コロナ禍でオンラインによるリモートワークに移行し、大きなメリットと共にデメリットを感じた企業も多いのではないでしょうか。リモートワークは一時的なものとし、緊急事態宣言後には出社体制に戻す企業も多く見られました。そんな会社に見ていただきたいのが、この株式会社ニットの事例です。株式会社ニットは、世界の33カ国に400人のメンバー、全員がフルリモートで働く企業。代表の秋沢さんは、旅をする中で「多くの選択肢を作っていくことが大切」だと考え、企業のバックオフィスを中心とした業務をオンラインで受注する「ヘルプユー」というサービスを立ち上げます。ポイントは、1つの業務を1人ではなくシェアして行うことで属人的にならないようにしていることです。これからの労働力減少に伴い、企業は多様な働き方を受け入れる必要があります。株式会社ニットの取り組みは、テレワークに移行できなかった企業が抱える課題を、どのように解消しているかにおいて、見るべき点が多く参考になる事例です。
株式会社ニット
所在地:東京都品川区西五反田 7-22-17 TOCビル 10F 41号
創業:2015年
事業内容:オンラインアウトソーシング/オンライン特化型アウトソーシング
/海外進出支援/オンライン学習/メディア運営
従業員数:20名(業務委託含む約400人全員がフルリモート)
https://knit-inc.com/
コロナ禍で変わったアウトソーシング依頼業務内容

当社の「HELP YOU」は、経理や人事採用、総務や営業サポートなどのバックオフィスを中心とした業務を在宅メンバーにオンラインでアウトソーシングできるサービスです。
一番の特徴は、ディレクターがチームを作ってお客様と対応する点。対応は個人ではなくチームで行いますので、経理やデザインなど「1人を雇用するまでもない」複数の業務をサポートするので、幅広い業務を発注することができます。
コロナ禍ではオンラインでテレワークを多くの方々が経験されました。その中で、営業組織のオンライン化のための資料や動画を作成したり、派遣社員に依頼していた業務を思い切ってアウトソーシングしても良いのではと考える企業も増えてきています。オンラインなので、エリアを問いません。地方企業さまからの発注が増えるなどの変化もありました。

当社がトライしている社会課題は、企業における「労働力の減少」、そして「働きたくても働けない」の解消をしていくことです。ただ、組織としての課題もあり、フルリモートワークでは孤独になりがちであるとか、会社から見るとミッション・ビジョン・バリューが浸透しづらいというものがあります。
そこで、当社がクラウドツールを連携して、この点にどのように取り組んでいるかをお話しいたします。
世界観を実現するためのクラウドツール

「世界観を実現するため」ということで、先ほどの「孤独の解消」や「ミッション・ビジョン・バリュー」の浸透のために、こういったツールを活用しています。
フルリモート経営 業務偏

当社は全員がフルリモートなのですが、「顔が見えるチーム体制」という形で作っています。
これらのツールを使い、ディレクターがメンバー1名1名に橋渡しをしてサポートするという形です。

例えばこのように3つのタスクがある場合、タスク1についてはAさんだけでなくCさんも、タスク2についてはAさんだけでなくBさんも、というようにワークシェアリングを行っています。「いま誰が何をして、どういう状況になっている」という内容をドキュメントに残しておくということを意識して行うことで、何かあっても引継ぎを容易にしています。

情報の蓄積化と可視化、そして共有をいたるところで進め、マニュアル化しています。
コミュニケーションについてはChatworkを活用して誰でも見られるようにしていますね。

テキストでのコミュニケーションのスキルアップはとても難しいのですが、3つのルールを設けることで対応しています。
まずは、緊急依頼についても「すぐ見るとは限らない」という前提を持つこと。そして、議論については3ラリー以上続けない。もし続くようであれば、直接話すようなことです。文章は基本的に残るものなので、ネガティブ情報は残さないようにするなど、テキストコミュニケーションにおける所作を習得してもらい、円滑な業務遂行につなげています。
フルリモート経営 組織風土醸成偏

また、この中でキャリアアップ施策も対応しています。例えば「ライターとしてやっていきたい」という人には「テキストコミュニケーション講座」「SNS運用法情報交換」などの機会を設けるなど、スキルアップの機会を随時設けるようにしています。

当社の特徴の 1 つとして、オンラインでのコミュニティを作っています。
業務に関するコミュニティ以外にも、業務以外のものもあるのが特徴です。
業務以外のコミュニティについてはペットですとか、お母さん同士が悩みを共有したり、国際結婚の方が集ったりなど、多様な内容になっています。

コミュニティの中で繋がりを得ることで、心理的安全性を育み、文化の醸成を実現したいということを心掛けてやっています。オンラインコミュニティの中では、オンラインでのイベントも実施したり、YouTube的な動画を作ったりなどもしました。

それ以外にも、オンラインで入社式や表彰、忘年会などの季節イベントも実施しています。昨年は、日本ではまだ珍しいということでNHKさんにも取材されました。

こちらは、ミッション・ビジョン・バリューみたいなものをどう浸透させていくかという 1 つの事例です。「お互いに褒め合う文化」を醸成するために「喜びの部屋」を作りました。
誰かの良い事例があったら、それを全員でリアクションして褒め合うというものです。
例えば「売上げが上がった」「契約が取れた」といった者に対して「いいね」「めっちゃすごい」といったように皆で反応します。1人でやってる内容を、全員で共有していく仕組みを意図的に作ることで、孤立を防ぎ、モチベーションをアップさせる仕組みです。

バリューの浸透については、このようなフォームを作成し、皆に投稿してもらっています。
どのように、バリューを体現した行動をしているかを皆で共有することで「こういう対応しているんだ」と他の方にも参考になりますし、バリューへの意識付けや、さらにブラッシュアップした行動につながるという効果があります。
ニットの実績

これらの取組の結果、4期連続で増収を達成いたしました。

メンバーの定着率やお客様の定着率、そして、これからも働き続けたいというメンバーいずれも90% 以上という形で評価・信頼いただいております。
事業としての成果

事業としての成果ですが、人材の強化、そして幸せの創造、社会への貢献という 3 点を当社は目指しています。
人材の強化については、さまざまなライフステージがあっても、自分が働きたい場所で働ける環境を作ることで、スキルがある方を採用できています。また、オンラインでも繋がりを感じることによって、エンゲージメントを向上させること、さらに、企業と働き手がともに幸せになれる社会を作っていくために、オンラインの事業のノウハウや事例を公開しています。

当社のメンバーは多彩な環境で働いています。例えば、二児のパパでオンライン営業をしていたり、実家の大分県に介護のために戻ったけれども介護離職せずに働き続ける59歳の方、さらに地球の裏側のエルサレムから時差を越えて人事業務に取り組む方など。
HELP YOUは家庭の事情でキャリアを諦めることなく、積み重ねたい方を積極的に応援しています。
https://knit-inc.com/member/
社外へのナレッジ推進

当社の取り組みは、いろいろな場所でも取り上げられ、登壇の機会を多数いただいています。

オンラインワークでは、ツールの使用目的と醸成したい世界観の明確化が必要です。
本日取り上げたツールはどれも有名なので、皆様もお使いのものが多いでしょう。
しかし、最終的に重要なのは「それでどんな世界を実現するか」ということです。
コミュニケーションの目的を明確にするのが大事だと考えています。

当社は、引き続き「働きがいと経済成長」を実現するためのフルリモート経営を推進して参ります。
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