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中小企業のDX推進のカギは目的志向と逆算思考、外部連携-『イラストでわかる!DXで変わる100の景色』出版記念特別対談:森戸裕一×本間卓哉〜-

中小企業は、働き手の高齢化や後継者不足など深刻な課題を抱えている。一方、デジタル技術は目覚ましく発展し、ビジネス環境は変化し続けている。この環境下で中小企業が生き残るには、DX(デジタルトランスフォーメーション)による変革が欠かせない。

DXをテーマにした書籍『イラストでわかる!DXで変わる100の景色』の出版を記念して、書籍の監修者一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事の森戸裕一氏と一般社団法人IT顧問化協会 代表理事本間卓哉氏による対談が実施された。

対談では、DX推進のポイント、支援機関の役割、地方創生とDXなど、中小企業のDXに関する示唆に富む意見交換がなされた。

DX推進のポイントは「目的」と「逆算」

まず森戸氏は、DX推進にあたって大切なのは「目的」を明確に定め、そこから逆算することだと語る。単なるデジタル化やIT化ではなく、組織やビジネスモデルそのものを変革する DX ならではの考え方だ。

本間氏もこれに同意し、DXとは業務プロセスの単なる効率化にとどまらず、会社の目指す目的・目標を定めた上で、そこから現状とのギャップを埋めるために取り組むべきことを逆算していくアプローチが重要だと指摘する。

支援機関にはDX推進が求められる

次に、支援機関がDXを推進する意義について議論した。

森戸氏は、従来の支援機関の取り組みは企業の現状把握と改善提案が主体だったが、DXの観点からはむしろ企業の目指す目標とそこからの逆算を助けるべきだと主張。本間氏も、支援機関自体がデジタル化を推進することで、相談内容の多様化に対応できる体制を整える必要があると述べた。

DX時代に求められる支援機関とは、単に教え導くコンサルタントではなく、企業とともに新しい価値を生み出す「プロデューサー」としての役割を担うことができる存在なのだ。

地方創生にもDXは欠かせない

地方創生においても、DXの推進は重要なカギを握ると両氏は口をそろえる。

森戸氏は、スマホやクラウド、AIなどの技術を使えば、地域課題の解決自体をビジネスとすることが可能になると指摘。過疎化や高齢化が進む地方こそ、DXを活用した新しい産業や就業の創出が期待される。

本間氏も、インバウンド需要取り込みなどを例に挙げ、デジタル技術と既存事業を融合させることで、地域が直面する諸課題の解決策を見出すことができると述べた。

少人数で成功するDX

最後に、少人数体制の中小企業におけるDX成功の秘訣が議論された。

本間氏によると、

DXを推進するための小規模の組織には、1目的を明確化、2意思決定できる権限、3外部人材との連携—の3つが欠かせないという。

目的と権限があれば小規模でもスピーディーに動けるが、知見不足は外部と連携することで補完できる。デジタル時代に即したアプローチだ。

森戸氏も、ワクワクする目標を掲げ、外部人材と手を取り合うことがDX成功への近道だと述べた。

まとめ

対談全体を通して、DX推進に正解はなく、目的と手段を見極め、柔軟な発想で取り組むことが重要だという点で一致していた。デジタル時代に適応していく中小企業にとって、活路を見出すヒントとなる対話だった。