DX事例

人材不足解消から残業ゼロへ:ロジックスサービスのDX挑戦

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業はアウトソーシングの一種で、経理だけ、人事業務だけといった、社内の業務を切り出すのではなく、顧客に価値を提供するために企業内で行われている、ビジネスプロセスの代行を請け負うものです。BPO事業を手掛ける企業でも、業務にはアナログな部分が多いため、大手企業を中心にデジタル化への移行の動きが活発化しています。

本記事では、東北のBPO企業として初めて経済産業省のDX認定制度を受けた、株式会社ロジックスサービスの事例をご紹介します。

BPO事業を手掛ける企業が、DXに取り組む理由

株式会社ロジックスサービスは、宮城、岩手、青森の3つの拠点を持ち、レポートや集計資料などの各種データ入力や給与計算、経理業務のアウトソーシングなどを手掛ける会社です。もともとは運送業を営んでいましたが、顧客の給与計算や経理業務などの代行サービス業に完全にシフトしています。

BPO事業を始めた当初は、人材確保が十分ではなく、残業の多さやスキル不足に悩まされていました。業務のアウトソーシングを請け負うロジックスサービスにとって、デジタル化に取り組むことは、会社の成長にプラスになるし、顧客に安定したサービスを提供するためにも必要不可欠だったのです。

実践事例の紹介

そこでロジックスサービスは、Google WorkspaceやChatwork、Zoomなどのクラウドツールを活用して、人材不足の解消、残業削減、スキル不足の解消に取り組むこととしました。

人材不足の解消

まず、人材不足の解消に向けて、社内の採用方針を決定。残業ゼロ、休日出勤の振替休暇取得を全社的なルールとし、学生目線に立った採用活動を展開しました。

Googleフォームでアンケートを取り、ChatworkおよびGAS(Google Apps Script)との連携で、学生の生の声を組織内で共有。

学生がアンケートに回答すると、リアルタイムで採用チームのグループチャットワークに通知が届くようになっています。学生の声を社内で共有する仕組みを作ったことで、採用担当チームがダイレクトに反応できる仕組みを構築しました。これにより、新卒採用が大幅に増加し、7年連続でマイナビの仙台合同説明会で集客1位を獲得するまでになりました。

残業削減

次に、業務の時間短縮に取り組みました。

改善事例報告会を毎月、DX改善大会を半年に1度開催することで、全社員参加型の業務改善活動を推進。時間短縮できた事例を全拠点で共有しています。報告会とDX改善大会には社長も参加し、各チームにフィードバックをすることで、PDCA サイクルを早回しにしました。

また、顧客とのコミュニケーションの構築方法も改善。共有不足をなくしミスをゼロにするために、従来のChatworkや電話での受注に加え、Zoomを使用したオンラインミーティングを毎月実施。

Looker Studioを共有し、業務の進捗状況がリアルタイムで分かるようにしました。これにより、Chatworkでのやり取りが減少した他、サービス担当者の作業時間のムラも少なくなり、顧客へのサービスの均一化が図れました。

クラウド導入にあたっては、社内で特に抵抗はなかった一方で、クラウドやZoomが苦手な顧客に対しては、電話しながら使い方をレクチャーするといったサポートを実施。クラウド活用の理解を深めてもらうことで、最終的には顧客の協力も得られるようになりました。

こうした一連の取り組みにより、最大月58時間あった残業が月0時間を実現。社員のワークライフバランスが大きく改善されました。

スキル不足の解消

スキル不足に対しては、拠点間でのGoogle Meetを活用した個人教室の開催や、DX改善大会での事例共有によって、社内全体でスキルの底上げを図りました。

社内でスキルの横展開を行うため、Google Meetで全拠点をつなぎ、個人教室という勉強会を開催。

社員のスキルのばらつきが少なくなり、特定の人に依存していた業務を、ダブルキャスト制を敷いたことで業務の属人化の排除に成功しました。

現在では、特定の社員に依存しない業務改善が全体の92%まで進んでいます。

また、個々のパソコンではなくGoogleドライブでデータを管理。毎日席替えを行い、データを個人管理にしないよう属人化を防いでいます。

クラウド活用による成果

ロジックスサービスでは、人材不足の解消、残業削減、スキル不足の解消の3つに絞り、DXを進めていきました。

Google Workspace、Chatwork、Zoom、Looker StudioなどのクラウドツールやGASを活用してデジタル化を図った結果、人が採用できる会社に変化。残業や業務の属人化をなくし、サービスの安定的な提供を実現できたことにより、社内の生産性と効率性が飛躍的に向上した他、顧客サービスの質も高められたのです。

BPO業界では、企業で受注した依頼をフリーランスなどに外注している企業もある中、ロジックスサービスは全て自社の社員で行っています。こうすることで、顧客からの依頼にスピーディーに対応できています。クラウドの導入に伴い、現場の働き方を変えたことで、経済産業省からDX認定企業の指定を受ける(BPO業界としては東北初)といった、大きな成果につながっています。

まとめ

ロジックスサービスは、人材確保、業務の効率化、スキルアップなどの企業の課題に対し、クラウドツールやGASを駆使しながら解決していきました。その結果、残業ゼロの実現や新卒採用など、目覚ましい成果を上げています。

今後も、さらなるビジネスプロセスの最適化や企業内の改革に取り組むとともに、デジタル人材の育成などによってDX推進体制を構築し、外部へはデジタル化への取り組みを支援する伴走型コンサル事業を展開していきます。