事例

ミライロIDが叶える、障害者が自由に外出できる世界

障害者の多くが外出中に携行しているのが、障害者手帳です。サービスを受ける際に提示しますが、障害者手帳には発行自治体ごとに規格が異なり、所持する本人にとっても対応する事業者にとってもさまざまな負担があります。

この問題に対して、真正面から向き合ったのが株式会社ミライロです。障害者手帳を持ち歩かなくてもよい世界の実現、障害者手帳のフォーマットの統一化、障害者と事業者の負担軽減を目指して、「ミライロID」を開発・ローンチしました。

全国で300種類近く存在する障害者手帳の歴史と課題

日本には現在、1,000万人を超える障害児・障害者が暮らしています。このうち、厚生労働省の調査によると、障害者手帳を所持しているのは610万人(※)となっています。そもそも障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をまとめた、一般的な呼び方です。

もともとは戦後、32万人いたとされる傷痍軍人の救済の声に応えるために配布された「傷痍軍人手帳」に由来しています。のちに、さまざまな方の社会参加を後押しすべく、全ての身体障害者にも範囲を広げた「身体障害者福祉法」が1949年に制定。身体障害者への手帳交付がはじまり、1952年から障害者手帳の提示による交通機関の運賃の割引がスタートしました。

障害者手帳には、従来からさまざまな課題がありました。

障害者手帳を所持する本人にとっては、手帳所持によりさまざまな場面で感じる心理的な負担や抵抗感があります。具体的には、常時携帯すること、サービス提供側や雇用主などへの情報開示、提示するところを誰かに見られるといったケースなどです。また、手帳の紛失やそれを原因とする情報漏洩といったリスクもあります。

一方、事業者側にとっては、障害者側から提示された手帳が本物であるかを確認する方法がありません。障害者手帳は国ではなく都道府県、政令市、条例によっては中核市が発行します。統一されたフォーマットがなく、大きさも様式も色もバラバラで、2019年4月からは、障害者手帳のフォーマットにカードタイプも認められるようになったこともあり、ミライロの調査によると、日本では現在292種類(2025年6月現在、ミライロ調べ)も存在しています。

国が正式に定めている3種類の手帳のうち、有効期限があり2年ごとの更新が必須なのは精神障害者保健福祉手帳で、身体障害者手帳と療育手帳には期限が定められていないものもあります。幼少期に発行された手帳は大人になっても使えるので、提示された側は幼少期の写真を見て、目の前にいる人が本人かどうかを判断しなければなりません。しかも紙の手帳は、破けたり水に濡れたりしてボロボロになっているケースも少なくありません。。

※ 令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査):厚生労働省


「292→1」を目指したミライロID

ミライロは、2019年7月にデジタル障害者手帳「ミライロID」をリリースしました。スマートフォンのアプリに登録した障害者手帳の情報を提示するだけで、提携事業者のさまざまなサービスが受けられます。ミライロIDでは、292種類の障害者手帳のフォーマットをデジタル化することで、一つにしています。

ミライロIDの考案者とアプリの開発者は障害のある当事者で、ユーザー目線を徹底しています。また、ミライロの事業の一つである「ミライロ・リサーチ」で収集した、モニターからの意見も反映。障害者手帳を使用する場面は多岐にわたり、なおかつ頻繁に使用するため、心理的な負担を感じないこと、シンプルなデザインかつ使いやすさにこだわっています。

ユーザーは、所持する障害者手帳の種類、使用する補装具、身体特性、必要とするサポートなどの情報を登録・管理できます。政府とも協議を進め、2020年6月には、民間企業として初めてマイナポータルと連携し、公証性を確立しました。ミライロIDは複数の新規性を有し、特許を取得しています。


社会性と経済性を両輪で回すために――障害者と企業の間の、多様な架け橋

ミライロIDは、社会性と経済性の両輪を回すことで、障害者の社会参加を後押しするとともに、持続可能な社会の実現に寄与しています。具体的には、他のサービスとの積極的なAPI連携、ミライロIDが有する障害者提供の情報活用で、事業者はミライロIDのプラットフォームを介して障害者を対象としたさまざまなサービス提供が可能です。代表的な事例を以下にご紹介します。

ミライロID×外部サービスとの連携

ミライロIDと連携してコカ・コーラの「Coke ON」アプリに対応している自動販売機を利用すると、「Coke ON障がい者割引」が適用され、もらえるスタンプが2倍になります。また、地方の鉄道会社では無人駅も多く、本来、有人改札またはみどりの窓口で購入しなければいけない障害者割引の切符を、JR四国のアプリではミライロIDと連携することで購入できます。NECは、デジタル社員証とミライロIDを紐づけることで、障害のある社員が働きやすい環境を促進しています。

マーケティングとして活用:ミライロのライフプラットフォーム

ショップなどで使えるクーポン(ミライロクーポン)やそれぞれの特性に応じた広告、障害者を対象とした求人情報の掲載、さらに障害者割引価格で購入できるイベントのチケット販売(ミライロチケット)など、ミライロIDのライフプラットフォームを利用する企業も増えてきました。

ミライロIDのユーザー数は、利用可能な事業者の増加に伴い2026年2月に60万人、月に1回以上起動する月間アクティブユーザー(MAU)は約20万人へと、着実に増加しています。一方、導入事業者はリリース当初、6社だけでしたが、現在は約4,259社(2026年2月)の事業者で使用可能です。


ユーザーとミライロで作り上げる改善サイクル「ミライロ目安箱」

ミライロIDを支えるのは、事業全体を統括する代表などから成るミライロID運営事務局、ミライロIDのユーザーの声が集まる「ミライロ目安箱」です。ミライロID運営事務局は、ミライロIDユーザーが普段の生活で感じている日常生活の問題をWebアンケートで収集し、内容によってはサービス事業者に共有し、新たなサービスとしてユーザーに還元するという仕組みです。2024年4月1日から施行された改正障害者差別解消法、2026年7月の法定雇用率の引き上げに伴い、より高い水準での障害者対応が求められるようになったためです。

ミライロ目安箱から実際に生まれたサービスの一つが、ミライロIDと駐車場精算機との連携です。車を出庫する際、有人のコインパーキングでは、出口にいる係員に提示すると割引が受けられますが、無人のコインパーキングの場合、障害者が駐車場の利用代金を精算するとき、精算機に取り付けてあるオートフォンでオペレーターとやり取りをし、備え付けのカメラに障害者手帳をかざして割引を受けます。しかしこの方法では、聴覚に障害があると、オペレーターとのやり取りが困難で、障害者割引を受けられないケースもしばしば起こっていました。

目安箱に寄せられた聴覚障害者からの声を受けて、ミライロは、駐車場精算機のメーカー各社と連携し、QRコードの活用によるソリューションを共同開発。2022年8月から提供を開始しました。精算機に掲載されたQRコードをミライロIDでスキャンすることで、人を介さず障害者割引が適用されるので、聴覚障害者を含む全ての障害者が同じように割引を受けられるようになりました。2025年3月時点で、QRコード連携は100箇所(2026年2月現在では230箇所にまで拡大)を超える駐車場・駐輪場で採用されています。


「1を0に」――障害者手帳を持ち歩かなくても、軽やかに外出できる世界

ミライロは、「1を0にする」こと、障害者手帳の提示や確認そのものが不要になる世界の実現を目指しています。日本でミライロIDを導入している自治体は、全自治体1,724(※北方四島の6村含む)の5分の1にあたる350程度(2025年9月時点、インタビュー記事より)です。2025年に入り、厚生労働省から、各自治体にミライロIDに関する通達が出されたことも手伝って、自治体や国との連携強化により、さらに導入自治体を増やしていく予定です。

2025年3月から10月まで開催された大阪・関西万博では、海外からもたくさんの障害者が来場し、「自国の障害者手帳を日本で使えないか」といった声がミライロに数多く寄せられました。

日本では、障害者手帳を提示して障害者独自のサービスを受けられるのは日本在住の障害者に限定しています。日本の障害者は1,200万人近くいますが、世界に目を向けると、障害者はおよそ18.5億人いるとされています。これを電子化して、日本の障害者の外国訪問時、海外の障害者の来日時に提示するだけで国ごとのサービスが受けられるようになる仕組みを構築し、日本と海外の障害者が気軽に外出できる世界の実現を目指しています。


まとめ

障害者手帳の提示・確認は、障害者本人にとっては大きな心理的負担がかかり、事業者にとっては自治体ごとに発行されているのでフォーマットが非常に多様化しており、確認に手間がかかるなどのさまざまな問題を抱えていました。

それらを解決するべく、ミライロは、誰でも持ち歩くスマートフォンに注目し、「ミライロID」というアプリを開発・リリースしました。発案者と開発者は障害のある当事者であり、気軽に提示しやすいこと、使いやすいデザインなど徹底したユーザー視点にこだわっています。現在も順調に導入自治体数・事業者数を増やし続けており、障害者手帳を持ち歩かなくても適切なサービスが受けられる世界の実現に向けて、日本のさらなるユーザー数の獲得と導入自治体数・事業者数の増加、ゆくゆくは海外進出を目指しています。

<参考図書>

「バリアバリューの経営 障害を価値に変え、新しいビジネスを創造する」垣内俊哉 著 東洋経済新報社 2024年

<参考記事>

「なぜ4,000社が導入?「ミライロID」が見据える、障害者手帳デジタル化のその先」Spectrum Tokyo、長島 志歩 | 09.11.2025 他多数

エントリー締切 4/24
🚀💻

日本DX大賞

日本のDXは、ここから加速する。優れたDX事例を募集!

📅 【応募締切:4月24日】🏆 対象: 全国の企業・自治体
単なるデジタル化に留まらず、ビジネスモデルの変革や新しい価値の創出、業務プロセスの抜本的な改善を実現した、貴団体のDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦をお聞かせください。先進的な取り組みをお待ちしております。