事例

「アナログ改革」から始める、都城市の持続可能なDX戦略

宮崎県都城市は「デジタルは目的ではなく手段」という明確な理念の下、「D(デジタル)に頼り過ぎないDX」を掲げ、徹底的な「アナログ改革」に着手。ここを土台に、「書かないワンストップ窓口」などの本格的なデジタル改革に取り組んできました。人口減少や少子高齢化が進む中、従来のサービス維持が困難になりつつある地方自治体にとって、都城市の取り組みは新たな可能性を示す先進事例として全国から注目を集めています。

2022年から開催している日本DX大賞で4年連続受賞、このたび殿堂入りも果たした都城市の取り組みの全貌を解き明かします。

<過去の都城市の事例>

「使われないデジタル」の罠――なぜデジタル導入が変革を生まないのか

都城市は人口およそ16万人の、宮崎県第2位の都市です。牛(宮崎牛)・豚・鶏、焼酎の産地としても全国的に有名で、これらを返礼品にしているふるさと納税では、受入額でたびたび全国1位となっています。自治体としては高いマイナンバーカードの交付率を誇り、長きにわたって10万人以上の自治体で全国1位を維持しています。

人口減少や少子高齢化への対策を行わず、業務変革にも取り組まないまま従来のやり方を踏襲し、サービスを提供していくことは極めて困難です。

働き方改革に取り組む必要性は叫ばれているものの、公務員は非常に多忙で、業務内容も年々多様化かつ高度化しており、これまで以上に企画立案などの考える時間が必要となっています。しかし日常業務に忙殺され、考える時間の確保が難しいのが現状です。

公務員の採用倍率も低下しており、このまま何もしなければ優秀な人材の確保も難しくなり、地域の持続可能性にも悪影響が生じるリスクが顕在化しています。

そんな状況を解消する一手として、デジタルトランスフォーメーションに取り組む自治体も多くありますが、「デジタル技術の導入」そのものが目的化してしまい、せっかく多額の費用をかけてシステムを導入したものの、最初のうちだけ使われてそのまま放置されたり、かえって職員の負担が増大し、デジタルへの抵抗感を植え付けてしまったりといった失敗事例も散見されます。

都城市では、早い段階から「デジタルは目的ではなく手段」を掲げ、まず業務プロセスを徹底的に把握・分析し、業務改善と改革を実行した上で、最後の仕上げとしてデジタルを導入してきました。非効率な作業をそのままデジタル化しようとしていないか、業務改革とセットで考えることを非常に大切にしています。


ゼロ予算で推進した「徹底的なアナログ改革」

都城市では、本格的なデジタル改革に着手する前に、従来の非効率な手続きを洗い出し、徹底的に簡素化する「アナログ改革」に取り組みました。アナログ改革は原則として「ゼロ予算」で進められています。

令和2年に「都城市申請書等に係る押印見直し方針」を策定。現在約2,900種類の申請書類の押印が不要となりました。

各種申請書類の全庁的な見直しを実施し、記載項目の統一や削除を進め、約2,000カ所を簡略化しました。例えば、郵便番号や市が保有する情報など、住民が改めて記入する必要のない項目を削除したことで、市民と職員の双方にとって大きな負担軽減を実現しました。

また、国の公金受取口座を活用できるよう様式を変更し、通帳コピーの提出を不要にしました。

子ども医療費受給資格証は住所欄を空欄にすることで、住所変更時の書き換えが不要になりました。

精神障害者保健福祉手帳など県の手続きについても、県と調整し、死亡時等の届け出を廃止しています。

他にも、出生届とマイナンバーカードの申請の一体化を国に提案したほか、乳児の来庁不要の拡大を提案したり、

郵便局を積極的に活用してマイナンバーカードの関連業務の負荷軽減を図ったりと、都城市のアナログ改革は非常に多岐にわたっています。

こうした「手続きを減らす改革」は、単に効率化にとどまらず、市民の負担を軽くし、行政と住民の信頼関係を築く基盤ともなっています。

説明の標準化にも注力しています。住民への説明が職員ごとに異なるという課題には、トーク用資料の整備やロールプレイ形式の研修を実施することで、誰が対応しても同じ水準の説明ができる体制を整えました。また、コンテスト形式でトークを磨く取り組みも行っています。


アナログ改革を土台に実現した「書かないワンストップ窓口」の威力

アナログ改革を土台として、都城市は窓口DX SaaSや生成AIなど、さまざまなテクノロジーをフル活用したフロントヤード改革に本格的に着手しました。

市が保有するデータを参照する「書かないワンストップ窓口」(窓口DXSaaS)を運用し、ライフイベントに関連する手続きを1箇所で完結できる体制を構築。データ活用とRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により、市民と職員がともに恩恵を受けるWin-Winの窓口を実現しています。

都城市在住ではない申請者については、マイナンバーカードから氏名、住所、生年月日を瞬時に読み取る「PASiD®︎ scan」を導入。窓口での手書きの負担や手入力による間違いを大幅に削減しています。「PASiD®︎ scan」は近年増加している外国人住民の複雑な氏名や住所の処理において高い効果を発揮しています。

窓口での決済についても、現金だけでなくキャッシュレス決済に対応。キャッシュレス決済システムは都城市庁舎内だけでなく、市立の様々な施設に展開しており、横断的な導入は全国でも特徴的な取り組みとなっています。

AIカメラを活用した窓口混雑状況のリアルタイム把握システムも導入し、混雑状況に応じて、来庁者を混雑の少ないフロアへ誘導するといった効率化も実現しました。

さらに、書かないワンストップ窓口の支援として生成AIを活用し、事例や改善策を専用AIに学習させた都城市独自AIを構築しています。事務負担の軽減と業務品質の向上に寄与しており、ナレッジの蓄積と更新も継続的に行われています。

本庁から離れた地域の住民のために、市内の総合支所や市民センターにリモート窓口を設置。100種類以上の相談や申請にリモートで対応しています。この取り組みは全国でも最多クラスで、本庁に人的資源を集約することで効率化を図りながら、地域住民の利便性も向上させています。

マイナポータルを中心に約2,400の手続きをオンライン化しました。一部手続きでは処理の自動化によりバックヤードの業務効率化も実現しています。


住民と職員の声を活かした段階的DX――都城市の成功要因

これら一連の改革の成果は数字にも表れており、各部局の職員の協力があったからこそ成し得たことです。

繁忙期の待ち時間は、最大3時間から45分へ短縮され、

結婚・出産・死亡などライフイベント関連の手続きにかかっていた3割以上の時間の削減を達成しました。市民からも待ち時間が減ったことや、手続きの簡素化に対して評価する声が寄せられています。

窓口時間短縮をスタートさせた令和7年5月と昨年同月を比較すると、約1,000時間の削減を達成。1月あたり約250万円のコスト削減につなげているほか、

住民異動を担当する職員の時間外勤務も約4割減少。職員のワークライフバランスも向上しています。職員からも、時間外勤務が減少したことなどを喜ぶ声が上がっています。

近年、多くの自治体で改善コンテストが注目を集めていますが、都城市では「名札をフルネーム表記から変更したい」といった些細な改善提案も含め、あらゆる意見を積極的に収集し、提案のハードルを下げて職員が気軽に改善案を出せる環境を10年以上前から整備しています。デジタル統括課も、単にデジタル技術の導入を促すのではなく、「業務が楽になる工夫・取組をアナログでまず実施する」というスタンスで各部署と連携し、現場の実情に即した改善を推進。記載欄の削減や不要な手続きの廃止、業務フローの簡素化といった、市民や職員にとって受け入れやすい取り組みを段階的に進めることで、完全デジタル化への土台を築いています。

都城市のDX推進が成功している背景には、市長がCDO(チーフデジタルオフィサー)を務めるデジタル統括本部による強力なリーダーシップと、効果的な組織体制の構築があります。市民課、総合政策課、デジタル統括課を基軸とした窓口DXコア会議(定例会)を月に2回実施。この会議には若手職員も参加しており、現場の知見を吸い上げ、次世代の人材を育成する場としても機能しています。


「デジタルは目的ではなく手段。大事なのは変革を起こすこと」

都城市の強みの一つが、国の制度を最大限に活用する戦略性です。

国が主導する各種実証事業、

医療DX事業への参画も積極的に行い、

デジタル田園都市国家構想交付金やマイナンバーカード交付事務費補助金などの国の補助金も活用。これにより、財政負担を抑えながら効果的なDXを推進しています。

人口規模や予算、地域特性にかかわらず、都城市の「D(デジタル)に頼り過ぎないDX」のエッセンスは、全国どの自治体でも応用可能です。総務省やデジタル庁のアドバイザー制度や他の自治体などからの視察対応を通じて、これまで培った知見やノウハウを惜しみなく展開しています。

職員自らが業務を分析、改善する内製化の徹底により、持続可能な改革を実現しています。常に改善の視点を持つ人材育成が実現しており、部局を越えた継続的な改善が生まれています。

「デジタルは目的ではなく手段。大切なのは変革を起こすこと」。この揺るぎないビジョンを体現する都城市の挑戦は、今後もさらに進化していくでしょう。

まとめ

都城市は、「デジタルは目的ではなく手段」という原則を徹底。いきなりデジタルを活用した改革に取り組むのではなく、他の部局との連携を図りながら押印廃止や手続きの簡素化などのアナログ改革を進め、デジタル化への土台を固めていきました。本格的にデジタルを使ったDXに舵を切ると、「書かないワンストップ窓口」「AIカメラを活用した窓口混雑状況のリアルタイム把握システム」などを中心にさまざまな変革を実行しました。背景には、市長がCDOの方針決定の下、デジタル統括課をはじめ関係部局が参加する月に2度の定例会、何より外部企業に頼りきらずに自分たちで進める「内製化」により、職員の現場視点を大切にしてきた文化があったのです。

都城市は、今後も知見の共有やネットワークづくりを通じ、日本の自治体DXをリードし続けるでしょう。

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