女性活躍・育児中人材の業務設計|ブリューエンのフルリモート×マイクロワーク三原則で海外パートナー100社を自力開拓
「働きたいのに、働けない人がいる」。4歳の娘を持つ田中結子氏がこのスライドを映した瞬間、会場のあちこちでうなずく姿があった。岐阜県を拠点とするブリューエン株式会社は、ドイツ語で「花開く(blühen)」を社名に冠したソーシャルスタートアップだ。コアスタッフ10名・業務委託50名という小規模でありながら、全員フルリモート・フルフレックス・マイクロワークという三原則のもと、育児・キャリアブランク・海外在住など多様な制約を持つ人材が主力戦力として稼働する。2025年度東海・北陸大会の奨励賞を受賞した。
女性管理職比率15%の壁、育児中の人材が弾かれる従来型雇用モデルの問題

社会背景:高齢化と労働人口減少

埋もれている才能:女性管理職比率15%
2024年時点で、日本の女性管理職比率は依然15%にとどまる。育児中・キャリアブランクを持つ人材は、従来型のジョブディスクリプションや一律の勤務時間設定のもとでは「管理しづらい・非効率」として採用対象外に置かれやすい。
田中が問うのは、才能の不在ではなく設計の問題だ。「こういった人たちが安心して働き続けることができて、本来の才能やクリエイティビティを思う存分発揮できる」環境を、制度として後から整えるのではなく、最初から設計し直すというアプローチを選んだ。
北海道から海外在住まで60名が稼働するフルリモート三原則の実装と「教え合い文化」の醸成

「助け合う文化」を社内で醸成
ブリューエンの働き方は「フルリモート・フルフレックス・マイクロワーク」の三原則で構成される。北海道から沖縄まで、さらにフィリピン・フィンランドに在住するメンバーが、各自のスケジュールに合わせて昼間または夜間に稼働する。子どものお昼寝中の1時間と就寝後の3時間、計4時間勤務という形態も組み込まれている。
組織内の連携はSlack(テキスト・スタンプ)とGoogleカレンダー(稼働時間の可視化)を中心に設計されており、いつ誰がオンラインかをメンバー全員がリアルタイムで把握できる。週1回のオンラインミーティングで情報共有・相談・フィードバックを集約し、非同期でも組織の方向性が揃う仕組みを維持している。
特徴的なのは、ITリテラシーがほぼゼロの状態から参加するメンバーへの対応だ。「ZoomのURLに入れない」「Slackでどこに返信すればいいか分からない」というメンバーに対し、既存メンバーが丁寧に教え合う文化を意図的に醸成している。田中は「お互いを助け合う文化を最初から醸成している」と語る。これは制度設計ではなく、オンボーディングの場で繰り返し体験させることで文化として根付かせている。
事業面では三つの柱がある。地域企業・個人事業主のIT課題を解決する「IT忍者」、英語ブランディングを担う「えいご屋さん」、そして現在最注力のグローバル人材紹介事業「NEXT VISA」だ。NEXT VISAは独自で提携している海外現地の日本語学校に、求人情報をダイレクトに届け、応募者を募ることができる事業モデルを自社で構築しており、海外パートナー企業100社超の開拓と契約交渉もすべて社内の多様なメンバーが自力で担っている。
タジコングランプリ受賞・岐阜県認定10社選出、制約のある人材が対外的にプロとして機能する組織の実現

スタッフの声:子育てをしながら合間でのキャリア構築
2025年、岐阜県多治見市のビジネスプランコンテスト「タジコン」でグランプリを受賞。岐阜県の新知事が旗を振る働き方改革推進事業の最初の認定10社にも選ばれた。岐阜県SDGs推進パートナー(シルバー、ゴールド申請中)にも登録されている。
審査員からも指摘されたように、「外に対して会社の働き方のコンセプトをあまり言わない」まま、「一般的な企業として信頼してお仕事をさせてもらえている」状態を実現している。制約のある人材が主力でありながら、対外的にはプロとして機能しているという事実が、この仕組みの完成度を示している。
10〜60名規模の中小企業が多様人材を主力化するための業務粒度変革と孤立防止設計
最大の示唆は順序の転換にある。「制約のある人を採用する」という発想ではなく、「制約がある人が当たり前に稼働できる業務設計と文化を先に作る」という順序だ。ツールは汎用クラウドサービスで十分だが、教え合いの文化とGoogleカレンダーによる稼働可視化など、孤立を防ぐ仕掛けを意図的に組み込む必要がある。
審査員の松本国一は「こういう新しい働き方をちゃんと実装して、各会社からそれを受け入れることでちゃんと守っていけるんだよというアピールをしていただければ」とコメントした。制約のある人材を受け入れる側の企業にとっても、信頼できる仕事が返ってくるという実例として、社外へのアピールにさらに踏み込む余地がある。まず確認すべきは採用基準ではなく、業務をマイクロワーク化できるかどうかだ。