での保存が義務付けられていました。しかし、2022年1月以降、電子データの印刷・保管が廃止され、サーバー上やクラウド上、パソコンのデスクトップ上といった電子保存が義務化されます。他にも、スキャナ保存の要件が一部変更になっています。
今回は電子契約サービス「NINJA SIGN」を提供している、株式会社サイトビジットの杉山一彦さんに、電子帳簿保存法の改正について解説していただきました。
杉山一彦さん(株式会社サイトビジット NINJA SIGN事業部 営業部部長)2003年~2020年1月まで、スターティア株式会社に在籍。営業部門、技術・サポート部門、マーケティング部門の責任者、複数の新規商材責任者などさまざまなポジションを経験。リーガルテックの領域で戦ってみたいと、2020年2月に株式会社サイトビジットに入社。現在に至る。 |
そもそも電子帳簿保存法(電帳法)とは?
電子文書データの保管方法を定めた法律を電子帳簿保存法(正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」。略して電帳法とも。以下、電帳法)といいます。簡単に言うと「文書管理を紙ではなくて電子で行いたい場合の要件を定めている」国の法律です。
電子帳簿保存法上、電子データによる保存は、大きく次の3種類に区分されています。
(1)電子帳簿等保存:電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存
(2)スキャナ保存:紙で受領・作成した書類を画像データで保存
(3)電子取引:電子的に授受した取引情報をデータで保存
税務申告において帳簿や関係書類の保存が必要となるため、上記の3種類の文書に関して、電帳法では以下の4つの要件を全て満たさなければなりません。
電子帳簿保存法上のシステム要件 | |
真実性 | 請求書などの重要書類(電子データで保管している)が本物であるかどうかを証明できること。真実性を証明するには、タイムスタンプが付与されていること |
検索性 | 契約の相手、日付、金額で検索したときにすぐに取り出せる状態にしておくこと |
(関係)書類の添付 | 電子データ(電磁的記録)を保存しているパソコンなどに、電子データを閲覧できるアプリケーションなどをダウンロードしていること。また、パソコンと14インチ以上のカラーディスプレイの操作説明書を備え付けておくこと |
見読性 | パソコンなどで該当の文書をすぐに表示できる状態 |
電帳法の2022年1月改正のポイント
まずは改正のポイントの前に、電帳法上の真実性要件の1つであるタイムスタンプについて、簡単に説明をします。
タイムスタンプ
タイムスタンプとは、タイムスタンプに刻印されている時刻以前にその電子文書が存在していたこと(存在証明)と、その時刻以降文書が改ざんされていないことを証明する(非改ざん証明)仕組みです。もともと電子契約の仕組みの中で使われていたもので、例えばA社と B社が契約に合意締結した瞬間や、PDFを取り込んだ瞬間に時刻認証局(TSA)(※)と呼ばれる機関がグリニッジ標準時でタイムスタンプを付与します。
タイムスタンプに関しては書類を受け取ってから3日以内に、タイムスタンプを付与しなければなりませんでしたが、今回の改正では、タイムスタンプの付与は書類を受け取ってから2カ月と7営業日以内に変更となりました。また、電子取引の取引情報を反映した電子データに関して、改ざんや隠ぺい、その結果生じた申告漏れなどが発覚した場合、ペナルティとして重加算税が10%課されます。
※時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority):一般財団法人データ通信協会の「タイムビジネス信頼・安心認定制度」により認定を受けた機関。
電帳法の2022年1月改正のポイントを、次に紹介していきます。
電子取引
電子取引とは、オンラインでの電子文書のやり取りを指します(電子帳簿保存法2条6号)。具体的にはメールに請求データ、発注書、納品書といった国税に関する書類をPDFにして添付後に送った、あるいは受け取ったものです。
この電子取引区分において、現行制度上はデータで受け取ったものを、出力して紙での保管が認められておりました。が、改正によってこの紙保管が廃止となっております。要するに、データで受け取ったらデータでの保管が必要となり、となると同時に、電子帳簿保存法が定める要件に従わないとなりません。例えば真実性要件の1つであるタイムスタンプ付与や、検索性要件として、契約・取引相手の会社名、日付、金額での検索が出来る状態での保管が必要となります。
ただこの部分に関しては、まだこの改正内容が広く周知・認知されていない現状況を踏まえて、2年間の猶予期間を設けるという発表がありました。これにより、直ちに青色申告の承認取り消し等、罰則をうけることはございません。とはいえ、2年後に電子データ保存義務化になることは変わらないため、なるべく早い段階からデータ保存への対応が求められます。
スキャナ保存
紙で領収書や請求書などの重要書類は受領後スキャンしますが、これまでスキャン後も紙の書類は保管しておかなければなりませんでした。また、スキャン前の紙原本に署名も必要でした。
しかし、今回の改正ではスキャンデータにタイムスタンプが付与されたら、原本である紙の書類は破棄できるだけでなく、紙原本に署名も不要になりました。ただし、スキャンデータに関して改ざんや隠ぺい、その結果生じた申告漏れなどが発覚した場合、ペナルティとして重加算税が10%課されます。
突合(定期)検査
突合(定期)検査とは、書類を受け取った人とは違う人が、紙原本と電子化した領収書や帳簿のデータと突き合わせる(=突合)検査で、年に1回実施することが定められていました。
これまで、タイムスタンプで非改ざん性を保証されているにも関わらず、電子データと原本(紙の書類)の突合検査が年に1回必須でしたが、今回の改正により不要になりました。
対象となる書類
以下は、改正電帳法の対象となる書類の一例を挙げた表です。NINJA SIGNを含め、さまざまなベンダーが各種重要書類の電子化に対応したサービスを開発・リリースしており、利用目的に合わせて、適切なサービスを選ぶことが大切です。
電帳法改正と電子契約サービスの深い関わり
電子化した書類や帳簿に対して、真実性担保の簡単な手段としてタイムスタンプ付与について電帳法改正のポイントのところでご紹介しました。ただ、タイムスタンプを付与できるサービスというのは、一般的にファイルを保存するGoogleDriveやDropboxといったストレージサービスにはついていません。タイムスタンプを付与できるNAS(ネットワークHDD)も確かにあるんですが、それだと結構高く付きますし、持ち運びにも不便です。
ということで結論どこがいいのとなると、最近よく出てくるのが、電子契約システムです。電子契約システムだったら電帳法の要件はクリアしています。例えば、もともとタイムスタンプを自動的に付与する機能は、電子契約や電子署名サービスでは通常の仕組みですし、文書の検索性に関しても最初から機能として備わっています。また、受け取った文書だけでなく、自社で契約書などの文書を電子で作成・送信・締結をするとなると、それらの電子文書もまとめて一元管理できるのも電子契約サービス以外に例がないんですね。
さらにこの2年、国はDX化の一環として電子契約や電子署名・電子サインに関する法律を改正してくれました。それにより、電子契約や電子署名、電子サインでも、法的に有効であることが認められています。
今回の電帳法改正と電子契約サービスのつながりが深いのは、そういった背景があるからなんです。
今からでも間に合う!電帳法への対策を
これまで、紙と電子の両方で行ってきた文書管理。しかし紙の書類には、濡れや汚れ、破れ、紛失といったさまざまなリスクがあります。一方、電子の書類であればそういったリスクを回避できる上、書類を探すのも管理するのも簡単です。
新型コロナウイルスの流行が収束しても、業務改善の動きが止むことはなく、文書の電子化の流れも、今回の電帳法改正を機に一気に加速することが予想されます。製本作業や印紙貼り、郵送のための宛名書きなど、人間でなくてもできる雑務をITに任せることで、そこにかけていた従業員やコストなどの経営資源を他の業務に充てられます。
今回の電帳法改正を良い機会と捉え、文書を管理する電子ツールの導入をぜひご検討ください。
お問い合わせはこちら(共催先:IY Holdings)
https://iy-holdings.com/