全国中小企業クラウド実践大賞とは、クラウドを活用して新規事業創造、収益向上、業務効率化を実現した中小企業等の実践事例を発掘し、広めていくためのプロジェクトです。
2022年10月21日に行われた「近畿・中国・四国大会」より、経理業務の脱属人化・標準化を実現した住野工業株式会社の事例をご紹介します。
住野工業株式会社の概要
■法人名:住野工業株式会社
■事業内容:
自動車用小物プレス部品の製造
金型・治具・装置の設計製作からプレス・機械加工・溶接・表面処理まで自社で一貫生産
■設立:明治39年
■公式Webサイト:https://www.sumino.co.jp
経理部6名で複数のクラウドシステムを活用
住野工業株式会社は、広島に本社を置く自動車部品製造業です。国内従業員は265名、国内4拠点、海外2拠点の合計6拠点で営業を行っています。
私は経理部長を務めております吉田と申します。株主総会の開催、法人税申告書の作成、固定資産台帳の管理など、海外子会社の対応も含め経理部員6名で幅広い業務に対応しています。
当社では2011年からTKC統合型会計情報システム「FX4クラウド」、2022年から「PCAクラウド法人税」を活用しています。どちらも便利で、業務改善に役立っている素晴らしいサービスです。
使い分けで業務をより円滑に

今回詳しくご説明させていただくのが、サイボウズ株式会社のクラウドシステムkintoneです。
試行錯誤しながら運用を開始

2017年から経理部にて運用しており、kintoneの機能を拡張する各種API連携機能やカスタマイズサービスも導入し、より使いやすく、社内の需要に合わせた形で利用しています。
経理部が抱えていた課題
最初に、経理部が抱えていた課題と、kintoneを導入した経緯についてです。
2017年、私はかねてより会社の命題である間接業務の改善について、何か良い手法がないか思案をしていました。そのような中、広島IT総合展にてサイボウズ株式会社のkintoneと出会い、『kintoneをうまく使えば経理業務の改善につながるのではないか』と長年の経験から直感して早速経理部内で利用を開始しました。
これまで私は、メンバーへの申し送りのために共有サーバーに表計算などのファイルを作成・保存してきました。kintone導入以前の当時、経理部が抱えていた課題はこちらです。
データ管理が大きな課題に

①他のメンバーにとっては可読性が悪く、どこに何があるのかわかりづらくなっていた。
②取引先や社内連絡の手段としていたメールが定期的に削除され、経緯などが残っていなかった。
③作成・保管してきた紙のファイルが管理に困るほど増えていた。
『紙の書類以外で、経理業務を速やかに引き継げる方策はないのだろうか…?』課題を踏まえ、経理部内で取引履歴や経験・知識も共有化できるシステムが必要だと考えていたところ、タイミングよくkintoneを導入することになりました。
kintoneで脱・属人化、作業を標準化
kintoneのアプリケーションの作成方法は簡単です。必要な項目をドラッグ&ドロップで並べるだけで、ITの知識やプログラミングに詳しくなくても、自分自身の業務に合わせた仕組みを作成することができます。
弊社では、誰もが見やすいアプリケーションにするために、ある工夫をしました。
「5W1H」を明確に
“伝わる”データの工夫

それは5W1Hを活用し、標準化した項目を定めていったことです。これにより、分かりやすい記録としてデータに残すことができます。
例えば「決算業務アプリケーション」は、株主総会開催から納税申告書作成までの決算業務の流れに対応するものです。以前は、経理部長しかできない属人化した作業と化しており、メンバーと共有ができていない状態でした。
5W1Hで標準化したデータの実例

この手順をわかりやすく伝えるため、「いつ」「誰が」「どのように」の5W1Hを生かした項目を作成し、簡潔にまとめました。これによりメンバーが情報を確認しやすくなり、属人化していた経理部長の業務内容を理解してもらうことができました。
この事例をもとに、これまで共有できていなかった作業やデータの集計、例えば「取引契約書管理」「固定資産管理」「保険証券管理」資料などを、5W1Hを明確にした形式で次々にアプリケーション化しました。この活動が好循環を生み、業務の見直しを通して大幅に業務改善が促進されました。
未共有だったデータをアプリケーションへ

結果として現在は30種類のアプリケーションを利用しており、メンバーで各業務の情報共有を行っています。作業に不慣れな人や新入社員でも速やかに対応できる業務体制が整ったのです。
kintoneの「スペース機能」を活用
kintoneをもっと便利に使うために欠かせないのが「スペース機能」です。
スペースと呼ばれる場所を作成することで部署や担当ごとといったチーム単位で、アプリの活用や情報共有を行うことができます。
情報を整理してさらに共有しやすい状態に

前述の通り、経理部には決算関係や管理会計など多くの業務項目があります。
これらの項目に対してkintone上に作業スペースを作りました。
例えば決算関係の情報は「毎年決算業務納税申告書スペース」へ、管理会計の情報は「管理会計関連スペース」へ、といったような形です。
そしてこのスペースに、5W1Hで標準化させたアプリケーションを所属させます。分類を明確にしておくことで、担当者がデータを探す手間を省くことができると同時に、メンバーへの共有も容易になりました。
共有と一元管理で業務効率UP

さらに、決算業務はこちらのスペースで行うことで、一元管理することができます。
同様に、カーボンニュートラルの取り組み、改正消費税インボイス制度、電子帳簿保存法なども、スペースでそれぞれ一元管理を行います。
あらかじめ体制を整えておくことで、新しい制度や法律ができても焦らず対応できるようになり、無理のない情報管理や、メンバーと即時に情報共有を図ることができています。
現在経理部では20個の作業スペースを活用しています。
多様な業務への対応とそれらの分類整理が必要な際にも、kintoneにスペースを定めておくことですぐに情報にアクセスができ、効率化を図ることができました。
クラウドの有効活用は、人の能力・記憶力を拡張させる
無駄をなくして業務に余裕が生まれる

最後にまとめです。
これまで一つの業務や課題に直面するたびに、ファイルや書類を都度参照する手間をかけ、そのために情報共有ができておらず、業務が属人化していました。
しかし、kintone導入後は新たな業務や課題に直面しても、必要な「スペース」「アプリケーション」を作ってアクセスすることができ、業務効率化・情報共有ができるようになりました。
一度に複数のタスクや課題が発生してもクラウドサービスを活用することで、余裕を持って対応できています。
クラウドシステムの活用で会社の課題を解決

①仕組み化すべき間接業務を、5W1Hで標準化したアプリケーションにしたこと。
②業務ごとに分類したスペースを作成 、アプリケーションと結び付けて情報を一元化し、確実なアクセス先を用意したこと。
上記2点が、業務効率化を成功させた大きなポイントです。
結果、kintoneのおかげで、円滑な業務対応が可能になりました。アプリケーションやスペース機能には大変助けられており、クラウド導入以前の体制にはとても戻れません。
活用次第で業務の可能性が広がる

一人の人間の能力や記憶力には限界がありますが、クラウドシステムを有効活用することで対応できることも非常に多いと言えます。
就業人口が減少していく将来、限られた人手でどのように業務に対応していくのか、クラウドシステムの有効活用はますます重要な役割を持つと思います。
今回の事例が、少しでも皆様の業務改善のお役に立ちましたら幸いです。
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