全国中小企業クラウド実践大賞とは、クラウドを活用して新規事業創造、収益向上、業務効率化を実現した中小企業等の実践事例を発掘し、広めていくためのプロジェクトです。
2022年10月21日に行われた「近畿・中国・四国大会」より、IoTとkintoneで業務改善を進めた西機電装株式会社の事例をご紹介します。
西機電装株式会社の概要
■法人名:西機電装株式会社
■事業内容:制御盤・高低圧配電盤・分電盤・操作盤・監視盤の設計、製作、現地試運転調整
■設立:1983年7月
■公式Webサイト:https://g-nishioka.co.jp/nishiki/
DXのプロセス目標設定を「業務効率化」に
西機電装株式会社は主に、港湾で使われる大型クレーンや、造船所で使われる大型クレーンに搭載する電気室・制御盤を設計製造しております。

まず DX推進における弊社の目標設定についてお伝えします。
弊社ではかねてより、業務効率を上げる必要性を感じておりました。
そのような中、私が初めて「DXの定義」を見たとき、正直「DXの推進は無理やね」と思いました。

しかし、この定義をよく見ると、DX達成までにはいくつかのプロセス目標があります。
そこで弊社においては、kintoneクラウドシステムを使って「業務の効率化ならできるかもしれない」と判断をしてチャレンジをすることにいたしました。
ですから本日の発表は「DX達成」ではなくその過程である「業務効率化」達成の発表となります。
2つのハードル
次に「業務の効率化」という目標達成までに乗り越えなければならなかったハードルが
ございましたので、主たる2つをご紹介いたします。
まず1つ目は「人の心」です。
「現状の仕組みでも不自由なく間に合っているから、無理して変える必要がない」と考えている社員は、新しいことへのチャレンジに消極的になります。
確かに、チャレンジに消極的な社員の言っていることは、社員単位では部分最適ができていて局所的には正しいわけです。
しかし会社全体を見ると、必ずしも全体最適ができているわけではありません。全体で見れば、同じことを複数の社員がやっている、共有すれば一つで済むといったこともあるわけです。
これらへの対応は、やみくもに説得・説明をするのではなく、小さな実績、つまり小さな アプリの開発と、それらを使用する体験(確かに便利だなと思ってもらえる)をさせて、自然に移行してもらうようにしました。
2つ目は、職場環境に起因するハードルです。
このハードルを事例をあげて説明します。
例えば、弊社の社員が溶接作業をしていて、その奥にノートパソコンが置いてあり、kintoneの部材注文アプリが起動しています。作業中に「ある部材」が切れそうになったため、「注文アプリで注文処理をしてください」と言うと、「このような作業状態ではパソコンは使えない」となるんです。
「では、タブレットを用意しましたので使ってください」と言うと、結果は同じです。
そもそも、kintoneの画面操作が面倒だということになるんです。

利用ハードルを下げる工夫「システムが人に合わせる」
対応策は、「システムに人が合わせる」のではなく「システムが人に合わせる」ことで利用ハードルを下げることにいたしました。
具体的には、注文受付・注文書発行システムについて、現場側ではキーボード操作・マウス操作が一切不要で、kintone操作ができる IoTデバイスを試作しました。

あらかじめ商品をQRコードで表現しておき、注文したいものをスキャンするデバイスです。システムを起動すると、その後ソフトが立ち上がります。スキャン前にボタン操作などは一切不要です。
あるのは「電源オン/オフだけ」のシンプルさを追求したデバイスです。
また、同じものを発注したとしても、それが届いていない限り、重複注文できないような仕組みにしております。
QRコードでの注文後は、事務所側にkintoneシステムへ発注の通知がされます。
そして、注文書PDFが作成されます。
いくつかのハードルを乗り越えて、今では多くのアプリを開発して全社員が運用しております。
<開発したアプリの一例>
・出荷までを管理するアプリ群
・注文書管理アプリ群(原価管理システムと連携)
・社内問い合わせアプリ群
・共有型todoリストアプリ群
・品質管理アプリ群(不適合管理などを行う)
・ 勤怠管理アプリ群(作業日誌、勤怠届など。作業日誌は原価管理システムと連携)
・不適合集計アプリ群
・取引先台帳アプリ群
・その他アプリ群
業務の改善効果
次に、業務改善効果についてご説明いたします。
副産物として得られた宝物についてもご紹介いたします。
まず定量的効果についてです。
総務部における作業日集計・内容確認について、従来は月末に数日かかっていたものが
ワンクリックで5分、となりました。
しかも各管理職が部下の稼働時間・予算・実績時間をリアルタイムで把握し、工程調整、 指導できるようになりました。
このような効果も重要ですけれども、もっと大切なものを得ることができました。
あるとき、社内打ち合わせスペースから「kintone」という声が 聞こえてきたので覗いてみると、社員が自発的に業務改善の打ち合わせをしていたんです。
これを見て、「DXマインドが醸成されたな」と思いました。
デジタル人材とは、アイデアを引き出し、形にする。データを解釈し、課題を発見するという、両輪の力を発揮できる人材のこととされています。
弊社のDXマインドの醸成は、実はデジタル人材の育成につながっているんじゃないかと思い始めています。
そして「プログラムを書く」といったシステム開発よりも、このような仕組みを考える人材が、今後DXの推進にはますます重要になると思っています。
例えば…自動車技術を例にとると、ナビゲーションシステムの登場で目的地までが快適に運転でき、今では自動運転も実現されつつあります。しかし、目的地は人間が設定しなければなりません。
コンピューターの世界も同じで、システム開発もかつてのように素人が手が届かない状況は低減されつつあり、kintoneのようなシステムによって開発が簡単化、将来は自動化されつつあります。
しかし、いくら簡単化・自動化技術が進んでも、結局は、目的地を人間が設定しなければなりません。この目的地を考えるのが、デジタル人材ではないでしょうか?
自社の成功事例を、地域のDX推進に横展開
最後に、今後の目標についてご紹介いたします。
社内の業務効率化の推進はもちろんのこと、これまでの弊社の経験を生かし、地域のDX推進をビジネスとして実現する予定です。
今回の経験につきまして、新居浜市IoT推進ラボ、サイボウズ株式会社、そして弊社で、共同でDXセミナーを開催したところ、参加企業様から、弊社がシステム開発の依頼を受けました。
このような背景もあり、弊社は「令和4年度愛媛県産業DX化フラグシップモデル創出事業」の採択もいただいており、現在、愛媛県、新居浜市IoT推進ラボ、サイボウズ株式会社の支援を受けて、弊社の経験を地域のDX推進ビジネスとして展開しつつあります。
これからも、社内外のDX推進に向けて注力いたします。
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