事例

税理士法人マッチポイントの働き方改革

全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。

2020年11月11日に行われた札幌大会より、税理士法人マッチポイントの事例発表を紹介します。

高齢化が進む税理士業界において、クラウドシステムの積極的な導入による働き方改革で、従業員数を開業1年で3倍に増加させました。さらに社員全員を在宅勤務可能、全国対応の完全オンライン税理士サービスを手がけるなど、先駆的な経営を行っています。

税理士法人マッチポイント概要・事業の特徴

                

■法人名:税理士法人マッチポイント 

事業内容 :税理士業務

■設⽴: 2019年7⽉1⽇

従業員数: 24名(2020年11月現在)

WEBサイト:https://zeirishi-online.co.jp/company/

マッチポイントは税理士法人のベンチャー。日本一の会計事務所を目指し、この業界をよくしたいという情熱を持って業務に取り組んでいます。

ミッションは「中小企業のライフスタイルをデザインする」。

クライアントである中小企業の税務会計に留まらず「どういう会社にしていきたいか」「組織をどう作っていくのか」など多岐にわたるアドバイスを行っています。

そこで、お客様のライフスタイルをデザインする前に、まず自分たちのライフスタイルをデザインしようと「働きたい会社No.1」「家族に働いてほしい会社No.1」を目指し、クラウドを活用した働き方改革に取組中です。

税理士法人業界の構造

 税理士業界は高齢化が進み、札幌の税理士の平均年齢は60歳超えという状況です。

また、人数規模としては、20名以上の事務所は全体の1.7%、さらに50名以上となると全体の0.6%であり、19名以下の事務所が大半を占めます。

利用しているクラウドシステム

税理士法人マッチポイントで利用しているクラウドシステムです。

MoneyForward(マネーフォワード)
経理・勤怠管理のクラウドシステム

My Komon(マイコモン)
会計事務所専用のクラウド型グループウェア

MOT/Phone(モットフォン)
スマートフォンやパソコンでビジネスホンの機能(内線・保留・転送・代表番号発信など)を事務所に居る時と同じように利用できるアプリ

CLOUDSIGN(クラウドサイン)
WEBで完結できる電子契約サービス

DocuWorks9(ドキュワークス)
紙と電子文書を一元管理できるクラウドサービス

STREAMED(ストリームド)
紙証憑の自動記帳サービス。スキャンしたデータを1営業日以内に仕訳データ化

Chatworks(チャットワーク)
ビジネスチャットツール

ZOOM(ズーム)
ビデオ会議システム

達人
税務申告ソフト

クラウド実践によって変化したこと

クラウドシステム活用の実践によって変化したことはこちらの3つです。

1つずつ説明していきましょう。

①社⾵づくり、社内コミュニケーションの⽅法の変化

チャットワークの活用

社内のコミュニケーションに関しては、全てビジネスチャットツール「Chatwork」を導入しています。

関係者ごとにグループを作成し、グループの中で情報を共有していくという形でコミュニケーションを取ることで、報連相がリアルタイムになりました。

まず、通常チャットでお客様を含むチャットグループを作り、お客様とのやりとりはそこで行うほか、電話や直接話をした内容なども備忘録として残しています。

チャットがそのまま上司への報告になり、社内の関係者への情報共有も同時にできるのが大きなメリットです。

顧問先に関する情報や備忘録は社内用の鍵チャットにて行っています。

顧問先の中小企業へのクラウド環境導入については、社内に専任の導入担当者を配置し、2~3ヶ月かけて導入フォローをすることで対応いただいています。

ZOOMの活用

 次にZoomの活用です。

オフィスの役割は、企業理念や⽂化の醸成に非常に大きな役割を果たします。

状況に応じて在宅ワークを導入していますが、在宅で一人で仕事をしていると孤独感があったり、社内の人とのコミュニケーションが取りづらい環境になりがちです。

そこで、社内に大きなモニターを設置し、在宅で仕事をしている人はZoomをつないでいつでもコミュニケーションがとりやすい状態にしています。

Zoomを繋げることで、会社勤務と在宅勤務の方、それぞれの環境で働く人たちの⼀体感を出すほか、ちょっとわからないことがあった場合に、すぐに質問が可能な状態にしているのです。

マッチポイントカレッジの取り組み(MPC)

 次に、マッチポイントカレッジの取組みです。

Chatworkは文字によるコミュニケーション、Zoomは画面越しのコミュニケーションのため、これまでの対面よりもコミュニケーション能力が重要視されます。

そこで、顧問先企業の社⻑に信頼される担当者になるために、コミュニケーション能⼒を⾼めることを目的として「マッチポイントカレッジ」という社員研修を実施中です。

コーチングや会議の進め⽅などについても研修に盛り込み、社内的にも社会的にも役立てています。

グループ会社のマッチポイント株式会社では、これらのノウハウを含む、クラウド化による税理士事務所の業務効率化などについてもコンサルテーションを提供しております。

② バックオフィス業務のクラウド化

 次に、バックオフィス業務のクラウド化に取り組みました。この取り組みで、全員が在宅ワーク可能という勤務体系を実現しています。

マネーフォワード×チャットワーク×ZOOM

 会計システムについては「マネーフォワード」を会計・請求書・経費精算・給与・勤怠管理までシリーズで採用。

シリーズで採用することで、それぞれを連動して使えるというメリットがあります。

クラウド化しているため、在宅でも専⽤アプリから各⾃で登録し、給与計算システムに連動させることが可能です。勤怠管理・経費精算も出社せずに行えます。

また、給与明細もWEB明細対応なので、紙で出力は不要となります。

Excelなどでやってたときには、時間が掛かる、転記作業の間違いなどもありましたが、クラウド化することで、効率化することができました。

スケジュール管理

 スケジュール管理には、会計事務所専用のクラウド型グループウェア「My Komon」を使っています。

クラウドにすることで、外出先からでも全員の⾏動が把握可能になったことと、スケジュールを共有しているため、⽇程調整も楽におこなうことができるのが特徴です。

ペーパーレスへの取組

会計事務所ではどうしても資料が紙で送られてくるため、クラウド化する際の一番の問題点は紙の資料をどうするかということです。

 そこで、ペーパレスへの取り組みとして、契約書は電子契約システム「CLOUDSIGN(クラウドサイン)」を利⽤することと、「DocuWorks9(ドキュワークス)」にて全ての資料をPDF化しています。

事務所の一角に「ここにしか紙の資料は置かない」というスペースを作り、事務所に到着した書類は、すぐにPDFに変換し、お客様に返却というフローですべての書類をPDF化しました。

この取り組みで、実際の帳簿の記帳作業とかいうのはすべてデータを見ながら入力することが可能に。週1~2回はシフト制でスキャンのために出社が必要になりますが、ほぼ在宅ワークを可能にしています。

固定電話をクラウド化

「固定電話が会社にかかってくるのでどうしても出勤しなきゃいけない」ということをなくすため、オフィスにかかってくる電話もクラウド化しました。

 「MOT/Phone(モットフォン)」というクラウドシステムを導入しています。

スマートフォンやパソコンでビジネスホンの機能(内線・保留・転送・代表番号発信など)を事務所に居る時と同じように利用できるアプリです。

会社にかかってきた電話を、在宅ワークをしている⼈でも受信ができ、在宅ワーク同士でも、在宅ワーク中の人が取った電話を会社に取り次ぐことができます。

在宅ワークと事務所はそれぞれの様子をZoom画面で見ることができますので、会社にかかってきた電話を、在宅の人が電話で受けてZoom画面越しに着席状況を確認して、すぐに会社に取り次ぎするということも可能です。

会社に電話をかけてきた方は、全員出社しているのかと錯覚するくらいスムーズにやりとりができています。

③ 営業活動のクラウド化

 最後に、営業活動のクラウド化です。

ZOOMを使った⽉次報告

 税理士の業務は基本的に対面だったのですが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、Zoomをつかった月次報告を多く実施するようになりました。

メリットとしては、移動時間がなくなったことでそのためのコストが削減されたこと、

お客様との⽇程調整が容易になったことです。

これまで、移動に使っていた時間が1人当たり月20時間ぐらいあったのですが、営業担当8名分で160時間という時間が削減できました。

チャットワークを利⽤した相談業務

 Chatworkを気軽に相談できるツールとしても活用しています。お客様も時間を気にすることなく、疑問が生じたときに税理⼠に質問・相談できるという点と、事務所でも複数⼈でお客様対応をすることが可能なので、素早く適切に対応が可能になりました。

全国対応 税理⼠オンライン

税理士事務所は、現在は現在は地域密着で活躍されているところがほとんどです。

しかし、クラウド実践が進むことで、地域に関係なく優れたサービスを提供していくことが可能になると考え、新サービスとして完全オンライン対応サービス「税理士オンライン」をリリースしました。

基本的にはデータのやりとりとZoomで会社の顧問を行っています。直近では美幌町や仙台・東京・熊本・名古屋などのお客様からお取引をいただき、日経新聞にも取材いただきました。

さらなる収益力アップのために取り組んでおります。

ZOOM × チャットワーク

 他にも、お客様とのオンライン⾯談中に、他の専⾨家に相談したい案件が出てきたような場合に、Zoomとチャットワークを活用することで、他⼠業や専⾨家との協⼒体制を作っています。

その場でZoomに参加いただくなど、格段に早くにお客様の疑問や問題点が解決するのでとても喜ばれています。

税理⼠業界のクラウド実践が中⼩企業のクラウド実践を促進

画像:中⼩企業⽩書2018年)

参考資料として、中小企業がITに関することを誰に相談するかというグラフです。やはり公認会計士・税理士といった顧問の士業の方に相談することが多いことが見て取れます。

クラウド会計の導入を考えたきっかけに関してもやはり同様に公認会計士・税理士に相談していることが多いです。

 つまり、私たち税理士業界がクラウド化を実践していくことが、ひいては中小企業のクラウド実践を促進して生産性・効率性をあげると信じています。

 私たちはこれからもクラウドを実践し、業務の効率化に邁進していきます。