連載・コラム

DX認定制度

1.DX認定制度とは

DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。

Webサイト等の公表媒体をもって「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」であることが確認できた事業者を認定するもの(絶対評価)で、認定に当たり他の事業者との比較(相対評価)は行わない、とされています。

国は、企業がDXの取組を自主的・自発的に進めることを促すとともに、特に、経営者の主要な役割として、ステークホルダーとの対話を捉え、対話に積極的に取り組んでいる企業に対して、資金や人材、ビジネス機会が集まる環境を整備していこうとしています。

DX認定制度はこうした国の施策の一環として行われているものです。

「デジタルガバナンス・コード」とは、経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄を取りまとめたもので、DX認定制度の認定基準となる項目(8項目)です。現在、デジタルガバナンス・コードの改訂作業が行われており、10月からは新しい認定基準デジタルガバナンス・コード2.0が適用される予定です。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、本制度に関わる「DX認定制度事務局」として各種相談・問合せ、及び認定審査事務を行っています。申請の対象は、個人事業者を含むすべての事業者で、公益法人等も含まれます。

申請手続きや認定の維持に費用は掛かりません。

DX認定制度の認定申請は2020年11月から受付が開始され、これまでの2年弱で600社ほどが認定されています。

いまのところ認定企業は上場企業が多い様ですが、中小企業の認定も相当数あり、早い段階での認定取得は他社差別化に繋がっているようです。

2.DX認定制度に認定されると

認定事業者は認定事業者一覧としてIPAのホームページで公表されると共に、「自社がDXに積極的に取り組んでいる企業」であることをPRするためのロゴマークを利用することができます。また、以下の各種支援措置が受けられます。

①税制支援措置

DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対し、税額控除(5%又は3%)もしくは特別償却30%の措置を受けることができます。

②金融支援措置

<日本政策金融公庫>

DX認定を受けた中小企業者が行う設備投資等に必要な資金について、基準利率よりも低い利率で融資を受けることができます。

<信用保証協会>

中小企業者は、情報処理システムを良好な状態に維持し、企業経営において戦略的に利用するために必要となる設備資金等について、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。

3.DX銘柄

経済産業省は、東京証券取引所と共同で、企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を毎年「DX銘柄」として選定し、更に「DX銘柄」選定企業の中から、業種の枠を超えてデジタル時代を先導する企業を、「DXグランプリ」として選定しています。今年は、中外製薬株式会社、日本瓦斯株式会社が「DXグランプリ2022」に選ばれました。今後、DXを活用して企業価値を高めようとする企業を、国だけでなく個人投資家も含む広く社会全体で応援しよう、とする機運が高まることを期待したいものです

執筆者

高橋 章氏
株式会社 経営財務支援協会 シニアコンサルタント

昭和60年三井銀行(現・三井住友銀行)入行。アットローンなど先進リテール金融商品の開発に従事。
大手ノンバンク・サービサー会社社長を経て独立。平成27年5月より現職。
中小企業の財務管理を中心とした経営支援、フィンテックを活用した経営改善指導等に従事。