事例

魅力度最下位の佐賀県から挑む、映画監督との出会いで誕生したヤマトカンキョウのHRDX

株式会社ブランド総合研究所が、2006年から実施している「地域ブランド調査 都道府県魅力度ランキング2024」において、佐賀県が最下位となりました。そんな佐賀県にある、地域の水回りのインフラを支える企業が、映画監督との出会いを機に人材領域でのDX推進に取り組んでいます。

「佐賀県にも魅力ある企業がたくさんある。もっと佐賀県を知ってほしい」と、DX推進への取り組みを積極的に発信する、ヤマトカンキョウ株式会社のHR DXの事例をご紹介します。


1.日本DX大賞落選で気づいた、DX推進に大切なこと

ヤマトカンキョウ株式会社は、浄化槽や下水道の維持管理、汲み取り式トイレや簡易式トイレのし尿収集などを手掛けている会社です。1961年に創業以来、生活環境の保全や公衆衛生の面から、拠点のある佐賀市大和町を中心とした地域のインフラを支えています。

「ヤマトカンキョウで働くことで幸せを享受できて、家族や友人に自慢できる会社にしたい」という思いのもと、2023年から顧客管理システムや勤怠打刻システムの導入など積極的に社内DXを推し進めてきました。

結果、2024年にSAGA DX Awardを受賞。地域のDX推進モデルとして九州各地で講演する機会にも恵まれました。

経営戦略部部長の西嶋淳郎氏は、自社をより広く知ってもらうために、日本DX大賞に応募したものの落選。その後のポスターセッションでも思うようにいきませんでした。

これまでのDXの取り組みを振り返る中で、「効率化こそが従業員にとって最大の幸せ」だと思っていたのは間違いであり、どこかカッコつけていたこと、

「従業員にとって自慢したい会社を目指そう」という目的から大きく逸れていたことに気づいたのです。

ここでの深い反省をもとに、社内カルチャーやコミュニケーション改革に踏み込むことを決意しました。


2.映画監督との出会いがもたらした、“ありのまま”を引き出す映像制作研修のインパクト

ヤマトカンキョウは、カンヌ国際映画祭にもノミネート経験がある映画監督の山﨑達璽(やまざきたつじ)氏を社員の教育研修の講師として招きました。

山﨑氏からは、「iPad・三脚・マイクを使って、3人一組で会社のPR映像を作ること」という指令が出されました。

同時に、社員を5つのグループに分けて、「監督兼インタビュアー・カメラマン・出演者」という役割をメンバー内で自由に設定し、「入社歴の浅い社員が監督に指名されても、社長や先輩社員はその指示に従う」などのルールが設定されました。

普段、業務で交わる機会の少ないメンバー同士が協力し、意見を交わし合ううちに、職場の垣根を越えた活発なコミュニケーションが生まれました。その過程で、「ヤマトカンキョウの魅力は何か?」を掘り下げていくことで、自分たちが地域や会社に感じている誇りや思いを再認識する良い機会になったのです。

研修の翌日から、社員に大きな変化が起きました。現場作業のマニュアル動画や、手話の朝礼練習用ビデオなどが次々と社員の自主提案で作られました。

現在、自社の採用ページに社員のインタビュー動画を反映させるプロジェクトも進行中です。

これらの動きは社員自らの意思によるもので、従来のトップダウン方式から、社員が意見を発信しやすい文化が醸成され、「取りあえずやってみよう」と挑戦する組織風土へと変化していきました。


3.「HRDXとは、素直になること」

ヤマトカンキョウは、山﨑氏との出会いにより、「人材はコストではなく大切な子供たちのような存在」と考えが変化。DXの主役は社員一人ひとりであり、素直になって社員と向き合えば、HRDXの成功につながると気づいたのです。

子を見守る親の気持ちのように温かい気持ちで組織を育てていくこと。魅力あふれる企業にしていくためには、社員全員の協力が必須で、社員が自由にアイデアを出し合える企業風土を醸成していくことが大切です。

現在、ヤマトカンキョウでは、社員から社長に、新規事業を立ち上げたいという提案があり、実際にプロジェクトとして動いています。

「ありのままが響くんです」という言葉を大切に、これからも日本一魅力のある会社を目指して邁進していきます。


4.まとめ

佐賀を大切に思い、佐賀県に根ざした企業として、日本一魅力のある企業を目指しているヤマトカンキョウは、トップダウンで進めていた社内改革が、社員のためになっていなかったことに気づきました。試行錯誤を繰り返す中で出会った映画監督から、映像制作研修を通して「素直になること」や、自由にアイデアを出し合い、「とりあえずやってみよう」と言える環境の大切さを学んだ社員たちは、自分の会社に誇りを持てるようになり、マニュアルや採用サイトにアップする動画制作、新規事業立ち上げを提案し、次々に実行していきました。こうした組織変革は、まさに“社員の主体性を解放”する好例といえます。

社員全員が自由にアイデアを出し合える環境があれば、会社を誇れるようになり、魅力あふれる企業になれば、やがてその企業がある自治体も魅力度がアップする──。ヤマトカンキョウの今後に注目です。

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