クラウド化がなかなか進まない背景には「これまでのやり方」を根強く支持する層が厚いという特徴があります。ベテラン社員の多い歴史の長い企業ほど悩む問題ではないでしょうか。株式会社マルエム商会は、2023年で創業100年。支店ごとに独自ルールで別会社のように動く仕組みが出来上がっており、IT 活用は、メールとファイルサーバーのみ。「ガラケーで十分」という社員が大半だったと言います。しかしコロナで状況が一変。これまでのアナログなやり方を変える必要性を痛感したことで、1 年足らずで多くのクラウドツールを導入・活用するに至りました。オンラインコミュニケーションの活発化で、支店同士の連携が深まるだけでなく、社内IT担当者が営業とタッグを組んで、オンラインでの新たな営業手法を開発するなど、社内活用だけではなく社外の事業としても活躍しました。
今後もマルエム商会に関わる全ての皆様を幸せにするため、重要なツールであるクラウドを有効活用していきます。
株式会社マルエム商会
所在地:愛知県名古屋市中区錦1丁目18番22号 名古屋ATビル8階
設立:平成15年4月1日(創立は大正12年10月1日)
事業内容:電気機器、各種産業機械および水処理プラントの販売並びに電気工事、空調並びに管工事、機械器具設置工事の設計、施工一式
従業員数:148名(2021年6月30日現在)
会社紹介

当社は、大正12年創立。2023年には 100周年を迎えます。昨年度から次の 100 年を見据えた中期計画をスタートしました。3つのDを掲げ、データ・DX・社員の実働を掲げた経営を 目指し、これまでにない変革を遂行中です。
歴史があるゆえの課題

これまでは、それぞれの支店が全く別の会社のようにバラバラに運用されていました。
IT 活用は、メールとファイルサーバーを最低限の利用のみ。このスマホの全盛期に「ガラケーで十分」といった状況でした。そういった風土だっただけに、変革は思うように前に進みませんでした。
クラウド導入が加速したきっかけ

そんな中、状況を一変させたのがコロナです。
これまで紙で行っていた社内承認や伝票処理などの業務が滞り、お客様との面談もできなくなってしまいました。しかし、このようなピンチに陥ったのが、実は大きなチャンスだったのです。
「このままではまずい」という懸念が、社員の「変わること」への意識を目覚めさせました。そして、これからお話しするクラウド利用にとって大きな追い風となったのです。
クラウドを通して解決したこと

ここから当社がわずか 1 年の間に導入したクラウドツールを紹介いたします。以前からMicrosoft 365 は導入していましたが、使用は限定されていました。そこでTeamsなどのオンラインツールの積極的な利用を推進しました。その後に勤怠、ワークフロー、経営管理、社内ポータルなど矢継ぎ早に効率やコミュニケーションを強化するツールを導入しました。
また、お客様向けに AWS を利用した新しい販促モデルも開発しました。
今回はその中でもTeamsを利用した社内コミュニケーションチャットと、 AWS を利用した新たな販促モデルについてご紹介いたします。
Teams活用 Ⓜ知恵袋①

まず、Teamsチャットを活用した社内コミュニケーションの事例です。
昨年12月に「Ⓜ(マルエム)知恵袋」という情報共有のためのチャットを立ち上げました。要はYahoo!知恵袋のマルエム版です。当初は社員が興味ありそうなチャンネルを 8 つほど立ち上げ、試行を続けました。その結果、今ではチャンネルは 20 まで増えています。社内の投稿者、「いいね」と言ったリアクションも大きく増加しました。
Teams活用 Ⓜ知恵袋②

Ⓜ知恵袋では、こんな事例もありました。
ある時、福岡の営業が納期トラブルに見舞われました。
これまで製品の納期トラブルが起こると、営業社員がメーカーの担当者と一緒に交渉していましたが、営業社員が「Ⓜ知恵袋」でこのトラブルのヘルプを呼びかけたのです。
すると、東京・愛知・大阪など全国から製品についての返信が次々に返ってきました。なんと中国からもです。その結果、納期トラブルで困っていた 11 種類の製品は 1 週間で集まり、納期に間に合わせることができました。まさに、営業全員の中の循環で解決できた事例です。
Teams活用 Ⓜ知恵袋③

こういった事例を積み重ねながら、社員のアクセスは毎月 90% 近くで安定。「いいね」で、相手を称賛する風土が生まれてきました。少ない投資で身の丈に合った素早い動きが取れるようになったのです。
Teams活用 Ⓜ知恵袋④

今回のⓂ知恵袋の開設で個人の能力を結集し、組織の能力を吸収し、知恵が循環する基盤が構築できたことは大きかったです。
ただ、実はもっと重要だったのは、昨年度入社した新入社員による啓発でした。毎月 2 回、Teamsの使い方をわかりやすく、丁寧に投稿したことで「新入社員に応えよう」「これならできそうかな」という空気が醸成され、トップや経営幹部も積極的に発信することで早く浸透していきました。
ツールや仕組みは、入れただけでは上手くいきません。人によるソフト面の努力が大切だと気づかされました。
なお、このスライドも同じ社員が作成してくれました。
クラウドを利用した新しい販促手法の開発①

次に、 AWS を利用した新たな販促モデルについてご紹介させていただきます。
これまでの営業活動は、製造業のお客様向けにカタログや実機を直接見ていただくなど「製品ありき」の面直での販促が主流でした。
ただ、昨今は製造現場でもデータ活用や見える化のニーズが増え始め、IoT・DX といったソフト面への対応が必要となってきました。
当社ではそういったニーズの変化になんとか適用し、とあるスタートアップ企業を開発した魅力的なソフトウェアを発掘しました。しかし、まだお客様と面直で面談ができない状況だったため、このソフトウェアの販促は壁にぶち当たりました。
クラウドを利用した新しい販促手法の開発②

ここでも大きなブレークスルーがありました。
営業ではない社内 IT 部門が販促にジョインしたことで、AWS 上にソフトウェアを実装。お客様にオンラインでいつでもどこでも実機デモができる環境を 1 ヶ月で構築したのです。
このシステムは、名古屋工業大学内にあるラボでも動かせるようにしています。ITに長けた企業においては当たり前のことかもしれません。しかし当社にとっては営業部門と IT部門が融合した、画期的な売り方モデルの開発となりました。
クラウドを利用した新しい販促手法の開発③

成果もすぐ出ました。
展示会でコンタクトいただいたお客様に対して、すぐにオンラインでデモ実施したところ、ほとんど実績のなかった新規の大手のお客様でソフトウェアのライセンスを受注しました。ライセンスは 1 本に留まらず、2本目、 3 本目と購入が広がっていきました。
このソフトウェアの商談は、ほとんどがオンラインでお客様にとって効率的な提案ができるようになります。当社の付加価値の向上にも大きく寄与しました。
こうした取り組みにより、お客様からの見られ方も「100年の歴史あるメーカー代理店」から「 IT の相談ができる技術商社」に少しずつ変わってきているように思います。
まとめ

これまで紹介してきた通り、クラウドツールを積極的に活用・実践したことで、社員のつながりやコミュニケーションは活性化し、新しい売り方で新しい顧客も獲得することができました。今後も積極的に様々なクラウドツールの導入を進めていきます。
今回の取り組みを通じて様々な企業の知見を共有することで、更にクラウド活動が続けられることを強く感じています。
むすび

これからも経営理念である「五訓」を実践していきます。
次の100年も社会を豊かにし、お客様・仕入先様・社員といったステークホルダーをこれまで以上に幸せにする会社を作り上げていくため、クラウドを重要なツールとしてフル活用していきます。
DX推進の取り組みを共有しませんか?
日本DX大賞 2025 エントリー募集中