全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月18日に行われた岡山大会より、有限会社小田商店の事例をご紹介します。68もある基幹業務をクラウド化し、業務の無駄を削減。Amazonマーケットプレイスなど新しい販路を獲得することで資金流出を抑え、粗利の増益を積み重ねています。クラウドで得られる情報を共有することで、社員が自主的にPDCAを回し、チームとして業務改善に取り組む流れも作られています。
有限会社小田商店の概要
有限会社小田商店

■事業内容 :水道機材の販売
■設⽴:1953年
■従業員数:正社員14人パート・アルバイト6人
■公式WEBサイト:http://odss.jp/
■Facebook:https://www.facebook.com/odashoten/
有限会社小田商店は徳島にある中小企業です。
徳島県といえば、阿波踊りや鳴門海峡の渦潮、徳島県出身の米津玄師さんが紅白の舞台にしたことで有名になった大塚国際美術館など見所スポットが多くあります。
事業内容は水道機材の販売。
「水の恵みを全ての人に」を経営理念に、SDGs(https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/)の6番「安全な水とトイレを世界中に」にも取り組んでいます。

水道にまつわる多品種な部品の調達を行い、建設現場に水道部品を納入。

倉庫内では多品種な部品を在庫として保有し、配達も行なっています。

業務内容は多岐にわたり、大きく分けても68種類に及ぶという状況です。

当初は水道関連資材の販売業だけでしたが、現在は配達や消防申請などサービス業へ業務拡張をしています。
こうした顧客ニーズに応えるため、クラウドの活用による高付加価値化をを目指しました。
使用しているクラウドサービス
・AWS(アマゾン ウェブ サービス):https://aws.amazon.com/jp/
信頼性と拡張性に優れたクラウドコンピューティングサービス。190か国の100万以上、日本国内では10万以上の導入実績がある
・MySQL:https://www.mysql.com/jp/
世界で最も人気のあるオープンソースデータベースを使用してクラウドネイティブアプリケーションを構築するためのフルマネージドデータベースサービス
・Capacitor:https://capacitorjs.jp/
Webアプリをクロスプラットフォーム向けにブリッジするためのフレームワーク
・FileMaker:https://www.claris.com/ja/filemaker/
ITの専門知識がなくても操作がしやすいデータベース管理ソフト
・Navicat:https://jp.navicat.com/
データベース管理ツール
・マネーフォワードクラウド会計:https://biz.moneyforward.com/
クラウド会計システム
・Manageboard:https://manageboard.jp/
クラウド予算管理システム
・Slack:https://slack.com/intl/ja-jp/
クラウドによるチャットツール
・LINE:https://www.linebiz.com/jp/
「公式アカウント」で顧客とのやりとりもLINEでおこなうことが可能。
・スマレジ:https://smaregi.jp/
iPad・iPhone・iPod touchアプリを使った無料で使えるPOSシステム。あらゆる業種や規模に対応。
・ジョブカン勤怠管理:https://jobcan.ne.jp/
クラウド勤怠管理システム。勤務形態や、所属・雇用形態ごとに細かい設定、運用が可能
・Safie(セーフィー):https://safie.link/
クラウド録画できる防犯カメラ・監視カメラのサービス
・DENSO TEN ドライブレコーダー:https://www.denso-ten.com/jp/eclipse/product/driv
高性能ドライブレコーダー
・掃除ロボットRULOナビ:https://panasonic.jp/soji/products/rulo.html
自動掃除機。掃除したエリアのゴミ分布を表示する機能なども。
・GitHub:https://github.co.jp/
ソフトウェア開発プロジェクトのためのソースコード管理サービス。公開されているソースコードの閲覧機能などがある。
今回ご紹介するクラウドシステムです。
クラウドシステムについては、どんどん新しいものが開発されていますので、導入については適宜社内で検討しています。
また、社員同士で教え合ったり、丁寧に指導すればすぐに使えるように、一つ一つのソフトはそんなに難しいものは採用していません。
相互に聞きやすい雰囲気を作ることも心がけています。
次項から順番に解説していきましょう。
AWS(アマゾン ウェブ サービス)を活用したデータベースシステムの構築

AWSを活用した社内システムとの連携図です。
クラウドサービスであるAWSを導入することで、社内にあった4台のサーバーの撤去が出来ました。AWSは、業務量に応じでサーバーの性能を柔軟に変更できるのが利点です。
データベースは MySQLを使用し、クエリによる集計がすぐにできるようになっています。
AWS Lambdaと端末のCapacitorをインターネットでつなぐことで、後述のシステムをスピーディーに動かしています。

これらのデータベースについて、設計は自社で行いましたが、開発は外部に発注しています。
また、自社で SQL のクエリーを設計し、売れ筋商品の集計を行ったりFileMakerを使用して、データ入力や帳票印刷を行っています
Capacitorによるバーコードのピッキングシステム開発

Capacitorを使い、自社の販売見積もり棚卸しなどを行うシステムを外部発注で作成してもらいました。
iPhoneにインストールし カメラでバーコードをピッキングすることが可能です。
以前は専用端末を使用していましたが、動作が遅くなったりバージョンアップができなかったりして苦労していました。
iPhoneアプリであれば、買い替えるだけで性能の良い端末が使用できるというメリットがあります。
マネーフォワードクラウド会計による月次決算の早期化

会計ソフトとして、「マネーフォワードクラウド会計」を導入したことで、7営業日以内に月次決算ができる体制を整えました。

さらに、マネーフォワードクラウド関係と連動した予算管理ツールManageboardを使用。期中の状況に応じて予算を修正し決算予測も可能に。
数字に基づいた経営判断を月次決算ごとに行っています。
マネーフォワードの銀行連携による副産物

マネーフォワードクラウド会計は、銀行とのデータ連携ができるため、導入を契機にこれまで訪問・集金していた顧客に振り込みへの切り替えを依頼。集金訪問数を同期間比較で約3分の1に削減することができました。
Slackにて配達情報の共有

配達情報の共有にはSlackを活用しています。
商品と伝票を撮影することにより画像で情報共有ができるため、現場における顧客とのトラブルも減少しました。
LINEの活用

LINEも導入しています顧客とのやり取りには公式アカウントを使用。配達先の地図や発注内容を共有しています。

また、前日の業績について、売上予測などを集計してLINEで速報を出すことで、社内で共有する仕組みを構築しました。
スマレジ・自動釣り銭機の導入

現金販売用に、スマレジと自動釣銭機を導入しました。
現金販売や電子マネーも、マネーフォワードクラウド会計と連携して自動で入力される仕組みです。現金取扱いにおけるコスト削減とともに、不正防止にも役立っています。
ジョブカン勤怠管理

勤怠管理には、ジョブカン勤怠管理を導入しました。
労働時間の削減をはかるとともに、有休取得の促進をしています。
Amazonマーケットプレイスによる販路拡大

全国への販路拡大のため Amazon マーケットプレイスに出店しています。
各種システムを効率化したことで、Amazonマーケットプレイスの対応については、パートさん1名でほぼ処理が可能となっています。
1日にかける時間は、約1時間30分程度です。
Amazonの売上の年間集計を見ると、2017年から大きく売り上げが上がったことが分かり
ます。黄色の2020年は今季予測を入れていますが、約1500万円です。この売上の対応がパートさん1名で対応できています。
セーフィーによる状況確認

クラウド録画できる防犯カメラ・監視カメラのサービスSafieセーフィーを導入し、社内にカメラを23台設置しています。これによって、社員同士で相互に状況を把握し共有することが可能になりました。
DENSO TEN(ドライブレコーダー)による配達対応

顧客満足度向上のために、ドライブレコーダーで車両の位置を把握できるシステムを導入。きめ細かい配達支持が可能を可能にしています。
掃除ロボットRULOナビによる倉庫内のゴミ状況の把握

コロナ禍において、公衆衛生にも目を向けました。
そこで、倉庫内のゴミ量を把握するため掃除ロボットRULOナビを2台導。アプリで倉庫内のごみの量の多さが色によって分かります。現在は様々なデータを計測・取得している状況です。
クラウド化での企業の変化

クラウド化を行い、業務を効率化することによりできた空き時間で、顧客の防水仕様の相談や給排水・消防の申請、資格学習・実務指導を行うことができるようになりました。
知識活用型企業への転換をはかるためのステップです。

週1回報告と要望をGoogleスプレッドシートに書き込んで共有
また、社員相互の情報共有の促進として、顧客の仕事の予定顧客からの要望システムの不具合や要望などを週に1回google スプレッドシートに書き込んでもらっています。

上がってきたシステムの不具合や要望を取りまとめ、 GitHubを利用して外部の開発者とやりとりしています。

当社の強みとしては、 AWSとクエリによる集計により顧客と仕入れ先への対応が効率的に行えるようになっていることです。
購入量からの価格決定と、見積もり集計から受注予測をすれば、資金調達額の算出ができますし、高回転率商品の一括調達、商品調達価格の見直し、商品ライフサイクルの見直しについても、適宜行うことができます。

クラウドで得られる情報を、社員が自主的に利用してPDCAを回せるようになっているからです。
結果を振り返り、社員相互に共有でき、結果に対してチームとして改善を進めることができる流れができています。
年間売上と売上総利益の推移

年間売上と売上総利益の推移です。
2008年には3億円ほどの売り上げでしたが。近年は4億円を超えるようになりました。
ここ数年は1%前後の粗利増益傾向で推移できている状況です。導入年に各クラウドのアイコンを並べています。
赤の折れ線グラフが売上総利益です。ゆっくりですが2015年より上昇しており、ここ数年は1%前後の粗利増益傾向で推移しています。
2020年決算期予想は売上では対前年9%ダウンとなっていますが、実は2%の粗利増益です。仕入れのムダが減り、仕入れの資金流出が14%抑えられた結果、売上が減少しても利益が出るという状況になっています。
「データドリブンカンパニー」を目指して

2018年6月にYahoo!のトップに就任した川邊氏は、インタビューでマルチビッグデータを生かした事業モデルを展開する「データドリブンカンパニー」について語っています。
「データドリブンカンパニー」においては、各サービスでデータ活用することで、これまでにない生産性を向上させることがその目的の1つ。
我々はクラウド化によって、社員が主体的に業務遂行した結果を振り返り、社員相互に共有、チームとして結果に対して改善を進めることができました。
今後もより⾼い付加価値をもつ企業となるべく、取り組みを継続して参ります。
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