事例

株式会社ヒラノ「3DからつながるDX」

全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。

2020年11月13日に行われた郡山大会より、株式会社ヒラノの事例をご紹介します。金属加工を行う株式会社ヒラノは、2025年問題を目にしたことを契機にクラウド化に取り組みはじめ、情報の一元化を図るソフト「What’s No.」でオフィスワークにおける雑務を6000時間も削減しました。2Dを3Dデータに変換する自社開発サービス「ソリッド」を展開、クラウドを活用することでインドネシアなど海外にも事業を展開しています。そのイノベーションの軌跡をご覧ください。

株式会社ヒラノの概要

■法人名:株式会社ヒラノ 

事業内容 :金属加工の一貫生産 (レーザ切断、ベンディング、機械加工、溶接、塗装)

■設⽴:1971年04月01日

■公式WEBサイトhttps://www.hirano-web.com/

■YouTubehttps://www.youtube.com/user/GREENSTYLE100

■Instagram:https://www.instagram.com/hirano_factory/

千葉県旭市に本拠地を置く株式会社ヒラノは、金属加工の会社。主に板金加工を手がけています。板金加工とは、金属をレーザーで切断して曲げて溶接したりなどする処理です。物作りには欠かせない様々なパーツを作っています。


こちらの2名はインドネシアのビジネスパートナー。

株式会社ヒラノにおける2D図面を3Dに変換するサービス「SOLID(ソリッド)」を運営しています。

なぜ、株式会社ヒラノはクラウドだったり、海外展開を手がけたのか?次項から説明していきましょう。

2025年問題

きっかけは8年前に目にした2025年問題の記事です。

そこには、⽣産労働⼈⼝の減少により、2025年には1.2人で高齢者1人を支えるという厳しい現実がありました。

これから、社員やその家族はどうなるんだろう?日本はどうなるんだろう?と考えるようになったのです。

それまで、現状維持で良いのでは?と思う部分ももちろんありました。

しかし、何かを変えないといけないと、たくさん本を読み、様々なことを試みました。結構失敗もしました。

その結果、自然とバラバラだった点が繋がり、やるべきことが見えてきました。

クラウド化における3つの目標

クラウド化において、行うべきことに焦点をあて、3つに絞りました。

・情報の一元管理

・外段取りの推進

・第二次ロボット化

まず雑務を減らし、工場以外に人が集まりやすい場所に営業所を置きます。さらに、社員の負担を軽減するため、工場の自動化を構築するという目標を立てました。

現状維持で保守的な考えをする人がほとんどである中、このようなイノベーションを起こすことはかなり大変です

しかし、これからの事がわかっていながら行動に移さなかったら、この先もっと大変になるだろうと考えたのです。

情報の⼀元管理(雑務の削減)

情報の⼀元管理・・・・・分析

まず2015年から情報の一元管理をはじめました。

そのために、業務を分析していて気がついたことがあります。これまでは実務の生産性を上げることばかり考えていて、雑務を見落としていたのです。

雑務は、表の右にあるように「業務内容の説明がつかない業務」のため、見落とされていたのですが、これが実務を行う時間を圧迫していました。

そこで、雑務を削減することにより、実務の時間を増やすことで生産性をあげるという試みをはじめたのです。

⾼機能検索付き情報管理ソフトの開発

確認作業の効率化のため、会社の情報をクラウドに上げてグーグルのように情報を簡単に取り出せる仕組み化に取り組みました。

そのために開発したのが「What’s No.(ワッツナンバー)」です。

従来は個々の担当者が情報を管理していたため、保管場所を確認する作業や紙ベースの書類を探す時間が生じていました。そこで、社内の情報は「What’s No.(ワッツナンバー)」に一元管理させ、探したいときには検索することができるようにしたのです。

情報の⼀元管理・・・・・cloudの活⽤①

「What’s No.(ワッツナンバー)」の導入により、探す・確認する・整理するという

るという雑務にかかる時間を大幅に削減することができました。

現在では、図面・見積もり書・残業情報・カタログなど、さまざまな情報がクラウド化されています。

情報の⼀元管理・・・・・成果

情報の⼀元管理による成果です。

こちらは技術・管理・事務系で集計しました。

(実際には現場でも「What’s No.(ワッツナンバー)」を使っているため抑えた数字になっています)

事務系の社員15人から、個々で管理していたデータを「What’s No.(ワッツナンバー)」

に吸い上げたことで、およそ6000時間のオフィスワークの雑務を削減することができたのです。

外段取りの推進(⼯場外での業務の充実化)

つぎに行ったのが、工場以外で行う業務の共有化です。在宅など違う場所での仕事ができる環境を作ることにしました。

アプリケーションソフトの共有化

取り組みを開始したのは、2017年頃です。

外段取りのネックとなったのはソフトウェア。PCそれぞれにソフトウェアが導入されていたため、このソフトウェアをシェアできないと外段取りはできません。

外段取りの推進・・・・・cloudの活⽤②

そこでクラウドを活用し、本社に生産管理や3DのCADなどをインストールした10台のサーバーを設置。これを仮想化しインターネットを介してソフトを使える仕組みを構築しました。

ソフトをクラウド環境でシェアすることにより、どこでもインターネットの環境さえあれば安価なパソコンでもソフトを使用することができるようになったのです。

この対応は、働き方改革やWITHコロナの対応にも非常に役立ちました。人材確保もでき、主婦の方でも働きやすい環境を作ることができたのです。

外段取りの推進・・・・・cloudの活⽤①+②

株式会社ヒラノでは、2年前よりグーグルのアプリケーション「Googleハングアウト」を使用して現場に端末を置き、web でコミュニケーションを取り情報・ソフトをシェアしています。

お客様から受けたオーダーを、本社から生産拠点に指示、必要な業務や、見積・図面。生産管理のマスター登録などを行い、海外には3Dのオーダーをかける流れです。

オフィスワークの上流の作業を分業し、国内国外で何百というデータのやり取りが行われますが、それら全てがクラウドと Webで対応しています。Googleハングアウトでメンバーもつながっているので、業務の流れも確認が可能です。

第二次ロボット化・・・・・cloudの活⽤①+②

さらに、最後に本社で加工、編集して工場の自動ラインに入っていきます。

ニューノーマルなサイバーファクトリーを作り、ロボット化をはかっているのです。

新たな挑戦(SOLIDの開発) ・・・・・cloudの活⽤③

さらに、クラウド活用による新たな挑戦です。

冒頭に出てきた「SOLID(ソリッド)」という管理ソフトを構築して、2Dを3 Dモデル・データに変換するサービスを展開。

2 D 図面ファイルをソリッドにドラッグ&ドロップするだけで3Dモデルにすることができる仕組みです。

進捗状況もわかり、千葉オフィスで精査した後、3Dデータと検査図面が出力できます。

クラウド活用の仕組み化と新サービスの検討

経営者間の情報交換でクラウド化の経緯を話すと、実は同業他社でも同様の悩みを与えていることがわかりました。

そこで、他社でも使える仕組みを作り出し、現在では9社で活用されています。

汎用化するためにはより一層のアップデートが必要なため、特に営業はしていませんが、問い合わせが増えていっているのは事実です。

他にも、材料メーカーや商社などからもコラボレーションの話があるため、現在、新しいサービスの開発を検討しています。

3Dデータから繋がるDX ・・・・・cloudの活⽤①+②+③

最近ではAI やIoT が世間の注⽬を集めています。視点を変えて考えてみれば、先ずはムダな時間を省き、必要な作業にどれだけ時間を使えるかということです。

自社で2025年対策のために構築したクラウド活用を、同業他社でも活用してもらえるのは大きな喜びです。

今後も日本の製造業の発展に寄与できるように、さらなる活用を進めて参ります。