事例

株式会社ウチダレック「鳥取発砂だらけのDX改革「不動産業界初の週休3日」「1人あたり営業利益2.5倍」の実現」

全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。

2020年11月18日に行われた岡山大会より、株式会社ウチダレックの事例をご紹介します。

人口減少による顧客数減に危機感を感じ、DXを実行。ベテラン社員の強い抵抗にあいながらも、クラウド活用によりブラックボックス化していた業務の可視化と効率化に成功しました。現在では不動産業界初の週休3日を実現。1人あたりの営業利益も2.5倍、経費削減と共に離職率を大幅に下げ、同時に採用力を強化という素晴らしい成果を出しています。IT化・クラウド導入に際して社員の抵抗を不安に思う経営者の方はぜひご覧ください。

株式会社ウチダレックの概要

■法人名:株式会社ウチダレック

事業内容 

・不動産流通(宅地建物取引業)

・不動産管理

・建設・リフォーム

・財産ドック・土地活用

・プロパンガス(LP)販売

・給水装置工事

■創業:1969年7月1日
■従業員数:25名
■公式WEBサイトhttps://www.uchidarec.com/

株式会社ウチダレックは⿃取県⽶⼦市にて創業51年目を数える地域トップシェアの不動産会社です。

現在は2代目が代表取締役を、3代目が専務取締役を勤めています。DXを実行した光治氏の前職は楽天。IT企業の出身です。

DX改⾰の成果

株式会社ウチダレックがDX改革を行った成果がこちら。

不動産業界で唯一、週休3日での業務を行う一方で、1人あたりの営業利益は、改革前の2.5倍の水準にアップという素晴らしい成果を出しています。

さらに、経費の削減は40%。離職率も3%の水準まで下がりました。企業規模から言うと、年に1人退職者が出るかという水準です。

 このように、現在は「成功」という状況ですが、この改革を行うにあたって取り組み前の5年前の背景と、改革中の状況について次項から見ていきましょう。

DX改⾰を⾏った背景

まず、DX改革を行うに至った背景です。

社内環境

当時の株式会社ウチダレックは、そろそろ創業50年を迎えようとしていました。

この頃は、どうしても「歴史が生んだ生産性の低さ」が見られました。特に、不動産業界は「地域密着」。あまり外の情報が入ってこないこともあり、仕事の仕方を変えることは長年なかったのです。

特に、株式会社ウチダレックは地域トップシェアの不動産会社。多少なりとも奢りがあったと分析されています。

 具体的には、ベテラン社員が新卒を怒鳴りつけ「仕事は気合と根性で回す」という空気ができあがってしまっていました。力のある社員の忠誠心は高かったものの、業務の属人化が進んでしまっていたのです。

その結果、「この人がいなかったら会社が回らなくなってしまうから大切にしなくては」と、ゆがんだ権力構造が存在していました。

外部環境

出典:米子市人口動態より(2020年は推計)

もう一つ、改革の背景にあったのは、外部環境です。株式会社ウチダレックのメイン顧客層は20~30代。

しかし、米子市の人口動態を見ると、この層は2005年をピークにすでに25%減少していたのです。つまり、すでに1/4のお客様がすでに消滅してしまっていたという状況になっていました。

さらに、2050年には日本全体の20代30代の人口が2009年比で半分になるという統計も出ていたのです。

この状況を鑑み「同じようなやり方を続けていては企業経営自体が危なくなるのでは」と危機感を覚えたことも、改革を進めたきっかけとなりました。

課題の整理と解決策

起こっていた課題

 課題解決にあたって、どのような課題があるのかを整理しました。

課題としては大きく3つに分けられました。

1つ目は 経営理念の独自解釈

2つ目は業務の属人化

そして

3つ目は、それらに紐付く権力の固定化であると考え、これらの解決策を探ることに。

改⾰のモデル企業

 課題解決のモデル企業として「星野リゾート(https://www.hoshinoresorts.com/

)」を研究しました。

 星野リゾートの経営では「フラット」と「マルチタスク」という概念を非常に強く打ち出しているのが特徴です。

「フラット」とは、社員に情報提供できる基盤を提供することで、社員自身で意思決定ができるようにすること。

そして「マルチタスク」は、社員が複数の仕事をできるようになることを差します。マルチタスクに当たっては、プロセスを定量化して「見える化」することで業務の難易度を下げるという取り組みをしていました。

 他にもいろいろとありますが、この2点を重要なポイントとして取り組むことに。そのためには、IT によるマネジメント不可欠だと考えるに至ったのです。

起こっていた課題の構造整理

課題の構造を課題-解決プロセス-解決策というように整理した図です。

前段の3つの課題についての解決プロセスは、業務プロセスの標準化、そしてプロセスの定量化、業務の仕組み化が必要でした。

具体的な解決策として導き出されたのは

・マルチタスク

・人事評価

・週休3日

という施策です。

解決プロセス、解決策のためにはクラウドのCRMの基盤整備が不可欠であるという結論に至り、ここからクラウドを用いた改革というのをより強めていくことになりました。

改⾰の実⾏、改⾰に着⼿して起こったこと

それでは、実際にどのように改革を行ったのか、そして改革に着手した際に起こったことを順に見ていきましょう。

改⾰の着⼿

まず、一番最初に行ったのは、属人化していたベテラン社員の業務のブラックボックスを開けていくということです。

業務プロセスを標準化、定量化するためには、その業務を知る必要があります。

そのため、専務自ら業務を行い、業務標準を作って業務改善を行うということをひとつひとつ積み重ねていきました。

改⾰に着⼿して起こったこと

しかし、その時に社内のベテラン社員による激しい抵抗が起きました。

 かなり多くのベテラン社員が退職しただけでなく、改革に不安を持つ社員が会社を誹謗中傷したのです。

その結果「後継者がもうダメなんじゃないか」「会社も危ないんじゃないか」という噂が地元で立ってしまい、お客様から直接電話が入り何度も説明に伺うということもしました。

 いま振り返ってみると、彼らの抵抗は「会社の事を考えて」というよりは「現状を変えたくない」ためであったのではないかと考えられます。

事業承継はベンチャー事業

 創業50年もたつと、当初から続いてきたビジネスモデルや業務のやり方を抜本的に見直して変えるべきタイミングです。

 3代目の経営者ともなると、事業承継でなくベンチャー事業を新たに起こす気概で、リスクをとって会社を成⻑させることが使命なのではないでしょうか。

戦略的な改⾰プランを構築

抵抗を受けつつも、大きく分けて2つのフェーズからなる戦略的な改革プランを構築しました。

フェーズ1は営業です。

営業情報のプロセス理論を作り上げ、リアルタイムな情報経営戦略に生かすとともに、属人化してしまっていた「売れる営業の方法論」を会社の資産とします。

フェーズ2は業務改善です。

業務プロセス自体を、基幹のシステムクラウドに落とし込むことで、会社の仕組みとして行動に再現性を持たせ、特定の人に頼らない仕組みを構築していきました。

CRMを業務プロセスに応⽤し全業務を⼀元管理!

そこで開発したのがsalesforce(https://www.salesforce.com/jp/)を使った「カクシンクラウド」です。 

具体的には、不動産業務を一気通貫したアプリケーションです。

店舗に来店するという入口から、退去するという出口のところまでをマネジメントできるようになっています。

足りないところについては、他の様々なシステムをAPIで繋げることで「業務の情報もお客様の情報をすべてこの中で完結させる」というコンセプトでクラウド化に取り組みました。

マルチタスクを実現するための業務のクラウド化

マルチタスクを実現するための業務のクラウド化には、salesforceのKanban機能を活用。

業務フロー自体をクラウド化することで可視化し、「あの人にしかわからない」という状況をなくしました。

このクラウド化により、リアルタイムで営業進捗案件の進捗確認が可能になったため、紙やExcel管理からも脱却することが可能に。

大事なのは、ITに関わる人が社内業務を深く理解することです。特にsalesforceは、カスタマイズ次第で間違った業務フローを作ってしまうこともできます。

そのため、開発担当がきちんと業務の本質を理解し、業務の流れをきれいにしておくことがとても重要です。

業務の標準化を図った上で、IT開発を行えば、誰でもその業務ができるようになりますし、会社として効率的なやり方で回すことができるようになります。

売れる⽅法論をクラウド化・売上UPと社員の成⻑を両⽴する⼈事評価制度

営業の売れる方法も、社員ごとにブラックボックス化していました。

そこで、プロセスに再現性を持たせるため、このノウハウ自体もクラウド化。

売上アップと、社員の成長を両立する人事評価制度も構築しました。

具体的には、歩合給を廃止し、売れる仕組みを作った社員を高く評価するようにしたのです。

salesforceは「見える化」が非常に得意なシステムなので、結果だけではなくプロセスを見える化することで、プロセスに再現性を持たせることができます。

プロセスを可視化するために、クラウドと人事評価をつなげることで、再現性のある営業手法を確立。結果的に売上アップと社員の成長を両立させることができました。

改⾰の成果

再度、改革の成果について見ていきます。

冒頭で示した、週休3日や1名あたりの営業利益2.5倍という定量効果とともに定性的な効果が得られました。

全国誌からの取材-地⽅発のIT⾰新事例として

定性評価のひとつめは「日経トップリーダー」という雑誌にて、salesforceの事例として地方発の IT革新事例として取り上げられたことです。(「会社のデジタル化の進め方 業界の常識、前例踏襲に背を向けよう」)

参考リンク:
https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/NV0423/

社員の反応の変化

そして、当初は抵抗を示していた社員たちの変化。

離職率が減ったこともそうですが、批判の嵐が吹き荒れていた「日報」にて

例えば、

・大幅に業務改善されていることを実感

・以前にも増して安心信頼して業務ができます

といったような前向きなコメントをしてくれるようになりました。

社員の抵抗については、やり方を変える時にものすごく抵抗を受けたのは事実です。

しかし、年間休日が毎年10日以上増えるというような結果が出てくると「社長と専務が言っていることはどうやら正しいらしい」と徐々に受け入れてもらえるようになりました。

採⽤⼒の強化

 さらに、社員の採用力も非常に高くなり、他社と競合しても勝てるようになりました。

 先日のマイナビセミナーでは、参加者の半分が株式会社ウチダレックのブースに来てくれるような会社になることができました。

代表が株主である中小企業こそ、実はDX改革を行う大きなチャンスがあります。

改革というのはボトムアップでは行うのは難しいところもあるからです。

そして、クラウドを活用した経営戦略DXを徹底的に行うことで、人口減少の局面にあっても必ず成長ができると考えています。

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