事例

加藤税理士事務所「取り敢えずやってみる・積極的なクラウド活用で顧問先企業へのカンフル剤的存在へ」

全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。

2020年11月27日に行われた福岡大会より、加藤税理士事務所の事例をご紹介します。

税理士業界におけるシステム化の歴史とともに歩んできた加藤税理士事務所。2010年にはiPhoneをいち早く所員全員に配布、東日本大震災を経ての事務所内のクラウド化、そしてペーパレスへの取り組みは、コロナ禍において顧問先企業からもいっそう注目されています。

加藤税理士事務所の概要

■法人名加藤税理士事務所

事業内容 :税理士事務所

■設⽴:1967年

従業員数:6名

■公式WEBサイト: https://www.kato-ctao.com/

「関与先企業の繁栄は私たちの喜びです!」

を経営理念に、現所長は1990年より税理士業務を開始。30年の歴史の中で、どのようにシステム化・クラウド化していったのか、その歩みを順番にみていきましょう。

取り巻く環境の変化1 9 7 0年代〜8 0年代

 TKC(会計事務所と地方公共団体に専門特化した計算センター。TKC全国会は、その顧客の税理士・公認会計士約1万1400名が組織する日本最大級の職業会計人集団)に加入している関係で、 TKC のシステムを100%使っています。

随分前にさかのぼりますが、これまでの経緯を見ていきましょう。

70年代は紙テープによりデータ作成業務をしていた時代です。

80年代に入りますと5.25 インチ のフロッピーディスクを使っていました。80年代の後半になると企業の会計帳簿システムが登場。

1988年は、企業が自らパソコンにデータを打ち込んで、自社の経営状態を知るシステムが発表された年でもあります。

その翌年1989年には消費税が導入されました。

取り巻く環境の変化1 9 9 0年代〜2 0 1 0年代

  80年代が終わり、90年代に入ると、ネットワーク関係やパソコン会計が浸透していった時代です。

 TKC 会計事務所においては、会員同士の情報共有の場としてネットワークが構築されたり、大事なデータを保存するインターネットサービスセンターが2003年に開設、そして電子申告も始まり、それに合わせたサービスの提供がなされました。

また、2016年には電子帳簿保存法のスキャナ保存法が施行されています。そちらに対応したシステムも日本第一号で TKC が提供しておりますので、システムは全て購入して業務をしているという状況です。

取り巻く環境の変化2 0 1 0年以降

2010年以降に関しては、転換期だったのが2011年の東日本大震災でしょう。

バックアップデータに関しては USB フラッシュメモリーがほとんどだったのですが、津波や地震などでバックアップデータが流されたりしました。

「やっぱりクラウドですよね」とここで大きくクローズアップされたのです。

加藤税理士事務所では、もともと TKC のインターネットサービスセンターを活用していたため、そのままOMSクラウドに移行して現在に至っています

取り巻く環境の変化現在

OMS (オフィスマネジメントシステム)クラウドは、 TKC 会員専用のシステムであり、2012年よりクラウド化されています。

業務日報・チャット・スタッフのスケジュール管理業務・進捗管理・電子申請・電子申告といった業務は OMS クラウドで行えます。

つまり、会計業務・税理士業務に関しては、システムが揃っており、何ら支障なくこれまで業務を行うことができました。

しかし、翻って事務所内を見てみると、システム化されていない点が多くかったのです。

2008年に遡ると……

2008年はiPhoneが日本上陸した年です。

「何か新しく時代が変わるのでは」ということを感じていました。

その頃、監査業務におけるメモ書きや回覧資料、研修会受講レジュメなど、日常的に発生する資料は紙のまま。

2穴パンチで穴開けて、紐通しをしてファイリングするというアナログな業務も多くありました。

さらに、その頃総務担当が1名結婚退職。残りの1名で業務を背負うことになってしまったのです。

皆が資料整理などでバタバタしており、何かいいツールは無いものか……と考えましたが、全くプログラミングなどの知識がなかったので、色々周りに聞いてみたところ

 「 Google ドライブっていいらしいよぉ」と言われたので、さっそく使うことにしたのです。

それまで、全体ミーティングなどでの会議資料は、総務の方でエクセルなどで作成して全員に配布していました。

これを全部 Google ドライブにアップして情報共有し、会議をしながらそれぞれのスタッフから意見をとりまとめて同時編集を行うようにしたのです。

会議資料・回覧物・研修資料をGoogleドライブにまとめることで、総務の作業量を大幅に減らすことができました。

Google ドライブに関しては、個人でのファイルは設定しておらず全てを共有化。

新たな資料などの整理する際の最初のフォルダ設定については、効率的にできるように話し合って決めています。

ダウンロードやアップロードをはじめて事務所で経験したのはこの頃です。

現在では、研修会参加後などの紙資料は、最低でも翌日にはアップロードするようにとルールを定めて利用しています。

紙資料の場合は、綴じられているのを裁断するなど大変なのですが、今後はPDFで資料が配られることも多いので簡単にアップロードできることも多いです。

 翌年の2010年にはスタッフ全員に iPhone 4 S を支給しました。

当初は「所長は一体私たちに何をさせようとしているのか?」という声があがり、批難も相当受けたのです。

当時、特にこれで業務をさせるという意図ではありませんでした。

これからは、スマートフォンで様々なことが出来る時代になることを予測したため、スタッフには日常的にこういう物を取り入れてほしいと支給したのです。

その時はいろいろと言われましたが、日常的に全員がiPhoneを使うようになりました。

2011年頃〜

それまで顧問先に訪問する際に「顧問先ファイル」「会社ファイル」というのを使っていました。

事務所の書庫には全ての会社のファイルが格納されており、これをアップロードしようと考えたときに、「楽²ライブラリ」を使用することに。顧問先データをその都度ノートPCに取り込んで監査に出向くことになりました。

しかし、2~3年立ってくると

「やはり不便だな」

「BCP 対策考えた場合は所内のサーバーではなくクラウドでは」ということで検討するも、コストが見合わない状況に。

2015年〜

2015年頃が一番環境が変わった年です。クラウドストレージであるboxをすすめてもらい、楽²ライブラリから移行。

データのアップロードが迅速かつ楽になりました。

さらに、ちょうどこのころiPhone に続いて iPad も全員支給しました。

boxにアップロードされたデータは、スマホでも見れないことはありません。

しかし、監査先企業に出向いた際に、ノートパソコンで本来業務をしながら iPad の大きな画面で参考資料を確認しつつ業務できるようになったのは、業務のやりやすさに大きく寄与しました。

 その頃、所内では様々なエクセル資料を作っていました。

この中に「在宅勤務事前申請表」というのがありますが、実はコロナ禍の前からも実験的に在宅勤務を取り入れており、Kintoneを使い始めたのもこの頃です。

 この頃から顧問先企業に対する提案の内容も幅広くなり、総務担当のみならず現場担当者や経営者も楽になる「ペーパレス化」や、親の介護、⼦供の⾯倒を見る方への「働き⽅の多様性」への対応、そして、若年層の雇用も進めてきました。

 また、2015年(H27年)の電子帳簿保存法の改正に合わせ、スキャナ保存の承認を申請し、現在は「BtoBプラットフォーム 請求書」を使用しています。

これにより、納品書、請求書、領収書がペーパーレス化。写真は実際のスタッフの机の間取りですが、非常にすっきりしています。

このコロナ禍においても、急激に職場環境を変えずとも対応し切れているのは当初の

「いつでもどこでも」思考があったおかげかもしれません。

この経験を元に、中小零細企業の後継者問題、働き⽅の多様性へ向けた取組みの一つとして「クラウド化」を推進しています。

事務所が使っているサービスの事例紹介もしながら、様々な角度からのアドバイスを

経営者にもできるようになりました。

これからも、デジタル活用による顧問先企業の「事業創造」に取り組むキッカケとしていきたいと考えています。

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