事例

⼩さな葬儀社のIT化の取り組み

全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。

2020年11月27日に行われた福岡大会より、株式会社南福花園の事例をご紹介します。家族経営で葬儀社と花卉のギフト販売をされているのですが、業界的にFAXの使用が多いなどアナログな部分が多いという状況でした。業務効率化をはかるために、当初は外部システムを導入しようとしたのですが、予算の折り合いがつきませんでした。しかしそこであきらめず、独学でシステム化を行ったという事例です。

株式会社南福花園の概要

■会社名:株式会社南福花園

事業内容 

葬儀葬祭業(葬儀社)

⾃社斎場での葬儀施⼯、法要、仏壇販売、返礼品ギフトの販売

• ⽣花⼩売業(花屋)

フラワーギフト商品の⽣花をインターネットで販売

葬祭業への⽣花を⾃社供給(祭壇、⽣花スタンドなど)

■設⽴:1962年6月

■公式WEBサイト:https://www.nanpuku.co.jp/ 

株式会社南福花園は、葬儀葬祭業と花卉販売業を行う家族経営の企業。

葬儀会場では葬儀の施行や仏壇の販売、返戻品などのギフト販売を行っており、葬儀には不可欠なお花を販売する花屋を併設しています。

さらに、インターネットでもフラワーギフト商品を自社供給するなど、ECサイトについては以前より運用していました。

売上構成の⾒本

こちらは、株式会社南福花園の売上構成の見本です(見本のため正確な数字ではありません。)

一般的に、葬儀は冬・夏に需要が⾼まり、春・秋に需要が下がります。逆に、春・秋は⽣花の需要が⾼まりますが、冬・夏には需要が下がります。

このグラフのように、2つの事業がお互いを補い合って事業を展開しているのです。

IT化の取り組みの流れ

それでは、どのようにIT化に取り組んだかを見ていきましょう。

IT化に取り組んだきっかけはECサイト

(南福花園ECサイト https://www.nanpuku.co.jp/ )


まず最初に取り組んだのが、花のインターネット販売です。

こちらは2000年頃から EC サイトを立ち上げました。

必要なシステムがなく不便

導入当初は、ショッピングカートシステムはありますが、受注管理システムについては、クラウドで使えるものはありませんでした。

それから、フラワーギフトではお花に添えるメッセージカードの文言を指定して入力してもらうということが必要になります。しかし、カード入力に使えそうな小回りがきく入力システムが見つけられませんでした。

当時は法人取引が多かったのですが、掛売りに対応しているような販売管理ソフトというのもなかなかありません。結局は販売管理ソフトで手入力して管理していましたが、管理がものすごく大変だったのです。

システム会社に⾒積もり依頼したら……

そこで、2004年くらいにシステム会社で「クラウドで作ったらいくらぐらいかかるか」を見積もりしてもらいました。すると、とても⾼額だったため「それならもう自社で開発しようか」システムを⾃作を決意しました。

しかし、プログラミング経験者ではないので、ホームページ作成の延長くらいの間隔で考えていたため、そこから先は独学で茨の道を進み苦労しました。

ほどなくして、最初に着手した生花販売の方は、それなりに使えるようなシステムができあがり、次にほとんどがアナログな業務であった葬儀の業務について見直すことになりました。

システム化した内容

葬儀は業界自体がアナログな部分というのが割と多く、取引業者さんと合わせていく必要があります。どうしてもアナログな作業でやる必要が生じる仕組みでした。

そうはいっても、小規模事業ということもあり、できる限り早くデジタル化を進めたいと考え、葬儀の方でも案件管理・タスク管理・見積管理をシステム化しました。

具体的に何を作ったかを見ていきましょう。

案件管理

まず、案件管理です。

案件管理については、せっかく一度入力したデータがあるので、それを色々なものに活用していこうと考えました。

例えば、葬儀の時にかける看板や訃報連絡 FAXについても、案件管理に一度入力したデータをそのまま流用するような形にしています。

また、香典返しなどの返礼品と一緒にお渡しする会葬礼状や、業者への発注票、法要のスケジュールについても、ボタンひとつで自動的にできるようにプログラミングを行いました。

こうして、⼀度⼊⼒したデータを様々なものに再利⽤することで、それまでデータ入力に書けていた時間を⼤幅に短縮することができるようになったのです。

また、スケジュール管理機能で、お客様の法要スケジュールなども把握できるため、顧客への接点強化とともに営業活動にも役立てています。

タスク管理

次にタスク管理。業務フローを細かく分割して、それらを全部並べたものをチェックしていく形式にしています。

タスクが可視化され、やることが目に見えるので、その分時間短縮が図れました。

また、実施したタスク項⽬を完了することでミスや忘れ物がなくなり、業務の正確性がアップしています。

FAX送受信

業界的に、電話やFAXでのやり取りが中⼼で、どうしても見落としが発生していたため、⾃社システムにFAXが組み込めないかと取り組みました。

 FAX送信

FAX 送受信については、本来FAX サーバーなどを使ってやるのが一般的なのかもしれませんが、送信と受信で分けてシステム化しました。


送信は、発注、訃報連絡などで使⽤するのですが、WEBサービスの「秒速FAX」を利⽤しています。管理画面からサービス向けにメールを送信したものをFAX で転送してくれるというサービスです。

コスト面からも低コストで運用ができています。

FAX受信

FAXの受信に関しては Panasonicの「おたっくす」のメール転送機能を利⽤しています。

FAXを受信したら、その内容をメールでサーバーの中に データ保存して管理画面に反映させるという仕組みです。

FAXは手書きが多いため、画像で転送したものをそのままサーバーに保存している状況ですが、今後は手書き文字を判別できるOCRなども出ているようなので、データ化も考えています。

IT化の取り組みの⼿順


株式会社南福花園でのIT化の取り組みの手順について、あらためて振り返ってみましょう。

⼩さなことからIT化

まず、業務を細かく分解します。業務フローをしっかりと制定し、それらをいきなり全部やろうとするのではなく、まずは小さいところから始めていくことです。

不要になる作業をやめる

最初は、もしも何かあった時のための保険としてITとアナログを両立させながらやっていきます。

半年から1年ごとに全体の⾒直しをおこない、業務フローの中でIT化によっていらなくなったものは作業を取りやめます。

インターフェースにこだわる

誰でもわかるようなシステムにするため、誰でも理解しやすいように、また扱いやすい様にインターフェースを改良していきます。

IT化を行って良かったこと

葬儀業も生花販売業も、売上の波がある商売(フロービジネス)です。

そのため、最⼤値を軸に業務フローを構成してしまうと、⼈材に依存してコストが増⼤してしまいます。IT化することで⼈的投資を⾏わずに済み、コスト削減に大きく寄与しました。

また、繰り返しの単純作業など面倒な作業については、IT化により自動化したことで、作業時間が短縮。さらにミスや漏れが生じなくなり、その間に他の業務を行うことができます。

データは一元管理されるため、捜し物をする時間も大幅に軽減できました。


こうして空いた時間でお客様のフォローや商品開発を行うことで生産性が高まり、利益の拡大につながっています。

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