DX事例

【トラストパーク株式会社】シェアリングエコノミー型DXコンテンツで地方創生!新しい旅のカタチ「車泊(くるまはく)×バケワーク」

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、事例を発掘し共有するためのコンテストです。自治体や民間企業などが取り組んだDX推進プロジェクトを表彰し、それぞれの部門で大賞を決定します。

2022年6月24日に行われた「官民連携部門」より、産学官で実施したシェアリングエコノミー型DXプロジェクト「車泊(くるまはく)」×「バケワーク」の取組内容と成果をご紹介します。

トラストパーク株式会社の概要

■法人名:トラストパーク株式会社
■事業内容:
 ・時間貸駐車場の企画・運営・管理
 ・駐車場管理受託
 ・月極駐車場の運営・管理業務
 ・駐車場・駐車場用地の買い取り、購入
■設立:1993年8月6日
■公式Webサイト:https://www.trustpark.co.jp/

シェアリングエコノミー型DXとは?

「シェアリングエコノミー型DX」という言葉には、Destination Experience、
つまり「目的地で体験をする」という、いわゆる着地型観光DXコンテンツとしての意味も込められています。

本日は、3つの事例をご紹介します 

①産学官で実施した総務省プロジェクト:シェアリングエコノミーの実証事業事例

②①の事業モデルを横展開し、官民連携で自走運営している「車泊(くるまはく)」事業

③②の広域導入に向けての実証実験「バケワーク」 

事例①新しい旅の形「車泊(くるまはく)」とは?

我々トラストパーク株式会社は、「One九州アイランド」をコンセプトに九州各地の観光振興を目的に広域7自治体含む計20団体 産学官から成るコンソーシアムを組成し、総務省に
提案をしました。 

2017年4月に、国の委託を受けて熊本・長崎の7地域でシェアリングエコノミー型九州周遊観光サービスモデル事業を開始しました。 

本来は泊まることができない地域・施設のスペースをシェアリングして、有料での車中泊を可能とするルール整備と、実証事業を行いました。 

言い換えると、元来価値を生んでいなかった場所、マネタイズできていなかったスペースに「電気」という付加価値を付けて、安心・安全・公明正大に泊まれるようにする実証です。 

我々、トラストパーク株式会社は、全国で時間貸し駐車場の運営管理を行っている福岡本社の企業です。

本提案を行ったきっかけは、2015年にグループ会社がキャンピングカー事業に参入して
クルマの製造販売を開始、翌2016年4月、キャンピングカーのレンタル事業を始めた矢先に、熊本地震が発生し、被災者のキャンピングカーの貸し出しや、被災地への物資支援を
通じて車が移動するシェルターとして果たすべき役割や現地での車中泊問題を目の当たりにしたことです。

避難場所の不足や電気の必要性などを現場で経験したことが、本事業のきっかけです。

本事業によって解決を目指す地方課題

本事業が解決を目指す地方課題は数多くあります。自然や歴史・文化など潜在的な観光力が発揮できていない地域、宿泊施設が不足しており日帰りされているエリア、車でしか行けない地域、道の駅で車中泊問題が発生している地域の課題などです。 

国土交通省は、道の駅やサービスエリアなどの駐車場において交通事故防止のための休憩 や仮眠は許可していますが、宿泊目的の利用は許可していません。

近年、大規模な自然災害が発生していますが、九州においては6年前の熊本地震や平和2年
7月豪雨では熊本県南部の人吉・球磨エリアなどで大きな被害が発生しました。熊本地震ではエコノミークラス症候群で亡くなられた方の報道がされるなど、車中泊問題も発生し、
災害時の避難場所や防災拠点の整備を求められました 。

このような地域課題の解決に向けて、それぞれの自治体だけでは対応が困難なことを、
広域連携して取り組むことで解決の道が開けると思っています。税収やリソースなど、行政に足りないものを官民連携して民間のリソースを活用しなければ、被災地の復興や観光振興は図れません。

シェアリングエコノミーの概念を活用し、地域資源をシェア・活用する新しいサービスを
創出すべく、5年前にDXの実証事業を行いました。

「車泊」の実証事業概要

既存のシェアリングエコノミー予約プラットフォームと、新規開発したハードである給電制御装置を、QRコードを介して連動させる休憩駐車管理システムを開発しました。オンライン予約決済後に発行されるQRコードを現地の機械にかざすと、家庭と同じ100ボルト電源が
地域ごとに設定された時間内で使用可能になります。

無人・キャッシュレス・非接触運用が可能な電源提供型サービス「RVパークスマート」として、熊本地震の被災地含む7市町村の道の駅や観光施設等の遊休スペースなどに導入、観光客が安心・安全な車中泊が可能かどうかを検証しました。

車中泊車両のメインターゲットは、キャンピングカーではなく、バンやステーションワゴンなど後部座席がフルフラットになる一般車を設定しました。

検証方法は、スマートフォンのGPS車両検知センサ、防犯カメラといったデジタル端末機器を活用して周遊滞在データ等を収集し、アウトプットしました。モニターアンケートの結果、地域滞在消費額は1人7,802円でした。

このような車中泊のテストマーケティング結果を新しい旅のカタチ「車泊(くるまはく)」の事例として、セミナー等で公益団体・観光事業者などに共有してきました。

事例②「車泊(くるまはく)」事業の横展開

「車泊」の実証実験終了後、横展開・自走運営している事業についてご説明します。
「車泊」スポットは熊本・長崎の7地域から、2022年6月で全国50カ所に拡大しました。

ハードは小型化・低価格化を図り展開しております。

「車泊」の導入費用は、一次電源工事が終わっている前提で、看板や機器設置工事を含め、
2台分で約100万円です。公共地は27カ所と半数以上を占めており地域課題の解決に向けて地方創生等の計画に基づき導入し、自治体や指定管理者と連携しながら運営しています。

今年オープンした施設で言うと、廃校や、元・国民宿舎のスペースをシェア・活用した事例もあります。 

「車泊」利用件数はコロナ前の2〜4倍と増加しています。宿泊業とはターゲットが異なり、リピート率は46%です。月別の利用推移で言うと、2022年5月には過去最高を記録、前年比2倍、前前年比7倍と、コロナ禍に急伸しております。

メディアにも注目をいただき、 NHK全国放送で島原城の「車泊」を取り上げていただきました。車室の電源を活用してたこ焼きパーティーをしたり、冬場は車内に電源コンセントを
引き込んで電気毛布や電気ファンヒーターで暖を取って過ごされています。 特に家族やペットと一緒に旅をする方の利用が多いのと、オンラインで予約決済して利用される方は 個人情報を提供されていることから、車中泊マナーが良いのが特徴です。

最近はWi-Fiが利用できるスポットも増えており、今後はテレワークやワーケーション利用も見込まれます。

「車泊」利用件数は5年目に入り右肩上がりで推移していますが、地域経済効果として5年半で約2億2300万円の滞在消費が算出されています。料金は1組2〜3000円と、宿泊費に比べて安いため、来訪者は地域ならではの食・体験にお金をかける傾向があるのと、キャンパーとは異なり現地調達率が高く、地域のお店を利用することが特徴です。

熊本県のホームページで公開されている「観光客の消費指標」で交通費・宿泊費を除くと、日本人の消費単価は約1万900円です。同じ式で計算した場合「車泊」によって約3億3700万もの滞在消費が算出されます。この数字はあくまでも論理値ですが、観光客がお金を落としやすい施設や、地域ならではのコンテンツが増えれば「車泊」エリア全体への経済効果が期待できます。

「車泊」の事業モデル

「車泊」事業における売上は、オン ラインで予約決済されたものを基本的に2社間でレベニューシェアをしております。我々が「車泊」希望者を現地に送り込まければ、売り上げは
ゼロになる事業モデルです。集客の負担はかけておらず、利用時に発生する電気代は売上から負担いただくため、実質のランニング費用は0円です。

システム運用に関しては、「人」を中心に考えています。ハードやシステムとしてではなく DXコンテンツとしても「車泊」運用を提案しています。宿泊業で例えれば、ホテルのチェックイン対応は基本的に人が行っていますが、駐車場でやる「車泊」のチェックイン対応は「RVパークスマート」がやってくれます。オンラインで予約された情報は現地にも電子メールでリアルタイムに通知されます。無人・キャッシュレス・非接触で業務効率化できた時間を、販促・マーケティングの時間に充てたり、来訪者へのおもてなしの時間にも充てていただくことができ、 これが顧客満足度やリピート率の向上につながっていきます。

事例③「バケワーク」の実証実験

コロナ1年目の2020年からこれまで、九州・山口延べ30地域で「車泊」の実証実験を行ってきました。2021年度は4つの広域連携プロジェクトを実施しました。 

その中でリピーターの創出に資するデータが取れた「バケワーク」の実証実験をご紹介します 。昨年夏から冬にかけて実施した「人吉球磨モニターツアー」と「熊本県南モニターツアー」です 。このモニターツアーは地元の観光協会と熊本県からの委託を受けて実施しました。

目的は「車泊」導入にあたっての課題ニーズを把握し、当該施設を活用した観光プランや地域体験コンテンツの造成に向けた基礎データの収集です。

我々、トラストパーク株式会社は「車泊」モニターを各100組募集して、当該エリアに送り込むことと、データの収集・分析を担当しました。 現場はチェックインポイントで参加証や、県が作成した観光パンフを手渡して、周遊観光を促しました。

コロナ第5・6波のピークに当たりましたが、両ツアーともに180件を超える応募をいただきました 。

お盆期間中の悪天候や、まん延防止下では、県外客をお断りする地域もあり、参加数は定員100組に満たなかったものの、ツアー後「熊本県にまた行ってみたいか」というアンケートに対し、90%以上の方が「また行きたい」との回答をいただきました。

その理由は、参加者に対して「旅前」に電話・電子メールで「車泊」施設の情報や注意事項をしっかり伝え、「旅中」は現地のチェックインポイントで観光パンフを手渡してコミュニケーションが図れたことが一因です。 

「RVパークスマート」は無人運用が可能で利便性は高いですが、より来訪者に喜んでいただくためにはお客様が能動的に立ち寄りたくなるポイントを作ること、その市域の窓口となる人の付加価値・おもてなしが大切であると分かりました。

 つまり、デジタルも大事ですが、地方においては「人との接点」を作ることに意義がある ことが分かりました。

文化としての「車泊」定着を目指す

車中泊を「やむを得ずにする行為」としてではなく、「車泊」という文化の定着を目指しています。DX推進としては、電話で予約を受け付けている全国200カ所以上の「RVパーク」を同一予約プラットフォーム上で管理し、車中泊利用データのデジタル化に向けて取り組んでいます。

日本では2022年6月からインバウンドの受け入れも始まりました。今後はFIT(海外個人旅行)も徐々に増えていきます。九州アイランドには豊かな自然や文化、温泉やグルメ、地域ならではの景色、車でしか行けない隠れた観光スポットがたくさんあります。 

多くのものがネットで購入出来る時代になり、昔に比べ、モノを所有する価値が低下し、「所有から利用へ」と消費行動が変化して いく時代において、シェアリングエコノミー型の着地型観光DXコンテンツである「車泊」「バケワーク」により、その地域でしか体験できないことを作り、人・モノの価値を現場で認識・体験し、その地域での消費行動につなげる
サービス・コンテンツを創造してまいります。

官民連携し、人の強みを生かした「コト+ モノ」消費のサービスモデルを創出していきます。