DX事例

1年で職人を育成し、本社業務をクラウド化 – 建築塗装業のDX事例

株式会社TSグループは、建築塗装業にデジタルトランスフォーメーションを組み合わせることで、営業スタッフを置かず、バックヤードの業務をクラウド化できた他、普通なら5~7年かかるところを1年で育成できるようになりました。

本記事では、会社の成長とミッションの実現のためにDXを推し進めていった、株式会社TSグループの事例をご紹介します。

DX推進の目的は、会社の成長とミッションの実現

株式会社TSグループは、エンドユーザーから直接仕事を請け負う建築塗装の会社です。

DX推進を行った結果、月の時間外労働時間は平均約15時間、従業員の平均年齢は27歳、有給休暇の消化率も94.5%と高く、厚生労働省からもホワイト認定、九州の建築塗装業としては初のユースエール認定を受けるなど、外部からの評価も得ています。

DX推進に取り組んだ理由は、企業として今後も成長し続けるために、自社で掲げているミッションや行動指針を達成するためにも、デジタル技術を導入するに至ったのです。

実践事例の紹介

株式会社TSグループでは、見積書作成から振込業務に至るまで、クラウドサービスを導入しました。その際、GoogleスライドやGoogle Meetなど、Googleが無料で提供している各種アプリを積極的に活用。LINE WORKSや施工現場で使用しているドローン、一部のクラウドサービスを除いてほとんどコストをかけずにDXを推進しています。

DX推進の過程で、業務遂行上問題だと感じる点がいくつか見えてきました。

(1)伝達ミスや伝言が上手く伝わらない状態がある

todoリストや他のクラウドサービスとの掛け合わせによって、それぞれの業務タスクを全員で進捗共有できるようになり、伝達も不要になりました。

(2)業界としてはFAXも未だに多く、シュレッダーも必要

10数年前からクラウドメールとFAXのオンラインサービスを併用し、受信FAXの印刷を廃止しました。印刷コストの削減にも貢献しています。

(3)決算報告するたびに大量の印刷が必要になる。また、振り込み業務に、半日ぐらいスタッフが時間を取られたり、振り込みの金額を間違えてしまったりすることがある

会計クラウドソフトやネットバンクを使うことによって、半日かかっていた業務が約30分で完了でき、ダブルチェックもできるようになりました。

(4)大量のSDカードやUSBから、データを探すのが大変

現場で撮影した写真をSDカードやUSBに保存していると、知らず知らずのうちに溜まってしまい、必要なときに必要なデータを探すのが大変でした。また、データの容量が大きすぎて開けないといったトラブルがあったり、大きなデータのやり取りには別途ファイルピンといったサービスも必要だったりしたので、Googleドライブにアップし、URLを共有するだけにしました。

職人の短期育成に用いた、革新的な方法とは

伝統的な職人技術の継承において、株式会社TSグループでは、独自のアプローチを取り入れました。具体的には、現場で必要とされるベテラン職人の技術とか知識、共通言語やルール、ノウハウをGoogleサイトとGoogleスライド、YouTubeにアップして、新入社員がいつでもアクセスできる形で提供しています。管理職を中心に情報の閲覧権限管理を徹底。社員たちをステージごとに分けて管理職で権限の付与または剥奪を行っています。

この取り組みはもともと、株式会社TSグループがビジネスを手掛ける上で職人の短期育成が必要だったためです。従業員に対しては、クラウドツールの効果的な使用方法を理解してもらうためのフォローも行いました。これにより、未経験者でも最短で国家技能士資格の取得が可能となり、短期間での現場への貢献が実現しました。

また、株式会社TSグループでは海外からの技能実習生の受け入れも実施し、翻訳アプリを使って母国語に置き換えたマニュアルを提供しています。

こうした一連の教育制度を、現在「他社戦略育成支援事業〔カシスト®〕」として他社向けに展開しています。

まとめ

株式会社TSグループが推進したDXは、伝統的な塗装職人業でも、クラウド技術とデジタルトランスフォーメーションを駆使することで、業務効率化はもちろん、職人の短期育成、新たな事業の展開に貢献しました。導入に高い費用をかけなくても、無料で提供されているクラウドツールの活用により簡単にDXを進められる事例であると言えます。