事例

人口減ワースト1の街を業務効率ナンバー1の街へ  

株式会社福徳不動産は「人口減少が著しい地方の中小企業こそ、クラウド活用を行い業務効率化をはかるべき」という考えの元、SEの内製化と業務フローの見直しを行ってISOを取得。入念な準備の下にクラウド環境を構築しました。今ではそのノウハウを地域企業の活性化のためのコンサルティングにも活用しています。中小企業の中でも、100名以上の規模で、業務も多岐に渡り、紙ベースの処理が多い。そんな状況でクラウド化に二の足を踏む企業にとって参考になる事例です。

株式会社福徳不動産
所在地:長崎県長崎市金屋町1番17号 福徳ビル
創立: 1956年06月
事業内容:不動産管理事業・社会福祉事業
従業員数:150人
※2017年には九州の不動産会社としては初めて ISO27001を取得
https://www.fukutoku-estate.com/

目標は「日本一ITによる業務効率化が進んだ会社」になること

日本で一番クラウドサービスを活用している都道府県は、おそらく東京です。
しかし、本来日本で一番クラウドサービスを活用しなければならないのは、人口減少が著しい地方、もしくは地方の中小企業ではないでしょうか。

当社の本拠地である長崎市は、全国1718ある市町村の中で転出超過数が2年連続ワースト1になるなど、人口減少が非常に著しい地域です。

不動産業界には、法律に基づく紙を中心とした旧態依然の文化が根強く残っています。
なぜなら、法律によって契約書の書面を発行することが義務付けられているからです。


アナログの代表とも言える紙を中心とした業務で、DXやクラウド化がなかなか進まない現状がありました。

出典:https://retechjapan.org/retech-map/

不動産業界の現状を打破するために、様々な不動産テックのサービスがリリースされました。
しかし、2021年7月現在で446サービスと、非常に多くのシステムが乱立しています。
それぞれのサービスごとにシステムが成り立っているので、データの連携が非常にしづらいのが問題となっていました。

問題点と解決策

当社が目標としているのは「ITによる業務効率化が日本一進んだ会社になること」

そこで、業務効率化をするうえでのクラウド化でよくある問題を整理しました。
まず、社内に SE がいないため外注せざるを得ないことです。
また、小規模であればトップダウンでクラウド化を素早く進めることも可能かもしれませんが、100名以上の規模になると、現状維持のバイアスなどによりクラウド導入時になかなか浸透しづらいという問題点もあります。

その解決策として2つの方法を考えました。まず、SE は内製化すること。そして、クラウド導入前に業務フローを、クラウド化を見据えて整理することです。

SEの内製化

まず、SEの内製化です。
当初はネットワーク管理者1名でしたが、そこに経験豊かな SE2名を採用しました。
地方の中小企業では経験者採用が難しいことを踏まえ、新人でも一人前の SE になれるよう研修教育プログラムを作成。2018年には2名の新卒採用、2019年には、韓国でシステムの基本を勉強した社員を採用しました。その後も新人を教育し、社内の研修教育プログラムによって一人前の SE へと育っています。この仕組みのおかげで 、SEの内製化に成功することができました。

なぜ、SEを内製化したのかというと「クラウドサービスはクラウド化した後ではなく前が重要」だと考えているからです。いくら有能なサービスでも、導入時の反発で遅延したり、思い描くものができなかったりした結果、断念してしまえば意味がありません。

導入時にスムーズに進めるためには、事前の業務フローの見直しやクラウド化の効果の説明など、入念な準備が大切です。そのために SE を内製化し、クラウド化の前にISOを取得しました。

クラウド化の4段階目標

このたびのクラウド化について、4段階の目標を掲げました。
どのようにクリアしていったかを順番に解説します。

Phase1 福徳不動産の効率化

まずは、自社内の効率化を進めました。
システムの導入前は、データがバラバラに点在。必要な情報に集約するために膨大な時間と労力を要していました。

そこで、システム構築のために、社内で育成したエンジニアと各部署ごとの SE と社員を選任。実務に入りながらシステムの構築を二人三脚で進めていきました。

構築後の修正も、社内 SE が対応。外部の SE に委託するよりも非常にスピーディーに改善修正を行うことができました。

こうして約1年間で全部門のシステムの構築に成功。現在では、Salesforce のサービスを中心として各部門のシステムを繋ぎ、すべてのデータの連携が可能となっています。

入念な準備のおかげで、クラウド導入時にも反発はありませんでした。むしろ現場のスタッフが率先して改善提案をしてくれてシステムができあがりました。

賃貸仲介の引っ越しのシーズンは2月〜4月。この約3カ月間が年間で最も忙しい時期です。
クラウド化のおかげで、この時期に1人あたり約460時間業務時間を削減できました。

業務の時間だけではありません。クラウド導入前後の同期比で、契約件数は約1.5倍に増加しています。

私が10年前に社長に就任した時の実績と比較をしてみると、売上で約2倍、経常利益で約8.5倍、利益率で約5倍を達成しました。

Phase2 地域企業をコンサルして効率化

次に、当社が考えたのは社内で培ったノウハウを生かして地域の中小企業の皆様にコンサルティングを行うことです。

これまでのシステム構築で、RPA、SalesforceやWEB アプリなどの開発に加え、サーバーのやネットワークセキュリティなど幅広い分野の対応が可能になりました。

自社で培った幅広いシステムのノウハウを生かし、様々な業種で業務効率化に悩んでいる企業にコンサルティングを行いました。その結果、外部へのコンサルを開始してから約10カ月で、約3000万円の売り上げを構築するに至ったのです。

当社では、システムへの投資はコストではなく先行投資と考えています。
今後も、システム部門の売り上げを10倍、100倍へと増やしていくつもりです。

今後の展望 ・Phase3 長崎の生産性アップ・Phase4 地域活性化

今後の展望は、人手不足で悩んでいたり業務効率が進められずに悩んでいる企業さんのコンサルティングを行って生産性を上げていくことです。

業務効率化が進んだ中小企業が地域で増加することで、地域活性化へ。
地域が活性化すれば、不動産も活性化し、当社の本業へと循環していくと考えています。

この4つのフェーズを元にして、日本の人口流出ワースト1位という現状の長崎市に多くの業務効率化が進んだ中小企業を増やすこと。そして、長崎市を日本全国でも業務効率がナンバーワンの街へと変えていくことが、私たちが最終的に考えているビジョンです。

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