々の世代であれば、高等教育を受けるなら地元を離れて大都市圏へ出る必要がありました。そして、学んだことを活かせる職場も、地元にはなかった。よって、社会人生活でも引き続き、都会に残ることになるという…でも自問自答すると、心の奥底では、地元が好きで帰りたい。その一方で、「地方で働くのは、何かとしがらみが多そうだ」というのも、どこか感覚的に分かっている。

東京で仕事していると、未来志向で挑戦を積み重ねている人が身近にたくさんいて、とても刺激的です。地方は逆に、いろいろなものを「守って」いるといえます。しかしそれだと、よそ者・若者は参入しにくく、居場所を見つけにくい。それを「地元には、自分のやりたい仕事がない」と言い換えているのではないでしょうか?

このような考え方は、Z世代の間ではどうですか?

田中氏:
まさに仰るとおりです。大垣市では、市長をはじめ、行政も、地域内の企業担当者も理解しています。

若者には、まず第一に、地元愛を持ってほしいと思いますが、市長が「どんどん外へ行き、外の様子を見てください。刺激を受けたものを、ちゃんと吸収して、いつか戻ってきてほしい。戻ってくるかどうかは自由だけど、戻ってきたときのために、ちゃんと枠組みは作っておくから」というメッセージを子どもたちに向けて発信されたことが印象的でした。こういう受け皿が地元にあると分かっていれば、子どもたちは素直に未来に対して前向きになれます。

ところが現状の課題として、「地元に戻ってもなぁ…」という側面も実際にあります。要は、現状に対する危機感を持ち、「もっとこんな街にしていきたい」というパーパスを共通認識として持つことが大事です。

森戸氏:
「地域内に大学が無いから、若者が流出する」と考え、この少子化の時代に大学を誘致し、社会課題解決を目指す動きもあります。それから、企業誘致、工場誘致とか。雇用を生み出せば若い人が帰ってくるんじゃないか、人口流出を止められるという…自治体職員も、そのような考え方から脱却できない人が多い。

でも、新しい選択肢もありですよね。

社会のデジタル化が進んできたので、大学誘致をせずとも、市域全体でインクルーシブスクエアを構築して学べる環境を整えるとか。必ずしもアカデミックファーストでなくても良いと思います。社会人もリカレント、リスキリングなど、新しいスキルを身につける必要があります。田中さんの中では、このような新しい構想に関してはどうですか?

田中氏:
岐阜県にはICT企業が集結する情報産業集積地として随分昔に立ち上げられた拠点「ソフトピアジャパン」があります。ソフトピアジャパンセンターにはIT企業ら147社が入居し、就業者は2000人を超えます。産業の高度化を目指し、人材育成、イノベーション、そしてDXの中核拠点でもあります。

SDGs視点を持ちながら、この「ソフトピアセンター」中心でいかに地域DXを回していくかというプランを、スーパーシティ構想として大垣市に対し最終提言させていただきました。

大事なポイントは、SDGs視点で地域課題を包括的に理解することです。17のゴールを分解していくと、さまざまな課題があることが見えてきます。そこから、大垣市の強みは何か?発展の原動力になる鍵は?など議論を深めていき、2030年に、どう結果につなげていくか議論を進めることが必要です。

スーパーシティ構想実現に向け、産学連携も必要です。ただし、学校を誘致するという意味ではありません。ソフトピアセンターを拠点に必要な人材と連携し、自律分散型の地方創生につなげていくビジョンです。

森戸氏:
以前のソフトピアセンターは、各地方都市にあるような「IT人材育成拠点」「IT推進センター」という位置付けでしたよね。

しかし先ほど田中さんがおっしゃった今後のプランでいうと、「箱物(ソフトピアセンター)」の意味合いが「プログラマー・エンジニア育成の場」から、「地域課題を解決する場」「地域に対してメッセージを発信する場」に変革しようとしている。

地元の課題を、地元の人々が、まずはトライアル的に、実証実験的に解決してみる。うまくいったら、デジタル田園都市国家構想で他地域にも横展開していくことが可能ですよね。このようなアプローチの仕方、座組の在り方、素晴らしいと思います。

田中氏:
目指しているのはまさにそこです。DXで地域課題を解決、自分たちで課題解決できる街にしていく。これがまさに、今後求められるポイントです。

変化を受け入れ、SDGsが生み出す新たなビジネス領域を考える

森戸氏:
最後に、やや意地悪な質問かもしれませんが…「ペーパーレス」「Co2削減」を推進するのは、印刷業として実際のところいかがですか?

例えばIT業界で言えば、ベンダーがあちこちにオンプレミスでサーバーを置いて、アプリケーション開発や運用管理していたものを「クラウド化推進しましょう」と言えば、ベンダーの仕事は無くなってしまいます。

大垣の地元の人から、田中さんに対する「そんなに引っ掻き回して、どうするの?」という言葉の裏には、既得権益を持っている業者の仕事をDXによって無くそうとしている…といった気持ちも含まれているのではないでしょうか?

しかし、田中さんの先ほどの主張では、SDGsによって新たなビジネス領域が随分生まれると述べていましたよね。地元の人々も、そこは納得しているのでしょうか?

田中氏:
当社では、印刷に頼らぬビジネスモデルへいかに取り組むかがカギだと明言しています。どんなイノベーションを起こしていくかが、喫緊の課題です。クライアントのコスト削減に対する課題感として「ペーパーレス」に意識が及んでいるのは、既に「仕方のない事実」「受け入れるべき事実」です。抑止しようとしても、意味はありません。

私がSDGsを推進するのは「変化を受け止め、新たなビジネスの種に繋げていくことが大事、いろいろ仕掛けていこう」という意図なのです。

森戸氏:
中小企業DXは、自分たちだけが大きな変革をしても、取引先が変わってくれなかったら独り相撲になり、メリットがありませんよね。だから、周りを巻き込まなくてはならない。

例えばIT事業者が変革せず、プログラミングやシステム開発、運用保守で利益を得続けようとするならば、DXやSDGsの一番の阻害要因はシステム会社だ、ということにもなりかねません。

だからと言ってシステム会社を敵視するのではなく、一緒に巻き込みながら、SDGsが生み出す新たなビジネス領域を考えていく必要があります。すなわち「既得権益」を超えた、ひとつ上のレイヤーで変革を目指さなくてはなりません。

SDGs目標という、国際的な目標を日本風にアレンジして、自治体・地域と一緒に考えていき、最終的に企業価値と突き合わせる。これこそまさに、今後の地域課題解決の本流ですね。

日本DX大賞のお知らせ

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