全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月13日に行われた郡山大会より、株式会社ユニフォームネットの事例をご紹介します。営業支援システムの導入により、それまでの属人的な営業スタイルからチェンジ。リーマンショック・東日本大震災からのV字回復を遂げ、2012年から8年連続で過去最高売上を更新中です。どのような取り組みを行ったのでしょうか。
株式会社ユニフォームネットの概要
■法人名:株式会社ユニフォームネット
■事業内容 :業務⽤ユニフォーム、関連品の企画・販売
■設⽴:1975年(昭和50年)3⽉
■従業員数: 78名(2020年3月1日現在)
■公式WEBサイト:http://www.uniform-net.jp/
1975年創業の株式会社ユニフォームネット。創業当時から作業服などの“ユニフォーム”を専門に扱ってきた専門商社です。
現在は関東圏と福島県に拠点9ヵ所を展開する地域密着型のサプライヤー(100%仕⼊商品⾃社商品無し)。年間取引は6000社以上、販売数100万点を超えます。営業スタイルは典型的な“PUSH型”(訪問営業)でこれまで展開してきました。
事業承継の背景
しかし、2009年のリーマンショック、2011年の東日本大震災により赤字に転落。
経営危機を迎えた2012年に、事業承継を行いました。
事業承継における経営課題
事業承継をしてみて判明したのは、いわゆる「ゴリゴリの営業会社」であったために、営業マン個人の勘と経験に頼った「属人的な営業スタイル」だったことです。
売上⾼、粗利は把握できるが、売上の構成やお客様の特徴などの顧客情報がつかめていませんでした。
また、拠点間の情報共有も何もできておらず、すべては現場任せだったのです。
もちろん、新人教育もどうしていいかわからない状況でした。
そこで、これまでの営業スタイルから脱却することを経営課題に取り組み、SFA(Sales Force Automation・科学的な営業)を目指して営業支援システムを導入しました。
SFAで取り組んだこと「日報改革」
SFAには様々な機能がありますが、まず取り組んだのは日報です。
グループウェア(NI Collabo 360)については実は15年前にすでに導入していましたが、メール機能などの利用に留まっていました。
日報イメージ(ビフォー)
こちらは、改革前の以前の日報のイメージです。
報告する内容がフリーフォームなので、毎回作文をしなくてはなりません、
営業マンにとって手間のかかる作業となっていましたし、必要項目に漏れが生じる元もありました。
日報イメージ(アフター)
そこで、上司が知りたい情報を項目化。顧客分類や案件分類などの項目を、チェックボックスや プルダウンメニューで選択できるようにして、入力の簡素化を図りました。
入力が楽になって業務時間が大幅に短縮、過去のデータをすぐに出せるので、報告で同じことを何度も言わなくて良いなど、営業マンには好評でした。
しかし、システム化によって、これまで業務報告をしなくて良かった、日報を作ったことのない管理職や幹部社員が日報作成に抵抗する問題が生じたのです。
そこで、
・トップ営業マンを営業の現場から外し、“専任の管理者”にする事で会社の本気度を⾒せた。
・移行期間を取り、ステップを踏んで少しずつ入力を促す
という方策をとりました。
ユニフォームネット流“ビッグデータ” 活⽤術
こうして、毎日営業マンがコツコツと日報を入力したことにより、営業活動のビッグデータが集まりました。
この数字を活用することで、営業活動が進化したことを3つの段階を踏まえて解説します。
STEP1 情報の蓄積と共有
(1)顧客分析×案件分類による「売上構成比」
まず、新規や既存といった顧客分類と、案件分類を掛け合わせてみると、
新規の案件、既存のお客様による新規の案件、そしてリピートといった売上構成比がわかります。
(2)売上構成比×産業分類による「業種別売上高」
さらに産業分類を掛け合わせることで、業種別の割合も出すことができるのです。
STEP1 情報の蓄積&共有による効果
情報を蓄積し共有することで、これまでの勘と経験による営業スタイルからチェンジ。
人的要因による機会損失を防ぐことができ、売り上げを伸ばすことができました。
STEP2 情報の分析
次に取り組んだのは、情報の分析です。
新規や既存といった顧客分類に受注確度を掛け合わせることで、受注率と失注率がそれぞれの案件別にわかります。
(1)売上構成比×受注確度による「案件別受注率」
新規案件・既存新規・既存リピートの中で、最も失注率が高いのが新規案件ですが、それでも約4割の受注率があることがわかります。
(2)受注率把握による失注への恐怖の克服
新規受注率4割といえば、イチロー選手の打率を超えるのです。
ベテランの営業であっても、全ての新規案件を獲得できるわけではありません。
新規案件の失注率は他の案件に比べて高いかもしれませんが、数字を積み重ねることで必ず結果がついてきます。
確率という数字のモノサシを得たことで、営業マンを失注の恐怖から解放することができました。
STEP2 情報分析による効果
こうして結果から得られた情報分析をすることによって、自社の強みである勝ちパターンも知ることができ、さらに売り上げを伸ばすことができました
STEP3 行動の分析
最後は、得られた情報から営業マンの行動の分析です。
顧客分類×業務分類による「目的別訪問率」
顧客分類に業務分類を掛け合わせると、拠点ごとの営業マンの行動パターンが見えます。
拠点を比較することで拠点ごとの課題が一目でわかるのです。
例えば、C支店では集金・納品にかかる率が16%もありました。本来の営業活動にあててもらうため、運送便による納品・集金を銀行振込に変えてもらうことで、営業効率がアップしています。
STEP3 行動分析による効果
行動分析により、拠点・役職・個人別にそれぞれの営業活動を分析することで課題を「見える化」。改善することで売上を伸ばすことができました。
営業活動のDXによる効果
こうして、2012年の事業承継から8年連続で過去最高の売上げを記録。
10年で売上を2倍にするということができたのです。
SFAで「⼈材を育てやすい環境」をつくる
さらに、SFAの活用により、管理職は明確な指示が出せるようになるし、部下は行動すべきことがわかりやすくなったため、人材を育てやすい環境になりました。
結果、2011年は23人だった営業スタッフが、2020年には44人とこちらも約2倍の社員数となっています。
アフターコロナ時代に向けてオンライン面談の導入
さらに、営業活動を進化させるため、オンライン面談を導入しました。ベルフェイスのシステムを使っています。
営業マンが電話をかけたのち、お客様をHPに誘導します。オンラインルームに入っていただくことで、オンライン面接ができます。
お客様に準備していただくものはありません。メールアドレスも不要です。
接続すると、オンラインで営業スタッフが対応します。画面を通して会社や商品の説明が可能です。
オンライン面談はまだ導入して日が浅いのですが、初回面談のデータです。
オンラインによる初回面談の件数が前年同期比で8.16倍の伸びとなっています。
そして注目してほしいのは、直接訪問の数も1.51倍に伸びている事です。
この件数が、実際の売上につながっているかどうかという分析はこれからです。しかし、数字を見る限りでは、オンラインとリアルという両方の接点を持つことでお客様の選択肢が増え、面談(商談)へのハードルが下がったのではないかと考えています。
さいごに
現在はDX(AI,ビックデータ,IoT,ロボットetcによるデジタルトランスフォーメーション)と盛んにいわれ、多くのクラウドサービスが登場しています。
中小企業は自社の強みを生かすために、自分たちに合ったクラウドサービスを見つけ活用し、時代の変化に対応していく必要があるのではないでしょうか。
株式会社ユニフォームネットは、ユニフォームの営業活動とデジタル技術を融合させることで、人々の生活をより豊かにできる企業を目指していきます。