全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月11日に行われた札幌大会より、株式会社丁研の事例発表をご覧ください。
刃物研ぎという伝統技能において、通販での対応を行うために、クラウド型ホームページとYouTubeを駆使。ご自身の理想のワークライフバランスを実現された取り組みです。
株式会社丁研の概要
■法人名:株式会社丁研
■事業内容 :刃物研ぎ通販、刃物研ぎ講師、刃物研ぎ催事出店
■設⽴: 2008年3⽉1日
■従業員数: 1名
■WEBサイト:https://www.chouken1004.com/
刃物研ぎという職人の仕事
「刃物研ぎ」と聞いて、どのような仕事を想像されるでしょうか。
どのように仕事を行っているかについては、リンク先のYouTubeをご覧いただければよくわかります。郵便で届いた刃物を研ぐ作業は車の中で1つずつ丁寧に、研ぎ終わった刃物の発送作業はログハウスで行っています。
1つずつ梱包し、クリックポストで返送です。
起業時の苦労
独立当初は、飛び込み営業を行いルート開拓をしつつ、お電話でご依頼いただいたらすぐに訪問するなど、お客様の時間に合わせて朝から夜まで個別に対応していました。
開業当初はそれしか仕事のやり方が分からず、働き詰めで休みもありません。
移動時間の非効率さや、ガソリン代の経費に問題を抱えていました。
家族との時間も心のゆとりもなく、独立した理想を求めていた姿とは全く違う現実で、
一体何のために働いているのか……と思うようになっていたのです。
刃物研ぎ通信販売が転機に
転機が訪れたのは、独立から4年が過ぎた2012年の3月のことです。
「クリーニング店が通販をしている」という話を耳にしました。
通販というと売り手から買い手への一方通行の発送だと思っていましたが、商品を送ってもらって送り返すというやりとりができるのであれば、研ぎもできるのではないかと通販を手探りではじめてみることに。
ちょうど、わざわざ郵便局までいかなくても、ポスト投函で贈ることができるレターパックが発売になりました。
包丁や鋏を送るのに、サイズ的にもちょうどよく、お客様の送料も安価になります。そこで、レターパックで送れる刃物研ぎ通販を始めることにしたのです。
クラウド型ホームページ作成ツール「Jimdo」でホームページを作成
画像:丁研サイトより(https://www.chouken1004.com/)
「通販を始めるならちゃんとしたホームページが必要」と言われ、クラウド型ホームページ作成ツールJimdoにて作成することに。
Jimdoは htmlなどの専門知識も必要なく、誰でもブラウザから簡単にホームページが作成できる仕組みです。早速作り始めると、2時間でホームページが完成しました。
クラウドなので、出先からでもホームページが編集できます。クラウドならではのホームページを育てる楽しさを知ることができました。
Jimdoで作成したホームページには、動画も簡単に組み込めるので、文字だけでは伝わりにくい部分に活用できます。
ご利用者様からは「発送の仕方の動画があるので、荷造りが簡単にできました」と好評を得てており、ホームページを作成したことで、自動集客が可能になりました
YouTube動画へのチャレンジ
ホームページができたことで少しゆとりができたため、Youtube にチャレンジし始めました。
自宅でもできる包丁の送り研ぎ方や、はさみの研ぎ方などを掲載しています。自分でできない場合はレターパックで送っていただけるように、通販への誘導として使っています。
現在、公開動画数は100本、視聴回数はトータルで11万回です。
電子書籍「プロポーズは包丁研ぎのあとで」を出版
自己ブランディングとしてAmazon から「プロポーズは包丁研ぎのあとで」という電子書籍を販売しました。
恋愛小説と研ぎ講習を合わせたもので、書籍の中に包丁研ぎの動画を組み込み、動画からホームページへと誘導する形にしています。
丁研の成長戦略について 売上推移表
2015年から昨年2019年度までの売上推移をみると、
もろもろの取り組みが功を奏し、赤の通販が年々上がっているのが見てわかります。
青の出張研ぎが年々下がっているので、トータル的にはそれほど売上が伸びていないですが
出張時の移動時間やガソリン代の削減、さらに店舗における家賃の削減が実現できたため、利益率は向上しています。
1人で事業を行っているので、現在の純利益で十分満足です。
IT やクラウドは人が幸せになる手段
「そんな仕事成り立つの?」と思われるような小規模事業でも、人が喜ぶ技術があれば日本中から依頼が来る、ITやクラウドは、夢がかなう可能性がある手段だと私は思います。
セミナーなどで若い方とコミュニケーションを取ること、何にでも興味を持って取り組むことで、現在への道を切り開くことができました。
しかし、これから売上至上主義や、身の丈以上の拡大路線には走らないと決めています。
なぜなら、一度しかない人生である以上人間が人間らしく生活できるありかたを
私は大切にしたいと考えているからです。
現在は、休みの日に孫と遊ぶ時間を得て、日中に趣味のテニスやSUPを楽しんだり、読書の時間もできて充実した生活を送っています。
刃物研ぎという職人の仕事に、ITやクラウドを活用して良かったというこの体験が、同じような境遇の方の参考になれば幸いです。