素晴らしい技術を持ちながら、なかなか受注に結び付かない。それは「何ができるのか」「いつ頼んでよいか」が解らないからではないでしょうか。株式会社メビウスでは、コロナ禍で大幅に受注減してしまった新潟の金属加工業を救うべく、各工場の技術と稼働状況を可視化できる仕組みを作り、ホテルの検索サイトのように発注側に開放。新たな受注に結びつける取組を行いました。ITから遠い業種でも、現在は代替わりで若い世代が代表となり、彼らの知見を活かして話し合いながらDXを進めているといいます。それは、システムを作る側にとっても、これまでとは異なるビジネスモデルの創出にもなるのではないでしょうか。
株式会社メビウス
所在地:新潟県新潟市中央区天神1丁目12番地3メビウス第一ビル 5F
設立:昭和58年10月1日
事業内容:システムインテグレーション、先端技術活用(機械学習コンサルティング、DX、バイオサイエンス)
従業員数:220名【2021年4月1日現在】
https://www.mob.co.jp
新潟県の課題とその背景

今回のサービス提供については、新潟県における課題をクラウドサービスで解決できないかと考えたのがきっかけです。その課題は3つありました。
1つ目は、コロナウィルスの蔓延により製造業の受注が大きく減ってしまったことです。
新潟県は、金属加工業や製造業の工場が多い地域なのですが、コロナウィルスによってサプライチェーンの中で生産がなくなりラインが空いて休みになっている事がありました。
2つ目は、大規模災害などが発生した際に事業継続性が脆弱であったこと。
そして 3 つ目が、新潟県はやはり製造工場のデジタル化が遅れてるという現状があることです。この辺りは、ずっと課題意識を持って行政も取り組んでいたとお話を聞いています。
そこで、新潟県の中小企業工場の11社と、新潟市の力添えをいただいて事業を進めることになりました。
事業コンセプト

事業コンセプトとしては、中央にクラウドサービスを置き、その周辺に資源・情報・設備・利益を生み出す仕組みを作り出すこと。
金属加工については、1社ではなく複数の会社が一緒になって1つの製品を作るのが主なビジネスモデルです。中央のクラウドサービスを皆で使うことで、「コミュニケーションの活性化」、情報シェアによる「見える化」を果たし、さらにシステムをシェアすることによる「低コスト化」を実現できるのではないかと考えました。
システムコンセプト

実際のシステムコンセプトをあらわしたのがこちらの図です。
中央にクラウドサービスを配置することで、複数の企業があたかも一企業のように経済活動、
サービスを提供できると考えました。
これが今までできなかったのは、システムがオンプレミスで会社ごとにIT資産を持っていて他の企業と共有ができなかったからです。現在はクラウドサービスがあるので、皆で共有することで、低コストでより良いサービスを使えるようになるのではと思いました。

実際に私たちが考えたシステムの「価値の流れ」がこちらです。
発注する企業と加工する企業では立場が異なりますが、金属加工でものづくりがしたい発注者が、いかに簡単に効率的にその加工企業を見つけられるか、加工企業が持っている設備を見つけられるか、このコーディネート業務の効率化を図ることで、ビジネスの効率化を図りたいと考えました。また、加工企業は技術・設備情報を対外的にアピールしていくことが営業活動になる、というモデルを作りたいと考えました。
機能一覧

モデルにしたのは、ホテル検索サイト。設備の空き状況を見られるように一括検索できるようにすることです。また、加工工場側では自分たちの情報や技術、空き状況を発注社および対外的にアピールすることが工場の稼働率アップのための営業活動になる、という新たなビジネスモデルも作りたいと考えています。
こうしたシステムを活用いただければ、眠っていた設備が多少なりとも稼働できますし、情報が会社をまたいで蓄積されていますので、その情報を活用して、企業ニーズを把握したり、見積金額を取ることでマーケティングに使用するということも構想中です。
操作画面イメージ

操作画面イメージがこちらです。QR コードをスマホで読み込むことで、皆さんもこの画面に入れます。ゲストログインでぜひやってみていただきたいです。
操作画面については、一括検索ということで色別に工程を分けていますが、熱処理や金属を削る工程や磨く処理など、何件ありますよと言う形で見られます。ホテル予約サイトのように、カレンダー形式でその工場がいつ空いているかも確認可能です。
ワンカンパニービジネス構想

このシステムによって、DXを実現したいと考えているのですが「X」つまりトランスフォームするのは何かというと、ビジネスモデルです。ワンカンパニービジネスという新たなビジネスモデルを構築したいと考えています。今までだと、その産業に特化した産業クラスターでチームビジネスを運営するのが主でした。
ワンカンパニービジネスでは、このプラットフォームに皆さんが入ってデジタルで繋がることで、そこからいくつもの新たな業種チームを作っていただき、新しいビジネス・業界にチャレンジしていくことを目指しています。
ツールの組み合わせでもっと便利に

ツールの組み合わせですが、本体のシステムとは別に、Slackとboxを使い、全員でチャットをしたり、図面をセキュアに共有するというのも実現しています。

最後にこのシステムの展望です。
企業ではさまざまな問題を抱えています。デジタル化の遅れやIT人材の不足など。その課題に対して、低コストでサブスクリプション形式など、導入のハードルが低い形でこのシステムを提供し、欲しいサービスを選んで使えるプラットフォームを目指して行きたいと考えています。
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