DX事例

【宮崎県都城市】デジタル時代のパスポート!マイナンバーカードインフラ化プロジェクト

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、自治体や民間企業などが取り組んだ事例を発掘し共有するためのコンテストです。

2015年より、日本に住民票を置く国民全員に12桁の番号が与えられるマイナンバー(社会保障・税番号制度)制度が、2016年からマイナンバーが記載されたマイナンバーカードの申請・交付がスタートしました。2017年にはマイナポータル(政府が運営する電子サービス)が導入されたものの、マイナンバーカードの普及はあまり進んでいないのが現状です。宮崎県都城市は、全国でも有数のマイナンバーカード普及率を誇り、市独自の施策を数多く打ち出してきました。

2022年6月23日に行われた「行政機関部門」より、宮崎県都城市の事例をご紹介します。

宮崎県都城市の概要
■人口:161,883人(※令和4年度、住基人口)
■面積:653.36 km2
■主な産業:農業(畜産業など)・製造業(焼酎)・流通業
■市長:池田宜永(たかひさ)
■公式Webサイト:https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/

マイナンバーカードのインフラ化とは

マイナンバーカードのインフラ化とは、マイナンバーカードの普及促進と利活用両面で強く推進しているという意味です。都城市はカード普及と利活用を同時並行で推進しています。カードを申請しやすい環境の整備とカードの利便性向上に取り組むことにしました。
マイナンバーカードにはさまざまな役割があり、CDO(Chief Digital Officer、最高デジタル責任者)として陣頭指揮を取る市長も、マイナンバーが持つインフラとしての役割に
着目しています。

2015(平成27)年10月にマイナンバー制度が施行、翌年1月にはマイナンバーカードの
交付が始まりました。都城市のマイナンバーカード交付率は、全国平均44.7%に比べて79.7%(※2022年6月末現在、81.3%)と非常に高く、市区別日本一を達成しています。人口が少ない自治体ほどマイナンバーカードの普及が進みやすいとされている中、都城市は上位10自治体で唯一人口10万人を超えていますし、マイナンバーカードの歴史の中でも
日本一を継続している期間が長い取り組みです。

正直、取得率が伸び悩んだ時期もありましたが、マイナポイント事業などの国の施策も上手く使いながら現在の数字に到達している状況です。国の目標が今年度末までなので、それまでに普及率100%を目指したいと考えております。

ビジョンの共有と企画部門の動き

DX推進のキモは意識の変革です。他の自治体同様、都城市も職員のマインドの変革からDX推進の取り組みをスタートしました。まず、「デジタル時代において、マイナンバーカードは市民サービス向上と行政の効率化を実現するために欠かせないインフラである」というビジョンを職員に共有。都城市のさまざまな施策やビジョンにも、マイナンバーカードを位置づけています。

企画部門は、市民窓口部門と連携しつつマイナンバーカードの普及促進を主導しています。また、部局間に横串を通し全庁体制の構築、市庁と民間企業等々のつなぎ役、現場との意見交換から生まれた課題をもとに企画立案・進行管理も行っています。現場に人が足りないときには企画部門自ら現場に降りていく、人員調整弁としての役割も担っているのです。

申請しやすい環境の整備

都城市では、撮影した写真をそのまま申請書類に反映するなど、タブレットを使ってマイナンバーカードのオンライン申請をサポートしています。カード申請における不安などを解消できるこの手法は「都城方式」と呼ばれ、全国の自治体に横展開されています。2015(平成27)年11月にはカード専用会場を設置。2018(平成30)年には庁舎地下1階を全てカード専用会場にしました。

タブレットは持ち運びできるので、企業や商業施設、大学、イベント、確定申告会場、
(全国初で国のモデル事業である)ハローワークや運転免許センターなどさまざまな場所に出張して申請支援を行っております。出張申請支援はこれまで延べ1,600回を超えています。商業施設内に土日も利用可能な申請窓口を設置しているほか、土日・時間外開庁を積極的に実施しています。

「デジタル化こそアナログで」の精神でマイナンバーカードの普及促進に取り組んでおり、自宅にお伺いする「マイナちゃんカー」を全国初運用。マイナちゃんカーは、広告塔としても活躍しています。

マイナンバーカードの利便性向上に向けた、多様な取り組み事例

マイナンバー制度開始当初、都城市では市内信用金庫や金融機関と連携して金利優遇施策をとったり、市内温泉施設などと連携しポイントカードのポイント付与を2倍にしたりするなど、官民連携でマイナンバーカードの普及促進に取り組んできました。

都城市は面積が広いため、市としてはオンライン申請の推進に注力していますが、都城市では現在、マイナンバーカードについて、新サービスなどを始める際のキーとして活用する
構想が出てきています。マイナンバーカードを無理矢理使うのではなく、マイナンバーカードこそが一番便利だと市民の皆様が思っていただけるものに利活用を進めていきたいと考えております。

電子母子手帳サービス

母子健康手帳に記録されている健診情報や予防接種履歴、子育て応援店のクーポンなど、
子育てに関する情報をカードの認証によりスマホで確認できる電子母子手帳サービスも導入しております。

コンビニ交付サービス

市役所内や多くの市民が集まる中心市街地の図書館(庁舎外への設置は全国初)に、
コンビニ交付用のマルチコピー機を設置。手数料を一日150円に引き下げて、全体の5割弱の証明書発行が市役所からコンビニに移行したことで、証明書窓口の職員を減らすなど効率化につなげています。

おくやみ窓口

住所などを記入した状態で、死亡手続きで必要な申請書などを一括作成する「おくやみ窓口」を構築。書類作成に必要な情報は、マイナンバーカードから読み取ることもできるようにしています。利用者の99.5%がおくやみ窓口を評価しています。

マイナポータルぴったりサービスの活用

都城市では、ワクチン接種証明書申請や消防事務、不在者投票の請求、プレミアム商品券申し込みといった市独自の事務にも、マイナポータルぴったりサービス(※)を活用しています。特別定額給付金に関しては、申請開始日の午後から給付を開始し、その後も申請から1週間以内で給付を終えたことは、都城市民に非常に好評でした。

またマイナポイントの仕組みを用いて自治体が給付を行える国のモデル事業を、全国最速でスタートした他、Yahoo!くらしとの連携テストも都城市で実施しました。

(※)マイナポータルぴったりサービス:申請したい自治体を検索し、子育てや介護などの手続きができるサービス。利用にはマイナンバーが必要で、自治体ごとに異なる申請様式を統一している。

地域通貨アプリ「にくPAY」

日本青年会議所九州協議会およびレヴィアス株式会社と連携協定を締結し、地域活性化を
目的とした地域通貨アプリ「にくPAY」を構築。国モデル事業の中で、利用者・利用額ともに全国最多でした。

都城には、「肉と焼酎のふるさと」というキャッチフレーズがあるので、わざと少しダサい名前にしています。行政からの情報がなかなか市民に届きにくく、「にくPAY」という名前にして市民の間で口コミでこのアプリが広がっていくことを期待したためです。賛否両論
ありながらも実際にかなり多くの方に使っていただき、地域の人々に愛されるアプリとして成長したと考えています。

デジタルケア避難所

都城市では激甚化・頻発化する災害への対応のため実証事業でデジタルケア避難所システムを構築しました。このシステムにより、マイナンバーカードで避難所への入所も可能にした他、避難所に高速Wi-Fiを設置し、安否確認や情報収集の効率化、避難物資などの管理や需要予測なども実施しています。

マイナンバーカードによる出退勤管理をベースとした庶務事務システムを構築したほか、
図書館カードとしても利用可能です。民間ポイントの引き込みやボランティアポイントなどのカード付与を可能とする自治体ポイント制度も参画をしていました。

マイナンバーカード利活用の支援

マイナンバーカードをただ持っているだけではインフラとは言えないので、使っていただけるための支援にも力を入れています。マイナポイント第1弾として自治体マイナポイントの
支援窓口を設置。この数は全国屈指だと自負しています。また、特別定額給付金やワクチン接種アプリ、マイナポイント第2弾などにも徹底的な利活用の支援を行っています。

郵便局へのマイナンバーカード関連事務委託

商業施設内の郵便局に電子証明書の更新、暗証番号の初期化再設定などの事務を委託
(法改正後の全国初の郵便局への委託事例)しました。交付率が80%近くに達したので、
身近な場所で更新やマイナンバーの暗証番号を再設定できるようにしました。

EBPM(※)の実践

市が保有する情報を匿名化し分析するBIツール(※)の活用により、施策を高度化しています。年齢が高い人ほど取得していないという分析には出張申請の要件緩和をした上でマイナちゃんカーを派遣したり、給与所得者ほどマイナンバーカードを取得していないという分析には、企業版出張申請補助の強化を行ったりしています。

※BI(Business Intelligence)ツール:さまざまなデータを自動集計し、グラフやマップなどの形で可視化・分析できるデジタルツール。Googleデータボータル、PowerBI、krewDashboardなど

※EBPM(Evidence Based Policy Making):証拠に基づく政策立案

まとめ

都城市の取り組みを他の自治体さんにお話すると、「都城市だからできるんだ」というお声をいただくことがあります。確かに人口規模、産業構成、地域の強み・弱みによってとるべき施策は異なってきます。しかし「都城市でできたんだから自分たちもできる」という意識を持って、マイナンバーカード普及促進に国を挙げて取り組んでいただくことで、マイナンバーカードが都城だけでなく全国でインフラとして使われるようになることを期待します。

マイナンバーカードの所持の有無が施策の展開の仕方などに大きく影響するので、今後も
申請数を増やす努力を続けていきます。そのためには、1人1つのポイントで便利で感じるのではなくて複数のポイントで便利を感じていただけるように、利活用のところをもう少し
掘り下げていきたいと考えております。