事例

敷居は低く、透明性は高くスモールスタートから始める建設業のDX 

働き方改革・DXともに進みが遅い建設業界に追い打ちをかける高齢化。城善建設株式会社でも人材の空洞化に悩んでいました。「このままでは若い人が来てくれない」という危機感から「安心して業務を遂行できる環境構築が必要」と社員が団結。「DX業務環境で若い担い手を迎えよう」と、全社を上げ取り組むことになりました。「敷居は低く」という題名通り、業務のリプレースを中心に2年前からDXを開始。リテラシーを意識することなく運用できるように考えぬかれた運用で、今では社員全員がシステムを使用しています。

城善建設株式会社 

所在地:和歌山県和歌山市十一番丁10番地(ジャムビル2階)

設立:1963年6月30日

事業内容:宅地造成・注文住宅の設計施工、一般土木事業、マンション/店舗等大型建築、身体障害者等公共施設の建築
従業員数:40名
http://www.jyouzen.co.jp/

建設業界を取り巻く現状 労働者不足が招く影響

建設業界の社会的背景としては、今後の労働力の減少があげられます。

2025年には、技能労働者が全国的に約130万人不足すると予測。建設業に携わる約1/3の職人さんがいなくなるに等しい数字です。

この人手不足問題の主な要因は、建設業のワークライフバランスが保たれていないことにあ

ります。労働時間や年間出勤人数は改善されず、働き方改革も進んでいません。若い労働力の業界離れは深刻です。

改革が進む他業界とのギャップが大きくなっており、建設業界は生産性の向上が求められています。

当社の現状と全国平均を比較してみると、一見、全国平均と相違ないように見えます。しかし、平均年齢と41歳以上の全体に占める割合は共に全国平均値以上で進行。人材の空洞化が顕著に表れています。

この問題を解決すべく、真剣に議論を重ね、

・働き方改革

・BCP対策(事業継続計画:災害や感染症、不祥事などによる事業への損害を最小限にとどめ、早期復旧を可能とするための方法や手段を事前に決めておくこと)

そして

・新型コロナウイルス感染対策

この3つを同時に行い、安心して業務を遂行できる環境構築が必要であると結論づけました。

その結果、パラダイムシフトをして「DX業務環境で若い担い手を迎えよう」と全社を上げ取り組むことになったのです。

Road to DX アナログ思考 から デジタル思考へ

DX業務環境を構築していくにあたり、アプリケーションの選定には4つのコンセプトを掲げました。

・Share
・Security
・Speed
・Stress Free

です。その結果、AnyONE ・box ・ Slack の3つのアプリケーションを掛け合わせ「最小限で最大の業務効率を追求する」方針で取り組むこととしました。


当初から複雑な仕組みにしてしまうと、全社員に定着するまでの時間がかかることが懸念されたためです。
従来の業務と比べて大きく変わらず、負荷がかからないシンプルな仕組みになるよう心がけました。

Point1 Share

まず考えたのは「業務の属人化情報共有の活用格差をなくす統一のプラットフォームが必要」ということです。

大型物件と戸建住宅は、業務管理方法が異なっているため一つのシステムで管理することが困難でした。しかし、全てを一元管理できるオールインワン基幹システム「AnyONE」 の採用でこの問題は解決。不動産価格情報もあわせて管理が可能となりました。

AnyONEは、Excel との親和性が非常に高いので、Microsoft の Power BIを現状分析に活用。や最新の情報でKPI や契約率など多角的に可視化することができました。

全員で情報共有したことで、データ格納量は2倍、通信データ量は4倍に。生きた情報が動くようになった結果です。

Point2 Security

次に、セキュリティ対策です。リテラシーを意識することなく運用できるように考えました。

まず、感染の主な原因である「ウイルスが添付されたメール」を開くことを防止するために社内間のメールを禁止。Slackをメインの業務通達ツールとしました。

さらに、感染拡大の要因であるネットワーク通信も廃止。直接boxの指定フォルダにスキャン格納する方式を採用しました。

Point3 Speed

特に効果を発揮した仕組みはワークフローシステムです。

一般的な出来上がったワークフローシステムではなく、boxの標準機能である「box RELAY」で運用しています。

社内情報共有の核となっているSlackとの連携で、承認依頼アナウンス通知から処理までの

時間短縮を実現しました。

決められた申請フォルダに申請書を格納すると、承認者に対し自動でSlack通知を発信する仕組みです。通知をトリガーとして、boxを開いて内容を確認して承認の判断ができます。

承認の場合は、自動で申請書は承認フォルダで格納され、同時に経理部へ承認結果のSlack通知が送信されます。その後、経理部が「処理済み」フォルダーで格納すると同時に、申請者に対して「承認完了」が通知される仕組みです。

非承認の場合は、即座に申請者に差戻しが通知され、申請書は自動で差戻しフォルダへ移動します。

この仕組みを作った結果、従来の紙ベースの場合は、申請から完了まで最短でも2日かかっていたところ、10分で承認完了となりました

この仕組みを応用し、FAX受信もboxを介してペーパーレスでどこでも確認できるようになりました。

Point4 Stress Free

ここで、実際にDX業務環境で働く社員の方へインタビューです

―DX業務環境になる前の、煩わしかったことを教えてください。

DX業務環境への移行前は、すべて紙ベースや電話の作業でした。不備があった場合、修正作業で情報を集めることが難しかったですね。各担当者に電話し関連資料を提出してもらうとなると、他の業務にも影響が出てしまい、毎日の残業が平均2時間は発生していました。


―DX業務環境に変わった後、どのような変化がありましたか?

デジタル化し情報を共有したことによって、作業ミスは激減しました。仮にミスがあっても迅速に処理ができるようになりましたね。残業が減って、休日出勤もなくなったことから休みの日は楽しく過ごせるようになりました。

こうして、当社のDXはスモールスタートモデルとして順調に稼働を始めることができました。

今後は、若い担い手の新規業務としてMAを導入、インサイドセールスやBI等の業務を追加し、さらなる会社の事業領域拡大発展を目指します。

きっかけは、若い担い手のためでした。現職の社員たちが心から会社の将来を考え、今できることに一生懸命取り組もうと率先して活用を始めたことが、この成果をもたらした最大の要因だと思います。

これからも、若い人たちの笑顔があふれ、先輩社員たちと強いメンバーシップを築いていく「人と人をつなぐDX 」を志し発展させていく所存です。

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