自社を「町工場」と語る日本ツクリダス株式会社。そのシステム化は決してドラスティックなものではありません。8年という年月をかけ、一つの課題を一つのソフトウェアで解決するという地道な方法を選択。小さなデジタルツールを少しずつ導入することで、組織の中でシステム化に対する苦手意識を少しずつ払拭していきました。その途上で、工場の生産管理システム「エムネットくらうど」を自社開発。進捗管理に重点を置いた町工場目線ならではの使い勝手の良さが受け入れられ、現在では80もの企業に外販するまでになっています。クラウドの可能性を追及した事業展開だけでなく、自社設計・開発した仕組みを他の製造業にも展開するなど「これからの製造業の在り方」の可能性を広げる事例として「近畿総合通信局長賞」を受賞しました。
日本ツクリダス株式会社
所在地:大阪府堺市南区豊田1540番地2
設立:2013年3月13日
事業内容:ものづくりサービス業として4つの事業を展開
(金属加工・生産管理システム開発/販売、デザイン、コンサルティング)
従業員数:25人(男性15名・女性10名)
https://www.netkojo.jp/
画像で見える当社のDX

当社は平たく言うと町工場。
自社で試したことをサービスとしてお客様に提供する、つまり町工場が町工場のためにサービス提供しています。そんな当社のDXとして、簡単に4つの事例を解説します。
事務所

事務所には大きなモニターを壁に取り付けています。
各現場・工場はカメラが接続されており動画で所在確認ができる仕組みです。
「どこにいるのか」「いま電話に出られるのか」といった時に、探し回らずに画面で確認ができます。
工場

工場にも大きなモニターを取り付け、自社で作った生産管理システムで現場管理を行っています。
会議

マイクを使って音声を集め、自動で文字起こしをするクラウドサービスを活用して議事録を作成しています。
検査

iPad を使って図面を表示させ、ペンを使って直接検査データを記録しています。
同時にペーパーレス化にもなっています。
利用しているクラウドツール
当社では、用途に合わせてたくさんのクラウドツールを利用しています。
カテゴリをコミュニケーション、フロントオフィス、バックオフィスの3つに分けて解説いたしましょう。
コミュニケーション

まず、コミュニケーションです。業務連絡では主にChatworkを使っている他、GoogleWorkspaceといったGoogleのサービスもたくさん使用しています。
フロントオフィス(営業管理等)

次に、フロントオフィスとしては、営業管理でTrello、名刺管理でsansan、文書管理で Dropboxを使っています。
真ん中の「エムネットくらうど(M:net)」というのは、当社が開発した生産管理ソフトです。受注管理、在庫管理、メンテナンス管理、見積管理といった、生産にまつわる必要な管理ができるようになっています。
右は、販促に主に使っているものです。
Anchorというpodcast の配信ツールで、当社のラジオ番組を作って配信しています。
バックオフィス(業務管理等)

バックオフィス関連では、スマホでタイムカード打刻を行える「ジョブカン」や、求人に関してはWantedlyというサービスを使っています。
ピックアップツール:エムネットくらうど(M:net)

今回はピックアップツールとして、
当社で自社開発した生産管理ソフトエムネットくらうど(M:net) をご紹介します。
こちらがメニュー画面です。できるだけ「簡単」に「見やすく」を掲げて作成しました。
開発に至った課題

当社の場合、月間およそ1000点、図面1000枚ぐらいの受注があり、それらを管理するのにとても苦労していました。まず、納期が全て違いますし、製品によって工程も異なります。
誰が持っているのか、どこにあるのか、いつまでに必要なのか……が、
わからないづくしで非常に困った状況がよく起きていました。
「じゃあ生産管理ソフトを導入しよう」となったのですが……

システム導入のハードルが問題になりました。
まず、生産管理ソフトというのは非常に価格が高いです。
さらに、高機能・高性能なので難しそう。
実際に触ってみると、やはり難しいという印象がありました。
そこで、パッケージ化されている機能のうち、必要な部分だけピックアップして自社開発。
社内で運用することにしました。それらを現在は外販もしています。

解決したこと
エムネットくらうど(M:net)の画面です。このように色分けされ、例えば赤いものは納期が遅れていることを示しています。工程が細かく分かれているので「いまどの工程なのか」、誰が見ても非常にわかりやすいのが特徴です。

複数の部署担当者を経て仕事が完成していく場合、仕事の状況の「見える化」が不可欠です。
各担当者を一つのツールで繋ぐという考え方で、営業・製造・検査・出荷業務と一つの流れの中で状況が見えるようになりました。
例えば、営業社員がお客様に進捗を聞かれた場合、工場に確認しなくてもすぐに答えられます。製造担当であれば、仕事の順番と負荷が見える化されるため、営業からの問い合わせで手が止まることがありません。検査では、手元に届くまでわからなかった検査項目がすぐに分かるようになりました。出荷業務でも、伝票業務に漏れがなくなっています。
このように、一つのツールに全ての担当者が目を通すという仕組みに変えたことで、
非常に煩雑だった業務が、わかりやすく簡単になるという効果がありました。
現在、エムネットくらうど(M:net)は、全国で80社程度導入していただいています。
まとめ

最後にまとめです。
当社のクラウド化は、町工場でも導入できる低コストで簡単なものばかりを選定しています。
小さなソフトウェアで、一つの課題を一つずつ解決するという方法を取りました。
なぜそうしたかというと、組織の中ではデジタルツールに対し「苦手だ」と思う人が多いからです。大きな変化は受け入れがたい。でも、小さな変化だと受け入れやすく「便利になるならやってみよう」と思えるため、苦手マインドを克服しやすいメリットがあります。
クラウドツール導入やDXについて、最近よく耳にするようになりました。
しかし、何か大きなソフトを導入して崖を登るようなイメージとなると、非常に高い壁を感じるのではないでしょうか。一つの課題に対して一つのデジタルツールを当てはめる方法であれば、崖ではなくて階段を上るように導入できます。
当社でも、最初から全てを使っているわけではありません。
8年間かけて一つずつ課題を克服していくことによって、
現在のツール利用に至った経緯があります。
この中で、まずは一つできることを見つける参考にしていただければ幸いです。
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