事例

アナログ管理からの脱却。製造メーカーの常識を変えたDX推進

毎年5%の成長を続け、2022年には過去最高の売上を達成する見込みという船場化成株式会社。しかし、2014年当時は基幹システムすらなく、手書きの紙を主に使うアナログな業務が主でした。残業や休日出勤が日常化し離職率も高い状態。「このままではいけない」と奮起したものの、全体のシステム構築には1億円弱かかるという見積もりを提示され、とても対応できません。そこで、要望に応じて手間のかかる業務をひとつずつシステム化することから始めました。結果的に、システム化による業務効率化が社内で評判になることで、徐々に改善要求があがるように。社員に業務改革のモチベーションが生まれるという大きな成果をあげることができました。社員間、グループ会社間のコミュニケーションも活発になり、2019年には、このシステムが評価されて「四国で一番大切にしたい会社大賞 奨励賞」を受賞。現実的で前向きな取り組みが評価され、本大会でも「四国総合通信局長賞」を受賞しました。

船場化成株式会社

所在地:徳島市国府町観音寺梨ノ木
設立:昭和34年1月
事業内容:ポリエチレンフィルム製造・販売
従業員数:全体:308人(グループ4社全体)
https://www.senbakasei.com/

当社の強み

当社にはこのように3つの強みがあり、2010年から売上は右肩上がりで上昇。毎年5%の成長を続けてきました。コロナの影響もありましたが、2022年には過去最高の売上を達成する見込みです。

一見順調に見えますが、ここに至るまでにいろいろな課題を克服してきました。

導入前の課題点

話は2014年に戻ります。当時は、会社の基幹システムへの投資が全くできていませんでした。営業所にはPCはあるものの、ネット未接続、プリンタはローカル接続、拠点のVPN接続もされていません。

IT化が進んでいないことにより、属人化の業務が多く、生産性が悪い状況。

そのために、残業・休日出勤が常態化して離職率が高いという悪循環になっており、悩みの種でした。

「これではいけない」と、2015年にクラウドを利用して情報を一元化し業務の効率化を図ろうと決意しました。

 

目標達成のための取り組み

どのようなものを作るべきかとを考えたのがこちらの図です。

クラウドにひとつのデータベースを置き、東京・大阪・名古屋などすべての拠点からVPNを敷設。データベースへ情報を盛り込み共有化することで業務効率化につなげようと考えました。

しかし、ソフト会社に相談したところ1億近い見積もりが出てきて非常に困りました。 

目標達成のための取り組み①

しかし、やると決めた以上は進めていこうと考え、まずは一番簡単なところから取り組むことにしました。

まず取り組んだのは、手書きラベルのデータベース化です。

左のようなラベルを、製造のリーダーが製造オペレーターに対して書くように指示していたのですが、その数は毎日100枚もありました。あまりにも無駄すぎます。そこでまずこの作業のデータベース化に取り組むことにしました。

そこで、MS SQL Server 2012を設置。ラベル情報をデータベース化して、ボタン一つでラベルを自動化で出すようなシステムを作ってみようと始めました。

目標達成のための取り組み②

ここで初期の基幹システムが誕生することになりました。

この画面のような簡素なもので、発注金額は30万円程度。しかしこれがものすごい効果を発揮します。製造リーダーの作業時間が1日4時間ほど削減できたのです。

「これはすごい便利だ!」と社内で話題になり、システム化に向けて良い雰囲気が出てきました。

目標達成のための取り組み③

この風に乗ってどんどん進めてみようということで、次に手掛けたのが営業の製造指示書のクラウドデータベース化です。

当時は、お客様から FAX でいただいた注文を元に手書きで工場に指示をしていました。

この作業も大変だったので、データベース化して一覧を作成しました。

これにより、リアルタイムで情報が更新できて、とても便利になりました。

目標達成のための取り組み④

システムが進化したと言っても、営業の業務が入って少しボタンが増えただけで、相変わらずシンプルなシステムです。

「これもすごい便利だぞ!」と営業も含めて会社の中で大きな話題となりました。

すると「この作業もシステム化できるのでは?」と徐々に現場から声が上がり始めたのです。

目標達成のための取り組み⑤

じゃあさらにちょっと進めてみようかということで、次に対応したのは製造工程の管理です。

当時は、製造進捗は手書きノートでの確認だったため、総務部ではリアルタイムの進捗がわかりませんでした。

そこで、現場の人たちが即座にデータベースに入力することで作業進捗の一覧を作成し、総務部との情報共有を可能にしたという事例です。

目標達成のための取り組み⑥

次は、製造現場から要望が上がってきました。

プリンターで出力したラベルを、左の図のようにホワイトボードに貼って管理していたので、貼り付けと並び替えが大変で時間がかかるとのことです。

ここで大型モニターを設置。ラベルプリンターをやめて直接モニターに表示するようにしました。PC上で並び替えできるので手作業がなくなります。

これは大変な効率化となり、リーダーの作業時間が1日3時間削減できました。

目標達成のための取り組み⑦

どんどん現場の方から要望が上がってくるようになります。

今度は出荷担当からの要望です。

お客様から荷物の問い合わせがあると、左側の写真のように送り状から探さなければならない状況。これは大変だということで、出荷前にバーコードで取り込んでデータべース化し、運送会社の情報とリンクさせました。これで事務員の残業が2時間削減されました。

目標達成のための取り組み⑧

次は人事課からです。社員数が増えたので、紙のタイムカード管理と残業集計がとても大変だと言います。

そこで勤怠管理をシステム化して取り込み、タイムカードを廃止しました。

目標達成のための取り組み⑨

次は、経理課から要望が上がってきました。

領収証や請求書など郵便で送るのは、時間も手間もお金もかかるということで、お客様にPDF でメール送信できるシステムを導入。こちらの施策も、事務員の業務時間を1日2時間削減することにつながりました。

目標達成のための取り組み⑩

次は人事管理システムです。人事課から「人が増えたことで名前と顔が一致しない」と相談されました。紹介して回っても覚えることが難しいという状況と聞き、コミュニケーションが図れないのはまずいと、ボタン一つで名前と顔がわかるようなシステムにしました。

同時に、組織図もいつでも見られるようにして、異動があったときも上司が誰かなどすぐ分かるようにしています。

目標達成のための取り組み⑪

社内の掲示板にいろいろ貼ったりするものの、情報共有が難しいという声が人事から寄せられました。

そこでシステム上に社内掲示板をつくり「社員表彰について」「徳島新聞に掲載されました」「コロナ対策はこういう行動を」といったお知らせと社内報も表示。コミュニケ―ションがさらに良くなってきました。

目標達成のための取り組み⑫

その他にも、現場からの要望をシステムに取り込んでいったのが、2017~2019年にかけてです。

さまざまな作業を1つのデータベースファイルにまとめることで、一元化がどんどん進化していきました。まだまだ作業の効率化を進めている最中です。

導入の効果

導入の効果としては、ペーパーレスが進み紙がおよそ9割なくなりました。

そこにプラスして全国の拠点で情報共有・管理を可能にしたことで「私しかできない」「ここでしかできない」という属人化した業務が激減。それによって社員間の作業の平準化がなされ、残業や休日出勤が横行していたのも減少しました。残業時間は平均20時間以下、有給取得日数は平均9日以上取得することに成功しました。

その他の効果もありました。

子会社にも同じようなシステムを導入したところ、社を越えて生産状況の確認ができるようになり、両者のコミュニケーションが非常にスムーズに。

2021年8月に三信包装株式会社という会社をグループ化したのですが、そこでも同じようなシステムを導入することでシナジー効果を見込んでいます。

業務効率化をはかることで、効率良く売上を上げることができました。グループ化する会社の効果もあり、2022年の決算期には過去最高の売上を達成できる見込みです。

まとめ

情報を一元化し、業務の効率化をはかろうと2015年から始めたクラウド活用。社員の意見を積極的に採用して業務改善をした結果、業務改革への意識が社員間で芽生えました。

社内の雰囲気もどんどん良くなり、コミュニケーションが活発化。非常に大きな成果でした。2019年には、このシステムが評価されて「四国で一番大切にしたい会社大賞 奨励賞」もいただいたのも成果の一つだと思っています。

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