事例

街のパン屋さんの「働き方改革」および「DX対応」について

いまいパン合同会社は、沖縄で人気のベーカリーを経営しています。しかし、製パン業界は薄利多売のビジネスモデル。材料費の高騰、コンビニを含むライバル店との競争激化、長時間労働による人離れなど問題は山積みです。そこで経営改革のためにDXに踏み切ります。売上管理・勤怠管理・給与管理・財務会計のクラウドシステムを導入。売上管理データからのABC分析によって売れ筋商品を選別することで、毎日の廃棄ロスを1/10に削減。新商品開発にも役立てています。また、スタッフの勤怠管理を紙からオンラインへ変更、給与計算をシステム化することで、事務業務による長時間労働から解放されました。小売業のDXとして非常に参考になる事例として「沖縄総合通信事務所長賞」を受賞しています。

いまいパン合同会社

所在地:沖縄県那覇市真地12-4
設立:2012年10月4日
事業内容:パン・ケーキ・焼き菓子の製造販売
従業員数:28人(内パート19名:2021年9月現在)
https://imaipain.com/

製パン業界の実情といまいパンの課題対策

製パン業界は、薄利多売のビジネスモデルです。原料費や人件費など固定費は増えるばかり。沖縄でも状況は同じで、利益率の高い商品開発、内部効率化と商品の値上げが必要な状況です。

さらに、本土から人気のパン屋が沖縄に進出。大手コンビニとの客の奪い合いもあり競争は激化しています。認知度を向上させる必要がありました。

そればかりではありません。製パン業界は長時間労働が常態化しており、後継者不足の前に採用難・定着率向上が課題となっています。私も昨年は体調不良にもなり、まさに「働き方改革」の推進が求められている状況です。

経営・業務課題の解決に向けて

これらの経営・業務課題の解決に向け行ったことを紹介します。

①利益率の高い商品開発

2015年に、沖縄県産業振興公社の互助事業に採択され、比較的日持ちが良く利益率の高い新商品「琉球世界遺産Sweets」シリーズを開発することができました。いまいパンは、ユネスコ世界遺産・首里城と識名園を結ぶ道の途中にあることから、首里城と識名園という2つの世界遺産をモチーフにしたお菓子「識名園るうまんぺい」「琉球国王のティータイムクッキー」「首里城かりーぺい(嘉例餅)」の3商品を販売しています。

②いまいパンの認知度向上

沖縄でも近年は、本土から高級食パンの全国ブランドが続々進出。大手コンビニ3社も季節のスイーツなど矢継ぎ早に展開しています。

那覇市のはずれに位置する当社も認知度向上策として、Web・SNSを活用しています。

ホームページブログfacebookInstagram を活用

また、マリトッツォなどの新商品を沖縄ではいち早く取り入れて開発。デパートりうぼうへの催事出店、さらに世界遺産「識名園」に「王朝食パン識名園 」を出店しました。

③内部効率化と値上げ検討(クラウドシステム活用)

原材料や人件費など固定費の急増によって、売り上げが向上しても利益が出ない構造に直面。給与支払事務などをExcel で管理したのですが、それにも限界がきました。

また、値上げ検討のためには、商品ごとの売上状況を確認する必要があります。

支援機関と相談し、解決策として財務会計・給与管理・売上管理・勤怠管理のクラウドシステムの導入を進めることになりました。

④働き方改革の推進

パン業界では珍しいことではないですが、せっかく育った職人スタッフが独立を希望して退職。また、バイトスタッフも長続きしないなど、人材の確保に苦労するとともに求人・採用にコストがかかっていました。

忙しさのあまり、内部のコミュニケーションが不足した結果、後戻り工数が増加。改善提案などの発言機会もない状況で、スタッフのモチベーション低下を招いてしまっていました。


そこで、ファシリテータを招聘。「働き方改革」の推進に取り組み、業務の「見える化」を行いました。

IT・クラウドの活用状況

①ITクラウドシステムの導入時期

IT,クラウドシステムの導入は2017年から開始しました。

まずは古島店の売り上げレジをエアレジにしたことを皮切りに、コミュニケーションは2019年からLINEに変更。勤怠管理はKING OF TIME、給与管理・財務会計はMFクラウドを導入。IT補助金なども活用して導入を進めました。

②IT・クラウドシステムの導入効果

このように、導入したシステムを活用することで、業務の効率化だけでなく、戦略化にもつながりました。

③街のパン屋のDX活用

エアレジの機能を活用し、ABC分析を行ったものがこちらです。

売上が少ないCランク商品については、半分を廃盤とし、上位の8割を占めるAランク商品をヒントに新商品開発を検討。Aランク商品の中で看板商品以外のものを値上げ対象として選定するなど、経営判断に活用できています。

また、年別・月別・日別・曜日別の売上情報や来店客情報を確認。季節毎商品やイベント参画、店舗別のスタッフ配置などの経営判断に活用しています。

導入効果としては、残業時間が平均2時間ほど削減帰宅時間が早くなり、特に社長/店長の残業減に貢献しています。

見える化でスタッフ意識が向上、在庫チェックで機会ロスが減少しました。

今後の予定

IT・クラウドを活用しさらなる改善へ

これからも、IT・クラウドを活用しさらなる改善を目指します。

例えば、売上管理からの来店客データ分析によるシフトスタッフ数を適正化すること。シフト計画作成工数を削減するために、シフト申請にKING OF TIMEを活用する予定です。給与明細も現在は紙で配布していますが、PDFファイルデータでの提供に移行させます。

新人の早期戦力化・ベテランの活性化を目指してマニュアルをクラウド化。ゆくゆくは新人がマニュアルを更新できるようにしたいと考えています。

真地本店・古島店に導入済みの「アレクサ」を、音楽再生機から朝礼などコミュニケーション強化のために活用したいです。

「働きやすい」「辞めない」街のパン屋さんへ、まだまだ開拓していきます

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