DX事例

残業364時間削減、売上36%アップ!超アナログだった業務をクラウドで一新

近年、経理や人事といったバックオフィス業務で、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業が増えてきました。バックオフィス業務は従来、営業や販売といったフロントオフィス業務を支える裏方的な役割が主でした。しかし、今では経営戦略の観点からもデータやクラウドを活用した業務改善と、付加価値の高い業務の創出が求められています。

今回は、ITに詳しくなかった経理担当者が、アナログだらけだったバックオフィス業務をクラウド化させていった結果、企業風土が変革していった八代製薬株式会社の事例をご紹介します。

ノートで全てを管理していた、およそ10年前の経理業務の実態

八代製薬株式会社は、薬の原料(医薬品原薬)を加工・小分けし、他の製薬会社に提供している企業です。

10年ほど前の経理業務は、手書き・手計算での帳簿管理や伝票整理が中心でした。パソコンを操作できない社員が多かったため、受注や売上、在庫は全てノートに書き込んで管理していました。そのため、データ集計も情報共有もできず、会社の数字も分からず、経営判断も遅れていました。

kintoneとPCAクラウドの導入による経理業務の変革

そこで、伝票や帳簿を全てExcelで管理し、売上や仕入れのデータ、顧客情報など会社にとって重要な情報を蓄積していきました。

しかし、そのデータを社員全員に共有するにはExcelでは限界を感じたこと、2020年のコロナ禍で在宅勤務の必要性が生じたことが後押しとなって、kintoneの導入を決断。

kintoneをデータベースとして活用し、会社のデータをクラウド上に保存することで、在宅勤務でも必要なデータにアクセスできるようになりました。これにより、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が可能になりました。

さらに、従来は手書きで行っていた業務をkintoneとの連携によってクラウド化したことで、効率的な業務フロー構築を実現しました。手作業がほとんどだった経理業務をPCAクラウドに移行しました。納品書や請求書はinvoiceAgentを、給与明細もSmartHRをそれぞれ使って電子配信。同時に、kintoneで作成した売上データを会計データに変換してPCAクラウドの会計ソフトにインポートするといった効率化も進めていき、クラウドサービスをkintoneと連携させることで、kintoneを軸とした新しい業務フローが完成しました。

DX推進による八代製薬の成果と動向

クラウド化に取り組み始めてからおよそ3年で、八代製薬の売上高は36%増加し、年間364時間の残業時間の削減に成功。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令された頃に整備した在宅勤務制度も、5類に引き下げられた現在ではハイブリッドワーク制度として運用しています。

他の製薬会社から預かった原薬を八代製薬の倉庫で管理する、新規事業(倉庫業)の立ち上げが計画されています。一連の活動を知って「kintoneを使って何かしたい」と、kintoneを学ぶ社員も現れるなど、社員たちの関心も高まっています。このように、DX推進を通じて、会社を変革しようという動きが、会社全体で加速しているのです。

まとめ: DXを通じて開かれる新たな可能性

社員がそれぞれの仕事に注力し、経営者が安心して経営に集中し、会社が成長していくためには、会社の数字を把握している経理の存在が不可欠です。数字や会社の情報を提供するといった、会社の利益につなげるためのサポートも、業務のデジタル化も、数字を知りITツールを使えるバックオフィスだからこそできることです。

バックオフィス業務でkintoneやPCAクラウドを活用した八代製薬株式会社の事例は、そうしたバックオフィスの役割を再認識するとともに、経理業務の効率化の実現、新たな事業の創設といった可能性があることを示しています。