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町工場ネットワークのデジタル化で稼ぐ力向上!I-OTA合同会社のDX事例 | 日本DX大賞

日本DX大賞とは、日本のDX推進を加速するために、事例を発掘し共有するコンテストです。

2023年6月19日に行われたBX(ビジネストランスフォーメーション)部門 決勝大会では、デジタル化の波がビジネスのあり方を大きく変えている現代において、既存のビジネスモデルを根本から見直し、革新的な形で事業を展開している企業や組織による事例が発表されました。

この記事ではその中から、町工場の「仲間まわし(近隣の町工場間のネットワーク)」をデジタル化し、稼ぐ力の向上に取り組むI-OTA合同会社の事例をご紹介します。

I-OTA合同会社の概要

■法人名:I-OTA合同会社
■事業内容:製品・装置開発、加工・部品ソリューション、モノアイデア構想企画のコンソーシアム(共同事業体)
■設立:2018年6月20日
■公式Webサイト:https://i-ota.jp/

町工場ネットワークをデジタル化、稼ぐ力の向上を目指す

I-OTA 國廣氏:

I-OTA合同会社は、大田区町工場の「仲間まわし(近隣の町工場間のネットワーク)」のデジタル化によって、稼ぐ力を向上させるプロジェクトに取り組んでいます。

プロジェクトでは、ITツールを活用して業務効率化を図るだけでなく、町工場同士の連携を強化し、お客様に付加価値のあるソリューションを提供することを目指しています。

例えばロボットの制御や板金など、異なる企業の得意分野を組み合わせてチームを作り、新しい分野に進出する取り組みにチャレンジしています。

I-OTA合同会社は以前に、「下町ボブスレーネットワーク構築プロジェクト(日本のもの作り企業とアスリートが協力してボブスレー用のソリを開発し、オリンピックの舞台で表彰台に乗ることを目指す取り組み)」に携わっており、その経験を活かしています。

連携強化によって、小さな町工場も世界に挑戦できる革新的なビジネスモデルを実現したいと考えています。

ものづくり相談に関するワンストップサービスを実現

I-OTA 國廣氏:

I-OTA合同会社は、大田区の町工場ネットワークが持つリソースをワンストップでお客様へ提供するために設立されました。

大田区の町工場は、高度な加工技術とノウハウを持っているものの、工場数の減少が深刻化しています。その一方で、現場のデジタル化による業務効率化も必要です。デジタル化によって、情報共有やものづくりの効率化が期待できます。

そこでI-OTA合同会社は、ものづくりに関する相談者とハブ企業を結びつけ、ワンストップでものづくりの依頼を受ける形態を取っています。

ものづくりに関してお困りごとを抱えているお客様にワンストップで対応していくことで、このプラットフォームの中に存在しているものづくり企業が擁するリソースをうまく連携して町工場全体のブランド力を上げていき、全国展開を目指していきたいと思っています。

お客様にもっと認知していただいて、どんどん発注をしていただける仕組みづくりができればいいと思っています。

I-OTAのプラットフォームの成果と今後の目標

I-OTA 西村氏:

次に、プロジェクトの成果と今後の目標です。

現在グループ加盟企業数が68社、発注企業数が58社、また初の自社製品の開発にも成功しております。

定性面としては、グループ発注のための運営ノウハウの蓄積、説明会等により、区内企業からも賛同を得て、デジタル機運の高まりに寄与できました。

グループ加盟企業同士がそれぞれお互い成長するために、今まで経験した内容の情報を共有しております。

このような取り組みによって自社単独では実現不可能だったことを、仲間企業と共に取り組めば実現できるんではないか、と、各社のモチベーションをどんどん上げていき、実力をつけ、グループ加盟企業同士の連携をさらに強化にしていくことで、着実に日々成長を重ねています。

I-OTA 西村氏:

自社製品の開発にも成功しました。その一例をご説明させていただきます。

ワイヤー牽引式の草刈り機「斜刈機(しゃかりき)」という名前です。農研機構との共同開発でですね、急傾斜に特化した草刈り機ロボットの開発を行いました。

I-OTA 國廣氏:

グループ加盟企業内で擁する多くのリソースを補完しあって大きな開発能力にして、お客様に対するソリューション提供を目指しています。

大田区には、日本の「ハブ空港」と言われる羽田空港がございます。我々は、日本のもの作り、ひいては世界のもの作りのハブになりたい、という想いを抱いています。大田区という地域から発信し、全国のもの作り企業が繋がれるようなプラットフォームを構築していきたいと思います。

まだまだ、参画企業が全体で100社程度の組織ですが、どんどんこれを全国に広げて、多くのリソースでお客様を喜んでいただけるような社会を築き、もう一度、日本のもの作りが世界ナンバーワンと呼ばれる世の中をつくっていきたいと考えております。

デジタル活用による中小企業の組織改革について

奥谷(審査員):

企業がデジタルを通して連携する「仲間まわし」のデジタル化ということだと思いますが、このサービスの「フェアネス(公平性)」の担保については、いかがでしょうか。

つまり、お客様から「こんな製品・装置を作りたい」と相談があった際、御社に加盟しているメーカーさんに技術力が依存してしまうという課題点があるんじゃないかなと思います。

もちろん今後、他地域との連携もお考えになっているかと思いますが、そのあたりはいかがですか?

I-OTA 國廣氏:

お客様のニーズに応じた見積もりを提供するために、ものづくりの金額感を明確化することも求められています。

受託型の製造業では、ものづくりのコンサルティングのプロセスに対してお金を払う文化がないため、価格提示が難しい側面もありますが、今後はコンサルティング料の時間チャージを取り入れるなど、業界の古い慣習を思い切って打破する勇気も必要ではと思っています。

I-OTAでは技術リソース提供や事業承継、中小企業の組織改革の問題にも取り組んでいき、日本経済の救済や、新しい価値の創造を目指していきます。