事例

【株式会社後藤組】中小企業が目指すデータドリブン経営

全国中小企業クラウド実践大賞とは、クラウドを活用して新規事業創造、収益向上、業務効率化を実現した中小企業等の実践事例を発掘し、広めていくためのプロジェクトです。

2022年10月28日に行われた「北海道・東北大会」より、土木業における管理システム刷新を行い、全社員を巻き込みながら変革を進めた株式会社後藤組の事例をご紹介します。

株式会社後藤組の概要

■法人名:株式会社後藤組
■事業内容:
土木事業
建築事業
住宅事業
不動産事業
リフォーム事業
コンテナ事業
■設立:大正15年
■公式Webサイト:https://www.gto-con.co.jp/

かつては先進的だったシステムが問題に

株式会社後藤組は、山形県米沢市に本社を置き、主な事業は土木建築、建物や道路を施工している会社です。それ以外にも宅建業という形で不動産物件の売買仲介、リフォーム事業、資材のリース事業なども手がけている総合建設業の会社です。
創業は、大正15年、今年で97年目を迎えます。

かつては、電算処理による建設業の管理システムを東北で初導入した実績もあり、先進的な建設会社として知られていました。

20年前に開発されたオンプレミスのシステムには、社員の利便性を高めるために他社では実現できていないような様々な機能を付け足し続けてまいりました。社員の勤怠管理、原価管理、伝票管理など、すべてベンダーに依頼して作成しておりました。 

ところがその結果、

「データの在り処が誰もわからない」あるいは「新しく出てきたサードパーティーのアプリ、これ良いな」と思って導入したくても、データ同士が複雑に絡み合いすぎて導入できない、といった問題が生じておりました。

ゼロベースでシステムを刷新

そこで社長から指示がありました。「痛みを伴ってもいいから、ゼロベースで見直せ」という指示です。これまで社員の利便性を高めるために「継ぎはぎ」してきたシステムを一度、ゼロから見直すということです。

システム変更によって、できなくなることも当然出きます。もちろん費用面でも大きな負担になることが予想されます。

しかし、今後のことを考えれば、ゼロベースで見直したほうが良い、ということで、情報システム担当のほうに指示がありました。

クラウドを利用する2つの目的

システム刷新にあたっては、クラウド利用を前提に考えました。
クラウドを利用する目的は、2つあります。

1つ目は、もっと身軽でスピード感のあるシステムに再構築するということ。 

もう1つは、データの蓄積・集約でデータドリブンな組織に変革していくことです。

従来のシステムでは、データの在り処が分からず、データ活用したいと思ってもまず、データを探すところから始まってしまいます。

それを、データ集約によって、もっと活用しやすい組織に変革していく、ということです。

システムを再構築

当社は、自社に伴走していただける ベンダー企業様に依頼して、各種のシステムを作ってきました。

それ以外にも、建設業特有の業務特化のソフトもあります。作図に関するソフトや、積算に関するソフトです。しかし、これらのデータは一切活用できていない状況にありました。

これらを、APIとRPAを使ったデータ連携を前提に、システムを再構築していきました。

中心になる会計システムにおいても、クラウドツールを採用しています。
それらの間を、APIやRPAを使ってデータ連携をしていきました。
連携されたデータは、データウェアハウスの中に集約しました。

今まで活用できていなかった業務特化型のオンプレのソフトのデータの中でも、一部活用できるものは、RPAを使ってデータウェアハウス内に集約しております。

それ以外の業務領域もあります。

例えば現場で使っている作業日報などです。

「システムを使うほどではないもの」は従来Excel等を使っていましたが、kintoneというノーコードツールを導入しました。

社内のデータを取り逃すことなく、Google データポータルや、Pythonのデータ分析でデータ活用をしていく、というのが現在の全体像です。

データドリブン化、4つの重点方針

次にデータドリブン化についてです。 

データドリブン化にあたって、4つの重点方針があります。

①kintoneによる業務サービスの作成
②Googleデータポータルによるダッシュボード作成
③Pythonによるデータ分析
④RPAによる業務自動化データの収集

①「kintoneによる業務サービスの作成」
今まで現場で使っていたExcel書式をクラウドサービスであるkintoneに置き換えることで、現場それぞれに属していたノウハウ をチームで共有できるようになりました。


②「Googleデータポータルによるダッシュボード作成」 

例えば新卒採用で学生からアンケートを回収するのですが、今まで紙だったものをWebフォームで回収できるようになりました。そのデータはリアルタイムでダッシュボードに反映され、進捗確認ができるようになりました。


③「Pythonによるデータ分析」

当社不動産事業部でお客様からお預かりする物件のデータは、以前はExcelなどで管理していました。それもkintoneに移行しました。kintoneにデータを蓄積することで、過去に値付けされた物件価格・物件特徴など、データを基にして、機械学習で査定することが可能になりました。

④「RPAによる業務改善」

土木営業部という部署では公共事業の発注者様の入札公告をチェックするのが毎朝の仕事です。

発注者様のホームページは国・県・市と それぞれあるので、各ホーム ページを開いて内容を確認するという業務がありました。

これをRPAを使っていわゆる「Webスクレイピング」を行うことで、その日の公告案件を関係者に送ることが可能になりました。

情シスがやるのではなく、社員がやる

4つ事例をご紹介しましたが、これらに共通するのは情シス担当者がやるのではなく、社員にやってもらうようにしています。

情シス担当者にも限界があり、やはり現場の社員自身にやってもらうことによって、より現場に即した仕組みを作ることができます。

どうやって社員に作らせているか、その仕組みが3つありますので紹介します。

1つ目、「社内勉強会の開催」です。

当社では「DXワークショップ」と呼んでいます。

定期的に開催し、kintoneのアプリ構築の方法や、どうやってデータを統合してダッシュボード上で分析していくかについて勉強会を行っています。ポイントとしてはその回で一番 成績の悪かった人が次回の講師役を務めるというルールになっております。 

2つ目、「データドリブン大会」です。年1回の全社行事になっていて、社員を数名ずつのチームに分け、そのチームごとにkintoneを使ったデータ構築や、そのデータをダッシュボード化して「こんな風に業務改善を行いました」というコンペを行います。社員同士で 良かったと思うチームに投票し合い、優勝チームには賞金、という仕組みになっております。


3つ目、「社内資格制度」です。

後藤組の中で IT人材として必要とされるスキルを定義し、段階に分けて試験を用意しております。いつでも挑戦でき、達成するごとに奨励金が支給される仕組みになっております。 

クラウドによる業務改善の成果

これらの仕組みを回すことで、業務改善につながりました。

クラウド利用は3年ほど前から行っているのですが、前期と比較して 総残業時間が20%削減、その一方で営業利益が44%増、クラウド利用が会社の数字を変えていっていると言えます。

今後の展望

今後は、クラウド利用をさらに全社で展開していきたいと思っております。 

社員自身がクラウドを使って業務改善を行っていく、そんな企業文化をさらに強化していき

たいです。

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