事例

人口減少社会に介護経営をリデザイン -あきた創生マネジメントの革新的ワークスタイル改革

日本では急速な人口減少と高齢化が進み、要支援・要介護者も年々増加傾向にある一方で、介護に従事する人手不足は深刻化しています。今後、要支援・要介護者のさらなる増加、生産年齢人口の減少により、高齢者1人を若者1人が支える時代が来ることが予想されており、介護人材の確保は喫緊の課題となっています。

こうした課題に対して、秋田県内で運営している介護施設で、デジタル技術の導入や海外人材の受け入れなどの取り組みを積極的に行っている、あきた創生マネジメントの事例をご紹介します。

背景:秋田県の人口動態と労働力不足

株式会社あきた創生マネジメントは、「人口減少社会に介護経営をリデザイン」をパーパスに掲げて2011年に創業。以降、秋田県で、介護事業所の開設・運営、M&Aを続けてきました。2024年9月現在、グループ全体で67名のスタッフがいて、うち14名が海外人材(グローバルメンバー)です。

秋田県は深刻な人口減少と労働力不足に直面しており、少子高齢化も急速に進行しています。

高齢者が増加し、介護保険利用者の需要も高まる一方で、それを支える介護従事者の確保は年々難しくなっています。外国人介護人材の受け入れ数に関しても、秋田県は都道府県の中でも低い県の一つで、介護事業所の閉所も相次いで起きています。

株式会社あきた創生マネジメントでも、2017年あたりから中途採用、新規採用ともに応募者がなく、残業やシフト変更など現場の職員にも負担を強いてしまうことも増えていました。

そこで、介護人材不足という課題に対して、人口推移と価値観の変容、地域と多様に関わる関係人口を意識し、関係・きっかけづくり、多様な働き方、テクノロジーの活用、グローバルメンバー、海外人材の5つのキーワードを掲げて、2017年からデジタルの導入、2019年からは海外人材の受け入れをスタート。事業の変革に伴い、全職種の業務棚卸しを実施しました。

業務棚卸しと業務の可視化

業務の棚卸しにあたり、あきた創生マネジメントが注目したのは、全ての業務の可視化です。

日本人同士であれば、「このくらい」「何となく」といった、言葉にして説明しきれない部分は、見聞きしながら覚えてもらうことができます。しかし海外出身者には上手く伝わらないことが多いので、暗黙知になりがちなところを形式知に変換し、業務内容を整理しました。多様な働き方も、副業やリモートワークといったことを社内規定含めて全スタッフと一緒に話し合って規定を作りました。

また、1日のスケジュールや月間・年間を通して、繁閑時間と時期を把握してもらうため、時間軸で業務を細分化しました。

デジタルを活用するための工夫

あきた創生マネジメントは、「人にしかできない業務」と「生成AIなどが代用可能な業務」に、「人にしかできない業務」に分類された仕事の中から、アウトソーシングに依頼できる業務とそうでない業務とで、全ての業務を細分化していきました。

デジタルツールの導入目的や使用シーンなどを定めたガイドラインも策定。

業務ごとにICTツールやアプリを割り振り、運営している介護施設全てで使えるようにしたところ、業務の効率化はもちろん、夜間の業務負荷の軽減、事務スタッフの業務効率、生産性向上にも繋がりました。

デジタルツールに関しては、Doctor Mate(遠隔医療相談システム)や、carecol Labo(ケアコラボ=利用者の生活情報共有システム)、LINE WORKSなどを使用しています。

休暇に関する制度の充実とグローバルメンバー

多様な人材が活躍できる環境づくりのために、全スタッフで話し合い、社内規定を策定しました。週4日・週5日のいずれかを選択できること、休暇制度(週休3日または週休2日制度、リフレッシュ休暇)の改定、社内または社外副業、リモートワークを認めること、勤務間インターバルなどが含まれています。

人材不足に対応するため、海外人材(グローバルメンバー)の受け入れにも積極的に取り組んでいます。インドネシアとベトナムからがほとんどで、来日前には面談や現地案内をオンラインで実施したり、来日後も住まいや日本語のオンライン指導、地域住民との交流、1日のタイムテーブルや仕事における価値観を母国語で共有するなど、言葉も文化も全く異なる日本で安心して働ける環境を整えています。

今後の展望

社内外を問わず副業を認めたり、リモートワークを導入したりすることで、多様な人材の受け入れを実現。業務の棚卸しや可視化が進み、ICTツールやデジタルツールの活用で生産性が向上し、残業時間も減少しました。グローバルメンバーとのコミュニケーションも円滑になり、休暇制度の充実やインターバルにより、スタッフの定着率のアップや人材採用の成功、有給休暇の取得率向上につながりました。

あきた創生マネジメントでは、これら一連の取り組みの成功で得られたノウハウをもとに、さまざまな取り組みを行っています。介護業界全体のDX化を目指し、オンライン勉強会を主催。日本で介護に従事していた海外人材が、将来的には自国での介護業界をリードする人材になる未来を見据えて、自社の経験をSNSなどで積極的に情報発信しています。2021年より他業種へ海外から来たインターンを派遣する「外国人インターンシップ事業」を展開しており、業務の棚卸し・可視化、デジタル化の推進、情報発信を続けながらグローバル事業展開を目指しています。

まとめ

株式会社あきた創生マネジメントは、テクノロジーの導入と海外人材をはじめとした多様なバックグラウンドの人材受け入れに取り組むことで、働き方の多様性の実現や介護業界の人手不足解消だけでなく、全国的にも例を見ない速度で少子高齢化が進み、介護人材の流出が止まらない秋田県の地域活性化や地域社会の発展に寄与しています。今後もあきた創生マネジメントは、、「人口減少社会において、介護経営をリデザインする」というパーパスの実現を目指し、秋田からさまざまな情報発信を続けます。