事例

生産計画表のクラウド化で生産高25%UP 

株式会社 谷野製作所は、高い技術を持ち自動車や通信、医療関連部品などの精密部品加工を行う企業です。多くの企業からさまざまな注文を受けるため、効率的な生産計画が課題でした。受注管理システムの情報から生産計画を手書きで起こし、Excelに転記するというアナログな業務を行っていたのです。そこで、自社の機械利用に併せた生産計画システムを開発。クラウドにアップしてどこからでも確認できるようにしました。その結果、計画にかかる時間もミスも大幅に削減。それだけでなく、加工原料にも注目して効率的な機械利用計画を建てられるようになり、生産性の25%アップに成功しています。当初はIT化・クラウド化について壮大な計画を抱いていたそうですが、まずは目の前の課題に取り組むことから始めたのが大きな効果を生み出した好事例です。

株式会社 谷野製作所

所在地:埼玉県日高市新堀3-2

創業:昭和41年3月1日

事業内容:金属切削加工業

従業員数:62名

http://www.yano-micron.co.jp/

困っていたこと・生産管理

我々の会社では、システム化を進めた結果、受注管理はシステム化が完了しました。
しかし、まだまだ困っていることがあります。それは生産計画です。
生産計画は、ものづくりを効率的に行うためにとても重要な工程です。

しかし、どの機械でどんな順番で作るかは、人が考えないといけない状況でした。

こちらが以前使っていた生産管理表です。このように手書きで書いて、それをExcelで清書するという状態でした。

15年くらい、手書きからExcelの転記を行っていました。
しかし、システム内の受注内容確認や現場確認計画で半日、さらにExcelへの書き写してて清書するのに半日。あわせてまる1日かかります。

この作業は、 1 週間に 1 回必要で、さらに予定の変化や変更があると計画表も作り直さなければなりません。

実際には手書きで修正します。さらにExcelデータのコピーミスで予定の入れ忘れや間違い、
二重の割り当てが頻繁に起こっていました。さらに、このやり取りは本社と新潟工場間でメールやファイル共有で行っており、大変な手間がかかります。

なんとかならない?

そこで、生産管理システムを作ろうと考えた時、このように設計しました。

・Excelはセル単位でコピーペースト
・受注 1 つ 1 つを「コマ」としてブロックごと動かせる
・すでにある受注管理から「コマ」は自動で作成
・「コマ」を並べることで計画が立てられる

さらにそれがクラウドなら、本社と工場のどちらからでも、営業先でもネットがあればどこでも見ることができます。

こんなふうにしました


コマの配置

そこで機械ごとに案件を配置できる生産計画システムを作りました。

まず、受注計画から取り込んだ予定は、割り当ての「コマ」になり、ドラッグ & ドロップで
カレンダー上に配置することで生産計画が可能です。また「コマ」の下をドロップすると日数も
変更できます。ドラッグ & ドロップで他の機械へと「コマ」を移動可能です。

コマの移動

途中のコマを抜くと、後の予定が繰り上がり、途中に「コマ」を割り込むと後の予定はくり下がります。

作業日の固定

作業日が決まっている場合は、駒が自動で繰り上がったり繰り下がったりしないように
「納期優先」のチェックを付けておきます。これで納期日が固定されるので「コマ」が動きません。

納期に間に合わないことを知る

さらに、割り込みや前の予定の延長で終了日が納期日を過ぎてしまう場合、その案件の「コマ」の枠が赤くなり、納期に間に合わないことを知らせてくれます。

生産予定を一覧表で見る

また、配置した「コマ」はこのように一覧表でも確認できます。
納期に間に合わない「コマ」は納期日が赤くなるため、一目で確認が可能です。

生産予定一覧からカレンダーへ

一覧表の日付をクリックすると、カレンダーの該当駒を表示できます。

機械ごとの最終加工日一覧

こちらは、機械ごとの最終加工日の 一覧です。どの機械に何日まで予定が入っているかを
一覧で見ることができます。こちらも日付をクリックしたらカレンダーの「コマ」を表示してくれます。

これをつかってできたこと


解決できたこと

これを使って解決できたことからお話ししましょう。
まず、作業計画を作る作業時間が丸 1 日から2〜3時間に削減されただけでなく、
入力忘れがなくなり、計画ミスも削減できました。

「コマ」を動かすごとに、納期に間に合うかどうかがわかるので、効率を良くするための計画変更が容易になりました。

本社・新潟工場・外出先どこからでも閲覧入力できるため、
変更や割り込みにもすぐに対応できるかどうか、納期についてをお客様へ即答できるようになりました。

さらにこんなこともできるように

最初に困っていたことは解決したのですが、
システム開発によりさらに嬉しい副次効果がありました。

生産計画の入力が簡単になったため、何ヶ月も先の予定を管理できるようになって利便性がアップしました。そのおかげで、なるべく同じ素材の製品を続けて作ることで、段取りや清掃などの切り替え作業を削減。大幅に効率がアップしました。

切り替え作業時間そのものだけでなく、切り替え回数が減れば切り替え順番、
待ち時間も減りますので、効率が大幅にアップしています。

さらに、同じ素材での加工が続けば、製造によって出る「切り屑」についても、
まとめられます。おかげで資源としての買い取り価格がアップし、収益改善につながりました。

こうして、効率の良い順序や機械、担当者を何ヶ月も先読みして考えられるようになってきました。生産計画を容易に変更できることにより、PDCA をより短期間で回せるようになっています。

まとめ 会社全体の変化

こうして、人数や作業時間を変えずに、なんと生産高が25%アップしました。
今回のクラウド活用でわかったのは「計画」がいかに大切であるかということです。

これまでは、予定に振り回されて人が無理をしていました。今では、予定を考えて働きやすくし、計画が見えることで、自ら考えてやりがいのある仕事へと変化しています。

人がITに使われるのではなく、人が働きやすくなるためのIT活用。
これが人の意識とデータの化学反応を起こし、会社全体に働きやすい環境が生まれたと考えています。

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