イベント・セミナーレポート

地方はビジネスチャンスがいっぱい!地方創生のカギを握るのは誰だ?

8月28日、SENQ霞ヶ関において「47都道府県を回る藤野英人氏、山口豪志氏、佐別当隆志氏らが語る!ボトムアップではじめる地方創生とは?」と題し、イベントを開催した。’ 現場からボトムアップで地域を活性化していくために必要なこと ‘をテーマとし、レオス・キャピタルワークス株式会社の藤野英人 社長、株式会社54の山口豪志 社長、シェアリングエコノミー協会 事務局長 佐別当隆志 氏をゲストに迎え行なった。参加者は80名を超え超満員の中、藤野氏の講演からイベントがスタートした。

「地域の未来を創る成長企業の見つけ方」

スピーカー:藤野 英人氏

(写真)藤野氏
藤野氏は資産運用会社レオス・キャピタルワークス株式会社の代表取締役社長・最高投資責任者。2003年に創業した後、株式投資信託「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」を運用し、高い評価を受け受賞歴も多数ある。年間120日以上地方を行脚し、地方企業に着眼して全国各地を回り、投資をしている。

「失われた10年」の実態

2002年12月〜2012年12月の1年間で株価が上昇した企業は、上場企業1705社のうち実に全体の70%に上る。従業員数・営業純利益もこの10年間でそれぞれ約2倍となっていた。つまり、「失われた10年」の中でも、成長している会社はたくさん存在していたということである。上場企業のうち大型企業の株は全体の4%に対し、中堅・中小企業の株は96%を占めていた。

また、東京の中心(本社が千代田区・中央区)にある企業とそれ以外の企業とでは後者の方が株価の伸び率は高い。東京の企業に地方の企業が吸収されているということはなく、実は地方の上場企業の方が元気で、過去10年間を見ても大幅に成長しているのである。

中堅・中小企業にあるチャンス

大型株トップ30に入るような大手企業においては、30代の若い役員はほとんどいないと言う。一方で中堅型株の中小企業は、若い役員も多く存在しており、年収が高い人も多い。また中堅企業では働いていくうちに企業の中心役員になっていくことも比較的可能である。つまり就職に関して言えば、大手企業に就職することが必ずしも安心で幸せであるとは言えず、中小型企業にも良い点が多く、今の日本にはチャンスが沢山存在しているのである。そして今の日本はチャンスに恵まれているという認識を広めたいと藤野氏は語った。
また、日本の株式市場の成長率を時価総額で分類した図で見てみると、大型株トップ30を始めとした上部に比べ、下部の方が成長率は高い。つまり、ひふみ投信を運用する藤野氏から見ると、中小企業は投資できる価値が多くあるということである。 大企業だから安心・偉いというのは偏見であり、中小企業にも十分に成長するチャンスがあると言える。

地方で勝てれば全国にも挑める

東京発で巨大企業へ成長したのはセブンイレブンや無印良品などがある。
しかし、ナショナルブランドのそのほとんどが実は地方発である。例えばファーストリテイリングは山口県、コメリは新潟県、ニトリは北海道、CoCo壱番屋は愛知県から発祥している。地方にはナショナルブランド予備軍が多く眠っていて、地方企業から上場、全国展開チェーンへ成長した企業は多く存在している。

地方でビジネスモデルを設計し、勝てる力があるということは、全国で戦える力もあるということである。なぜなら東京の市場よりもそれ以外の地方の市場の方が大きいからだ。特定の地方だけでなく他の地方でも勝つことができる力があれば、全国で勝てる可能性も十分に有る。また、地方はコストが安価なため挑戦しやすく、地方で挑戦をしていくことは有利な点である。

藤野氏が投資したいと思えるような経営している会社のポイントは大きく3つ。
1.意思決定がシンプル
2.目線が長期
3.徹底した顧客目線
これらは伸びる会社の特徴であり、大企業にはあまりない特徴であると言う。

例えば、富山県にある朝日印刷は、医薬品や化粧品の箱の印刷を行なっており、売上・株価を伸ばし医薬品向け印刷では業界トップ企業となっている。使用上の注意などが法に基づく必要があるため特化した印刷を行なっているが、世間の美と健康に対するニーズに注目したことで、箱印刷の需要も伸び続けているとのこと。

また栃木県のマニー株式会社は、注射に使用する針などを制作している医療機器メーカーである。この会社は世界一の品質の針を目指す、ニッチ市場のみ行うことに焦点を置いている。岩手県の薬王堂は、人口減少と高齢化に対応した店づくりを目指し、高齢者に優しい環境を提供することに特徴がある。

このように地方にも魅力的な会社は多く存在しており、実際に会社自体が伸びている現状がある。

地域経済活性化のキー「ヤンキーの虎」

藤野氏は、「ヤンキーの虎」が今後の地方経済の鍵を握ると言う。
「ヤンキーの虎」とは、建設業など地場産業を軸にコンビニ、介護、中古車販売、飲食などをミニコングロマリット化し、確立している会社のことを指す。
この会社群は今後地方創生において巻き込んでいくことが非常に重要なポイントであると言う。

では「ヤンキーの虎」とはどんな会社や人を指すのだろうか。
藤野氏は
・年齢だけではない精神的な面も含めた若さ
・チャレンジ精神
・情報収集納力
・仲間意識
・消費が健康的でスマート
を挙げた。
彼らが得意なこととしては、地縁血縁と人材育成、ミニコングロマリットの形成などがある。

「ヤンキーの虎」の未来

現在、地方のマーケットは縮小を辿り、大手企業が撤退していく一方で、「ヤンキーの虎」は成長を続けている。だが、藤野氏は、2025年頃には「ヤンキーの虎」同士の競争が激化するだろうと予想した。
そして、この時期に負けないために上場を狙ったり、上場企業と化した「ヤンキーの虎」に対してシミュレーションをしておいたりする必要があるとした。

「ヤンキーの虎」に次ぐ「社員の虎=トラリーマン」

東京を中心として先進的な技術とビジネスで成長する企業・起業家である「ベンチャーの虎」、先に記した地方でミニコングロマリット化し成長する企業・起業家である「ヤンキーの虎」。
この重要な二者に加えて、今後は「社員の虎=トラリーマン」も重要になってくる。これは会社員や公務員でありながら会社内で自由に活動し、顧客のために働く社員を言う。起業して「ベンチャーの虎」に、地方に出て「ヤンキーの虎」になることを目指すのも良い。ただその前に一度、会社の中で暴れる「社員の虎=トラリーマン」を目指すのはどうだろうかと藤野氏は言う。
ベンチャーや中小企業の成長の可能性を担うような人材や会社が今後望めるのと同様に、大企業もこういった「社員の虎=トラリーマン」のような存在が会社をより良くしていく鍵となり得る、と三者の重要性を提示し、講演を締めた。

ボトムアップで始める地方創生とは?

パネリスト:藤野英人氏・山口豪志氏・佐別当隆志氏
モデレーター:森戸裕一氏

続いて、株式会社54の山口豪志氏、シェアリングエコノミー協会事務局長の佐別当隆志氏、モデレーターにJASISA代表理事の森戸裕一氏を加え4名によるトークライブを行なった。テーマは「ボトムアップして始める地方創生」。
山口豪志氏は株式会社54の代表取締役社長であり、2015年に会社を創業。イベントやセミナーでの登壇実績も多数。
佐別当隆志氏は株式会社mazelの代表取締役 兼 シェアリングエコノミー協会の事務局長を務める。2016年に協会を設立し、2017年内閣官房よりシェアリングエコノミー伝道師に任命された。森戸裕一氏はJASISA代表理事を務め、全国で地方創生や企業支援を行なっている。NPO活動としては地方活性化支援や次世代人材育成を始めとした活動をしている。

47都道府県を回る目的は何か?

藤野氏)各地域に強みを生かして全国や世界に出られる会社を見つけたい。
地域独自の会社をやるよりは、地域に希少性のある事業をやることが成功の解なのではないか。
まずは四季報で数年間を見て伸びている会社を見つける。無駄撃ちしてもいいから回っていくと自ずといい会社に出会える。

どうやって有望な中小企業を見つけるのか

藤野氏)自分が信頼してくれる人が紹介してくれた企業を当たる。自分のネットワークを広げ人脈を増やしていくことで、 継続性と信頼性のある繋がりを作ることができる。

(写真左から)佐別当氏、森戸氏

地方企業の成長が多い一方で、地域の疲弊と縮小の関係性とその要因は何か

藤野氏)地方の上場企業と非上場企業には格差がある。
成功している所ほど伸ばしたいと思っていて、 成功していない所ほど伸ばしたいと思っていないのが事実。
伸び率にも差が出るが、静かにしていたいという権利がある中でそれらを無理やり伸ばす必要性はない。
しかし結果として地域間格差は生まれてしまう。

佐別当氏)チャレンジができる場と反対がありできない場で二分するだけではなく、新しく参入するにあたっては理解を求める努力をし、理解を得たい対象と地域とを橋渡しをするような存在を目指していくことが望まれる。
また、シェアを活用しながら経済の仕組みを作ることができるかが重要になってくる。

2025年に虎になっている人は、今現在既に虎になっているか

藤野氏)強い確信を持ち、存在していると想定しながら探すことが大事。
将来なり得る人は、地域の中に既にネットワークを築いている人が多い。
まずは
・いると思うこと
・弱いネットワークでも会い行き、ネットワークに対して自分自身が貢献すること
がポイントになる。

(写真左から)藤野氏、山口氏

地方のシェアエコの未来とは

佐別当氏)地方で一定程度マーケットとして存在しうるところでは工夫すればビジネスはしやすい。限界集落のような何も無いところは今のままではシェアエコを立ち上げるのは難しい。地方の解決を一緒にしていくような企業はこれから伸びていくのではないか。そのために 地域との信頼関係は重要。

山口氏)マイクロアントレプレナーとして活躍できる人の成長性が見込めるのでは無いか。

藤野氏) 自分で所有することを望まない若人が多い。抱え込むのはお洒落ではないためなるべく少数を所有し、それ以外のものはシェアする。
スマホやコンビニがあれば良いような社会になったからということも要因になっている。

(写真左から)山口氏、佐別当氏、藤野氏、森戸氏

まとめ

今回のイベントでは、地方企業の現状とこれからの成長についてのポイントを多く聴くことができ、参加者も熱心に耳を傾けていた。 地方企業の秘めたる可能性を認知すると共に、それらをどう活かして成長させるのかが今後の地域経済の活性化の重要なポイントとなる。これからの地域と企業の成長に期待したい。


執筆者:
一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会 村上