業務が属人化してしまうと、担当者が抜けた時に仕事が回らなくなってしまいます。トマト工業株式会社は、ある日まさにその危機に直面。基幹業務の担当者が急にいなくなってしまったのです。このことによりクラウド化を決意し、社内ネットワークを構築。業務マニュアルをオンライン化して知見を集め、かつては40回ほど外部に委託していた機械修理を20%削減。コロナ禍でも対前年比25%増の売上高を達成しました。クラウド化による業務改善に至ったきっかけの「属人的な業務を『職人仕事』という言葉でごまかしてきたのではないか?」という気づきは、多くの企業において参考になるはずです。
トマト工業株式会社
所在地:岐阜県関市富之保3861-1
設立:2008年5月
事業内容:パネル加工、建材加工・不燃材、化粧板販売、OEM製造
従業員数:16名(パート含む)
https://tomatokogyo.com/
クラウド化のきっかけ

ある日、社員のひとりがやってきてこう言いました。
「社長、S君が出社してません……」
基幹的業務を担う人材が突然いなくなったその日から、私の地獄の日々が始まります。
毎朝出社すると、お客様から「納期はいつ?」と電話がどんどんかかってきます。
社員からは「社長、あの件どうしましょう」と質問が次々に入ります。
社員とお客様の板挟みになって「どうしたらいいんだ」と悩む日々を過ごすようになりました。
業務の問題点

Sくん事件によって、このように大きな3つの問題が出てきました。
改善方法を考える必要が出てきたのです。
我々は、属人的な業務を「職人仕事」という言葉でごまかしてきたのではないか?
そう考えるに至りました。

属人的な業務を解決しなければいけないと思ったのは、些細なことがきっかけでした。
家族から「近所の美味しい中華料理屋さんに一緒に行かない?」と誘われたのです。
このお店、確かに非常に美味しいのですが、一つだけ問題がありました。
それは待たされること。某テーマパークかってくらいです。
厨房を見たら、店主が一人で必死に料理をしていました。奥様とスタッフはどうしているかというと、やはり店主を見て「ラーメンとチャーハンはいつ出てくるのだろう」と今か今かと待っていたのです。
私は思いました「なんで待ってるんだろう」
「もし奥様がチャーハン作れたら、料理の提供時間が半分に短縮できるのでは?」
「スタッフの方が餃子を作れたら、料理の提供時間がさらに1/3になるのでは?」
早く料理を提供できれば、それだけお客様の満足度が上がります。回転率が3倍になれば、お客様がどんどん来て、店も繁盛するでしょう。お店に利益が出れば、アルバイトの時給も上がるかもしれません。皆がハッピーになります。
そこで私はひらめきました。

秒速で会社に戻り、自社業務にかかる時間を調べてみると……
比較的簡単な加工である切断工程は、平均納期は1.3日。ほぼ当日出荷が実現できています。
しかし、プログラムを書いて機会を動かすCADCAM、NC工程については、平均納期は5.1日。約1週間もかかっていたのです。
それを我々は「おかしい」と思っていなかったのです。
人が機械へ走る→ネットワークでデータを走らせる

環境を調べると、NC工程 に必要なCADCAMは、スタンドアロンでSくんのPCの中にしかインストールされていませんでした。そこで、これをネットワーク対応。我々が使っている工場全体のPCで全て使えるように改善しました。
今まではSくんが作ったデータは、USBに格納し、各工作機械へ持っていく流れ。人力で機械へ走って持って行ったのです。
これをネットワーク対応し、各PCから工作機械にデータを取り込めるようにしました。
ネットワーク化の効果

これによって納期が5.1日から2.7日へと約半減。
ここからさらに進め、切断工程の1.3日に迫れるように、営業も含めた生産スタッフ10人全員にカリキュラムを組んで教育しています。
チャットツールを使ってデータをアップロードし、自由に引き出す方式です。
オンラインマニュアルの整備

問題点の2つ目「操作方法がわからない」を解消すべくオンラインマニュアルを作成しました。
マニュアルに情報をどんどんアップロードしていく方法に切り替えたのです。

オンラインマニュアルのメリットは3つあります
1つ目は、画像や動画のアップが簡単にできること
2つ目は、現場のみんなもタブレットで自由にみられること
3つ目は、自分で書いて編集するので知識が体系化されることです。

これまで、トマト工業では年間約40回ほど、機械を外部修理に出していました。
外部修理の知見は、これまで一切データベース化されていなかったので、過去をさかのぼってその知識やどういう場所だったかをまとめてアップすることで、機械のオンラインマニュアルを拡充。社内で修理ができるようになりました。

また、朝起きる時に目覚ましをかけるように、1か月に1回この機械はオイルやグリスを入れる日時をリマインダーしています。
タスク管理ツールのリマインダー機能で教えてもらうことにより、オイルの抜け漏れ、グリスの塗布漏れによる故障を防ぐことができるようになりました。

これらの取組により、年間の40回の修理のうち、20%を自社で対応可能にしています。
クラウドによる業務改善で売上高もアップ

現在コロナ禍で苦しい製造業はたくさんあると思います。
我々は決して高度な改善ではなく、誰でもできる改善を繰り返し、今ここにやっております。
昨年は約17%コロナの影響で売上が下がりましたが、直近の9月は昨年対比で25%売上がアップしています。
クラウドを使って、これからも改善を進めていきたいです。
DX推進の取り組みを共有しませんか?
日本DX大賞 2025 エントリー募集中