Oosaka
全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月25日に行われた大阪大会より、マツ六株式会社の事例をご紹介します。お客様のニーズの多様化により、縦割り組織では十分なパフォーマンスができないと判断。生産性の向上を経営方針にかかげ、クラウド活用による働き方改革を成し遂げた事例です。2021年には創業100周年を迎えようという歴史ある企業クラウド実践事例をご覧ください。
マツ六株式会社の概要

■法人名:マツ六株式会社
■事業内容 :建築資材の専⾨商社
バリアフリー建材の開発・販売
■創業:⼤正10年3⽉3⽇
■従業員数:242名(令和2年4⽉現在)
■公式WEBサイト:https://www.mazroc.co.jp/
マツ六株式会社は、建築資材の専門商社。全国の金物店や建材店、ハウスメーカーやホームセンターをはじめ海外へも商品販売をしています。
おかげさまで2021年3月には創業100周年を迎えます。
強み商社でありメーカーであること

マツ六株式会社の特徴は、建築金物・建築材料を扱う商社でありながらも、バリアフリー建材を制作するメーカーとして両方の機能を持っていること。
需要に応じた商品を開発し、サービスの提案ができることが強みです。

日本は超高齢化社会を迎えています。
実は交通事故よりも家庭内で転倒などの事故によって骨折をし介護が必要になることが多く、これが大きな社会課題となっていました。

マツ六株式会社では、20年前から「手すり」を中心としたバリアフリー建材の開発を続けており、現在では、およそ2500種類の手すり部材のラインナップがあります。

手すりの開発だけにとどまらず「FIRST Reformファーストリフォーム」という、施工業者様向けのカタログインターネット通販事業を2005年に立ち上げ、「バリアフリーリフォーム」を提唱。現在では約2万社の施工業者様にご利用をいただいています。
施工業者と一緒に高齢化社会を支える独自のビジネスモデルとして2015年に「先進的なリフォーム事業者表彰 経済産業大臣賞」を受賞しました。
当時の課題

しかし事業の拡大に伴い、お客様のニーズが多様化した結果、建築業界以外のお客様との取引も増加。
これまでの縦割り組織では、十分なパフォーマンスが発揮できないということが課題として見えてきたのです。
情報の共有ができていないことももちろん、属人的な情報管理スタイルで人脈や商談内容も「その人に聞かないとわからない」状況。課題は山積みでした。
そこで「生産性の向上」を経営方針に掲げ、「働き方改革」を推進することになったのです。
初めてのクラウドサービス導⼊「sansan」

2017年の4月に導入したのが、名刺管理の「sansan」。
現在は約10万枚の名刺を管理。社員が持つ人脈を共有し、事業部間の情報共有における円滑化を図っています。
2つ⽬のクラウドサービス導⼊

次に、2018年11月から「LINE WORKS」を導入。
チャットやスケジュールの機能を使用することで、業務の効率化を図っています。
これまでは社員が集まる「月例会」をリアルで開催していましたが、「LINE WORKS」での動画配信に切り替えることで、時間と場所の制約を解消しました。
また、部門をまたいだプロジェクトごとにグループを作ることで、スピーディかつクリエイティブに仕事を進められるように。
コロナ禍でテレワークへの移行を行うにあたり、主に年配の社員の方から
「顔を見合わせないとコミュニケーションも心配」
という声が上がっていたのですが、「LINE WORKS」のグループで仕事をしてもらうと、「毎日顔を見合わせているように進捗も把握できる」「社員の感情もわかる」とむしろ非常に好評を得ることができました。
営業だけでなく「全部⾨」で活⽤

マツ六株式会社における特徴的な利用方法は、「LINE WORKS」と「Sansan」を並行して使っていることです。
行動計画などは「LINE WORKS」のスケジュール共有をし、実行した結果は「Sansan」のコンタクトに毎日入力。全社員でその情報を共有できるようにしています。
クラウド化というと、売上アップなどを目的として営業部門での日報や案件管理を行うという会社も多いです。マツ六株式会社では営業部門に留まらず、全部門にて「仕事での気づき」などの情報をコンタクトに入力をして共用しています。
さらに、経営者もコンタクトの内容はすべて確認し「いいね」を押すというPDCAサイクルを回しているのです。
コミュニケーションがもたらす変化

クラウドサービスの導入の際は、皆が半信半疑でした。しかし、毎日続けていくことで習慣化されていきました。
・Sansanのコンタクトを毎日アップしていると、日頃あまり交流のない人が「いいね」をしてくれたりして「私のコンタクトを見てくれているんだな」気づく瞬間。
・社内での日頃の打ち合わせについても、コンタクトであらかじめ内容に目を通しているので、スムーズに進む。
・さらに、コンタクトに書いた困りごとに対して、他の部門からアドバイスが得られる。
こうした体験がつみ重なることで、「クラウドって便利だなあ」と個人的に思うところから「情報発信をする価値」を組織として体感する分岐点に到達します。
人によってタイミングが異なりますが、いわゆる「腹落ち」をすることで「より価値の高い情報を発信しよう」と心がけるようになり、自発的にチームワークの向上にもつながっていきました。
LINE WORKSの利⽤状況

変化は数字にも表れています。LINE WORKSの利⽤状況については、コロナの緊急事態宣言後は約3.8倍に増加しました。
テレワークをするようになってからは出社しないので、改めてコミュニケーションツールの必要性が見直されました。部門を超えたコミュニケーションが確実にできる組織になってきた手応えがあります。
Sansanコンタクト利⽤率が毎⽉上昇

Sansanコンタクトの利用については毎月上昇しています。2020年10月には3000件ものコンタクト利用があり、社内の81.9%の人が現在利用している状況です。
Sansan 名刺や社内⼈脈の確認

Sansanの機能で名刺検索がありますが、自分が取り込んだ名刺を検索するよりも社内の人脈を検索するという活用の方が約4倍使われています。これまでの属人的な営業スタイルを卒業して組織的に活動できるようになった結果でしょう。
クラウド化による効果-業務時間削減

クラウド化を行った結果ですが、1人あたり月に約5.8時間の削減ができました。これは金額になおすと、全社で月に300万円ほど削減していることになります。
こちらはSansanのみの数字なので、LINE WORKSを加えるとさらに大きな効果が得られているのではないでしょうか。
クラウド化による効果-新需要創出
クラウド化については、単純に業務を効率化したと言うよりは、その時間を使って高齢化社会に新たな需要を創造し、新商品を開発できたということが大きな喜びです。
ご⾼齢者の外出を安全に「SOTOE(ソトエ)」

こちらは、たよレールSOTOEという屋外型の手すりです。
開発部門だけでなく、営業部門などとの連携によって開発しました。こちらは発売して1年ほどですが、売上にかなり貢献してくれる商品に育っています。
⼿すりらしくないから、私らしく使える「nimone(ニモネ)」

さらにこちらは、 「手すりらしくないから、私らしく使える」という新しいコンセプトで生まれた「nimone(ニモネ) 」という商品です。
手すりだけでなくハンガーラックなどにも活用できるデザインで、発売前にも関わらずグッドデザイン賞を受賞しました。既存のお客様はもとより新規顧客の拡大にもつながっています。
このように、部門を超えて様々な情報発信・収集を行ったことで、独自性の高い商品開発が可能になったのです。
クラウド化による効果ー社会課題解決型の新規事業を開始

さらに、商品の開発以外に新事業も開始しました。
「日本の建材の廃棄ロスをなくしたい」そんな想いから生まれた、施工業者様向け住宅建材アウトレットオンラインショップ「建材サルベージ」です。
これまでやむを得ず廃棄せざるを得ない商品があったのですが、売れなかった商品も売れる仕組みができたことで、順調に事業を拡大しています。
全社員がリーダーシップ

これまでの社内のコミュニケーションといえば、図の左側にあるように「上司と部下」の関係。指示や報告がメインで与えられた仕事をこなしていくというイメージだったのではないでしょうか。
しかし、より速く大きくなる時代の変化に迅速に対応できることが求められるようになると、全社員がリーダーシップを発揮して、自発的に仕事を進めていくことが大切になってくるのではないでしょうか。
それは、お客様対応をする営業部門だけでなく、どの部門の社員にもあてはまることだと考えています。
マツ六株式会社は、クラウドサービスの活用で部門を超え、信頼関係もとにコミュニケーションができるような体制を構築することができました。
健康経営 楽しく仕事ができるOneTeamへ

クラウド化の結果、社員の仕事へ関心度を高めただけでなく、労働時間も削減して業務効率化をかなえました。2020年には経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)」に認定も受けています
社員が本来もつ多様な能力を最大限に発揮してもらうためには、質の⾼いコミュニケーションが必要です。
マツ六株式会社は、クラウド化により環境変化に柔軟に適応し、迅速に全社で行動を起こすことができるようになりました。
これからも社会課題を解決する商品やサービスの提案に努めるためにも、クラウドサービスを積極的に活⽤していきます。
DX推進の取り組みを共有しませんか?
日本DX大賞 2025 エントリー募集中